ダンジョンメンタルクリニック
悠木 凛
プロローグ ~23階層でツインヘッドとこんにちは~
「んもう! どうして
私は
「うわ! ちょっと待ってよ!」
いきなりツインヘッドが右の首から冷凍ブレスを吐いてきた。ずいぶん気の短いドラゴンのようだ。
展開していたシールドが、どんどん凍っていく。
「ツインヘッドのうろこは、高村教授のリクエストだったっけ」
冷凍ブレスが止まった
「どうだ!」
ドラゴンキラーを引き抜いて一歩下がる。急所は外さなかったはずだけど……
「ぐきぇぇ!」
ツインヘッドは
「ぐえっ」
尻尾が私の脇腹に当たり、壁まで吹き飛ばされた。
「いくら
スーツの上から脇腹をさすり、よろよろと立ち上がる。
「エリー、スーツの損傷は?」
これならツインヘッドがもうひと暴れしても、とどめを刺せるだろう。
「先生、新患さんがお見えですけど」
スクリーンの隅に、クリニックの
「あら、もうそんな時間?」
「いえ、予約はされていない方です」
「じゃあ、ちょっとだけ待っててもらって」
私はため息をつき、「ゆっくり解体するヒマはなさそうね」とつぶやいてロングソードに持ち替えた。
『
心で
「リクエストのうろこと、あとは爪を一本……」
ビクビクと動く体から、手のひらほどの大きさのうろこを数枚と、自分の研究用に爪を一本
「さてと、それじゃあ帰るとしますか」
エスケープクリスタルを使って、ダンジョンの入り口に戻る。
「おや、先生。お早いお帰りで」
ダンジョンの管理室の小窓から、管理人が顔を出して言った。
「新患さんでね」
私が両手をひらひらさせて、仕方ない、という風に言うと、管理人は苦笑いして首を引っ込めた。
S県の深い森の中に、ダンジョンの入り口が発見されたのは今から11年前。『
しかしダンジョンの調査には常に危険がつきまとい、特に初期の
数年のうちにダンジョンの特殊な環境に適応する方法が洗練され、一部の人間はダンジョン内で魔法を使えることもわかり、必要な装備を整えることで死亡リスクを抑えることができるようになった。
すると、こんどは調査隊のメンタルケアが取りざたされるようになったのである。暗く狭いダンジョンの中で、一歩間違えたら命を落とすこともある極限状態を経験することで、精神に不調をきたす者が増え、その対策が求められた。
医学生の頃からダンジョンの調査に取り組み、ダンジョンハーブの可能性について論文を書いた私は、研究を続けながら開業するのにここよりいい場所はないと考え、ダンジョンの入り口から徒歩1分のところに『シンオウメンタルクリニック』を開院した。
◇◆◇◆◇◆
「ダイちゃん、ハウス」
クリニックに戻った私は、ダイちゃんに言った。Dungeon Investigation Support Machineの頭文字をとって、ダイソムとかダイズムとか呼ぶのが一般的だけど、私はかわいいほうがいいと思ってダイちゃんと呼んでいる。
装甲車から足が4本生えたようなデザインのダイちゃんは、メンテナンスドックに入って行った。
「さて、私も着替えますか」
脱着ポッドに入ると、自動的に全身を
「シャワーを浴びたいけど…… 患者さんが待ってるからね……」
ポッドを出て白衣を
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