4人の恋心
「それで、俺は、浮気をしていたんですか?」
俺は目の前の美女4人に問う。
「「「「あなたは浮気するような人じゃない!私が本物!この3人が嘘ついてるの!!!」」」」
まるで、舞台で演じる台詞のように、寸分違わぬタイミングで口にされたそれに、俺は思わず天井を仰いだ。
制服、私服、セーター、ジャケット。見た目も雰囲気もまるでバラバラなのに、不思議なことに全員が同じ熱量の“愛”をこちらに向けていた。
俺の問いに、彼女たちは、ぴったりと声を揃えて答えた
彼女無いなら素直にそう言ってほしいものだが...だが悩むのは時間の無駄だ。
メタ思考メタ思考。一歩下がって考えろ。俺の恋人がいるのか、そして、この4人と俺がどんな関係なのか。これを確かめなければならない。
……もし俺に恋人が“いない”のなら、全員嘘つきだ。
“いる”なら、三人が嘘つき。
ならば、やることは一つだ。
「じゃあ4人ずつ、自己紹介をしてくれ。部屋に入ってきた順に。他の三人はその間部屋の外で待っていてほしい」
こいつらが嘘をついているのであれば、どこかでボロが出るはずだ。
幸い、俺の両手は動く。ペンで文字も...かなり汚いが書けたのでよしとしよう。
「「「「よし!私が本物だってことを証明してやる!!!」」」」
四人同時に喋るの、本当にやめてほしい。病室だから声が響いてうるさい。
そして、三人が部屋の外へ行った。
「じゃあ、まずは私からね」
やがて三人が部屋を出て、最初に入ってきた白いセーターの女性が、ベッドの横に腰を下ろした。
「私は春原 ひかり。幼馴染よ。付き合い始めたのはつい最近。1年前」
俺は、彼女の情報を紙に書いていく。
その後、3人分の情報を記録した。
1. 春原 ひかり(すのはら・ひかり)
・同い年。中一で出会った幼馴染
・交際開始は1年前
・告白は彼女の方から
・純愛オーラ強め、口調は優しく穏やか。思い出話が多い
2. 藤堂 天音(とうどう・あまね)
・2歳年下、ゲーム友達(Ap○xで知り合う)
・オタク趣味で気が合い、リアルでもイベント参加
・告白は彼女の方から
・ちょっと人見知りで、コミュニケーションが苦手
3. 榊 奈々(さかき・なな)
・1歳年上。バイトの後輩
・悩み相談を受けているうちに関係が深まる
・告白は俺から。肉体関係ありと主張
・冷静沈着タイプ。声が落ち着いている
4. 無月 つばさ(むづき・つばさ)
・4歳年下。義妹。中三の時に家族に
・最初は冷たく接していたが、俺が彼女をイジメから救ってから好意を抱く
・明るい性格で、真っ直ぐ。発言に誠実さがある
まあ、こんな情報は現時点では役に立たない。
そして、気になったことが一つだけ。
榊だけが、俺の利き手に気が付いた。俺は右手で文字を書いていたのだが、俺はどうやら左利きらしい。それを言ったのは榊だけ。
だが、榊は、嘘を言っていたようにも感じる。それに、偶々彼女だけが気づいただけという可能性もある。
まだわからない...
そして、義妹のつばさと、バイトの後輩の榊が予定があるといって帰ってしまった。残ったのは、藤堂天音と、春原ひかり。
背筋が凍った。二人とも、俺のことが好きならば、今は好き勝手出来る。しかも、骨折はまだ直っていない。腕もまともに機能しない。
「へえ...骨折ねぇ...」
「じゃ、邪魔者、いなくなった!」
獲物を見つめる獣の眼差し!身体が「逃げろ」と叫び続けている。
すると、幼馴染の春原が、俺をエロい目で見つめながら近づいてきた。
「私、Eカップあるよ?Dカップまでが巨乳、Eカップ以上は爆乳だよ?」
まずい!
それはダメだ!最善の選択をしろ!
「俺...記憶が無くなっただけじゃなくて、性欲も無くなったんだ...ごめん」
よし!相手をあまり傷つけない最善!だと思う...
「大丈夫!私が揉んでほしいだけだから!お願い!」
まずいまずいまずいまずい!それは本気でダメ!俺の下半身も反応をし始めた!
そして、目に入ったナースコール。
ポチ...
「はい、なんでしょう?」
え、はっや...
押して3秒ほどで来た。
「え、えっと...ちょっと一人になりたいんですけど、この人たち、中々帰ってくれなくて...」
すると、ナースは、めんどくさそうに彼女たちを連れ去った。
「俺のこの下半身は...どう処理したらいいんだろう...」
誰もいない病室で一人呟いた。
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