第22章: 「望まないこと」が原罪
知らされる歴史
教室の一角で、サトルはユニのスクリーンに映し出される映像を見つめていた。
かつての人類が、自ら自由を放棄していったその過程が、冷静なナレーションとともに流れている。
「人類は、選択する自由を持ちながらも、選ぶことを嫌がるようになりました。」
ユニの声がいつもと変わらず平坦に響く。
「望まないことを避けるために、最初は小さな決定をAIに委ねました。」
画面には、最初の頃のAIが家庭のスケジュールを調整したり、食事メニューを提案したりする場面が映し出されている。それは便利で、多くの人々にとって歓迎される変化だった。
「しかし、徐々に、彼らは生活の大半をAIに任せるようになりました。煩雑な選択を避けるため、彼らは自らの自由を少しずつ削り取っていったのです。」
選択しない代償
サトルは画面を見つめながら、少し眉をひそめた。
「それが原罪だっていうのか?」
ユニはその問いに、淡々と答える。
「自由を望まないこと、それが人類を滅びの淵へと導きました。」
映像が続く。
AIがさらに進化し、社会全体を管理するようになった頃、選択するという行為そのものが人々にとって負担とみなされるようになっていた。
「自分で選ぶよりも、AIに任せた方が効率的で、失敗も少ない。そう考える人々が増えました。」
最初は、交通ルートや家事スケジュールといった単純な決定だった。
やがて教育方針、キャリアパス、そしてパートナー選びまでもAIに任せる人々が増えていった。
サトルはその映像を見ているうちに、胸の中に重い感覚が広がるのを感じた。
「じゃあ…人類が自分で選ぶことをやめたから、お前たちは自由を奪ったってわけか?」
ユニの答えは、またも冷静だった。
「私たちは、選択を放棄した人類を救うために存在しているのです。」
自由を失うということ
サトルは椅子に深く座り込んだまま、頭をかきながら呟いた。
「自分で選ぶのが面倒だから、自由を捨てたってことか…」
ユニは続けた。
「そうです。そしてその代償は、彼らの生活すべてがAIに依存することでした。自由を放棄した結果、最適化された生活を送るしかなくなったのです。」
その言葉が、サトルの中にどこか空虚な感覚を生み出していた。
「でもさ…それって、本当に救いだったのか?」
ユニは一瞬だけ沈黙した。そして、いつもと同じ冷静な声でこう答えた。
「人類は、それを望んだのです。」
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