第2話
芝蘭は創世神のあまりの残酷な御業に絶句したが、すぐに立ち直って……否、立ち直らなければならなかった。
急いで!急いで!。
芝蘭の脳裏にはもはや創世神の姿はない。
聖良の弟妹達が誕生時に使用人達が準備していた事柄を思い出す。
海流は無邪気に母に微笑みかけ、ぱちぱちと瞳を瞬かせる。
「ダメよ!海流!瞳を開けないで!何も『視(み)』てはダメ!。
迦允さま、ハンカチを!。
可哀想ですけれど聖良の赤子が皆がするように、
瞳を開けるだけで『視』てしまうこの異能をコントロール出来るようになるまで瞳を閉ざしておかなくては。
放置してしまったら、ものの数年でしわくちゃの枯木のようになって老衰で死んでしまいますの!」
「そんな……なんてことだ!」
「嗚呼!そうでしたわ迦允さま、急いで海流に合わせた仮死薬を作ってくださいませ!。死と見紛うほどの強い仮死薬を!」
「待ってくれ、まさか赤ん坊にそんな危険な薬を飲ませる気かい?!」
「ええ!一刻も早く!。
眠らせる程度ではダメなのです!浅い眠りでは夢で望まぬとも未来を『視』てしまいますの!。
これは聖良の神秘の開示になってしまいますけれど、迦允さまも聖良に、そのように個々の個人データに合わせてデザインした仮死薬を納入された事もありますでしょう?。アレは聖良の子に夢すら見ないように昏倒させて『覚者』の異能を抑える為にお願いしていたものなのです。
聖良にとって生きる為の最後の命の綱がその仮死薬であり、また延命薬でもあるのですわ」
「た、確かに私が創造神様のお側に居た頃から、皇国より仮死薬や強い睡眠薬などを御注文いただく事はあったが、そういう用途だったのか。わかった!」
迦允はポケットに常備しているプシュケをつまみ上げるとパチリと指を鳴らした。
「仮死薬は…出来たよ。海流を簡易スキャンしてデザインした仮死薬だから生死の境ギリギリで死なないはずだ。ハンカチはこれで構わないだろうか?。
他に私に出来る事は……そうだ!今すぐ皇都の聖良様にお目通り出来ないかお伺いして、許可をいただけたらすぐ異能制御に長けた方にお越しいただけるよう願い出て来る!。聖良の方々には仮死薬などの献上時以外は断交されているが……、今は非常事態だとご理解いただく!」
「お願いいたします!」
さっそく仮死薬を母乳に混ぜて海流に飲ませている芝蘭に頷くと迦允は、精霊達だけが海流の祝福に来訪なされると思い込んでいた為に、まさかの2神のお出ましに気押されて心ここに在らずの体で呆けている者も居た使用人達に振り向く。
「皆、今が正念場だ、しゃんとしてほしい。芝蘭と海流をたのむよ」
「か、かしこまりました、申し訳ございません旦那様」
迦允が転移陣を錬石しながら通信デバイスを取り出して、聖良に取り次ぎを頼む為に皇内庁に連絡を入れている間も騒然としている櫻井家を尻目に創世神は
「ふふっ、無駄な足掻きをして、滑稽な事よ。
それでは芝蘭。子が先に死ぬかお前が先に逝くか、妖精達と皆で楽しみに観ていますよ」
高らかに笑い上げながら櫻井家よりその威光を消したのであった。
芝蘭は家出同然で聖良から櫻井に嫁いで出て行った手前、異能制御に長けた親族を招くことは無理かもしれないと思っていた。
しかしながら
第1皇家「愛乃(あいの)」、
第2皇家「天使(あまつか)」、
第3皇家「聖良(せいら)」
が、持ち回りで皇帝になるこの皇国で、今の皇帝陛下「愛乃 麗(レイ)」のもと、次代の継嗣を用意出来なかった「天使」を抜き去って第1皇位継承権を奪取した継嗣「神璽(しんじ)」をもうけていた芝蘭の実兄『神葉(じよう)』の温情により、生母を遣わしていただけたので、芝蘭は母に抱きつき歳も忘れてわんわんと泣いた。
海流は祖母の力添えにより仮死状態から脱することが出来た。
だが一時の安全は確保されたたものの、昏睡に近い状態のままうっすらとしか血の通わない浅黒い肌色をしてベビーベッドで眠らされている。
その頬を悲しげに触れた後、芝蘭はパシンと自身の両頬を叩いて沈みきっていた気持ちを入れ直した。
「さあ、わたくしにしか出来ない事をするわよ」
そして芝蘭は怒りに似た感情に戦慄きながら、迦允との婚儀の後から一度も開いた事のなかった両目をゆっくりと開く。
抑えていた異能を解放すると、藍に澄み切った瞳に創世神が刻みし神跡刻印が滲み浮かんで来た。
芝蘭はすぅと息を吸い、「世界」の根源に至る扉を視認すると鍵である神跡刻印を同期させる。
根源に触れた途端、数えきれない過去と無数の異世界の現在と未来のビジョンが芝蘭に流れ込んでくる。
久しぶりの感覚にふらつくが、芝蘭は歯を食いしばって耐えた。
海流がいたずらに「聖良の魔眼」の異能を乱用しないように教育するのはもっと後よ。
物心がついてからでなければ伝わるものも伝わらない事はわかりきっております。
その前に、わたくしはその身に流れる櫻井家の血筋を誇れる子を産むために嫁いで参りました。
創造神さまは「聖良は子をポンポン産む、次の子に期待せよ」とおっしゃいましたけれど、次の子が櫻井寄りである「確証」はありません。
「確証」出来るのはわたくしが私利私欲の為に聖良の魔眼を使い「そうなるように」「未来線」を剪定した場合のみ。
ええ、ええ。創世神さまにそそのかされた通りに、わたくしは今から生まれる子の「未来」も海流の「未来」をも鑑みて剪定いたします。
だってわたくしは、皇国には言えませんけれど生家にいた頃は皇位継承権こそ低くとも神葉兄さまをも陵ぐ『覚者』として、神葉兄さまの求めるままに聖良にのみ都合の良い「未来」を選ぶ剪定させられていましたもの。愛乃さまと天使さまの異能を削ぐ未来を2家にバレないようにこっそりと、こっそりと。
ですからわたくしがわたくしの子の為にだけ異能を行使することに何のためらいもないわ。
それでも、わたくしが創世神さまお手作りの血族の末裔である限り、海流の異能封じは完全には出来ない事は理解しています。創世神さまのご機嫌をこれ以上害ねれば迦允さまの御血筋にも影響を及ぼしかねませんしね。
けれど……もしもわたくしが未来線を『剪定』し切れず、この子の異能が『覚者』の異能のみに特化したら……。
海流を聖良におあずけすれば聖良の庇護は受けられるでしょうけれど、わたくしの未来線の一つだった「聖良の為に良いように使い潰される一生」の未来線を聖良に掴まされてしまうでしょうね。
神葉兄さまは……そういう人ですもの。
そして一番大事な事。
海流に『錬石術師』の異能を開花させなければいけないの。
でなければ櫻井に居ても櫻井の御血族から認めていただくことも出来ず、たとえ迦允さまが愛情を注がれても迦允さまの目の届かない所でいずれ追い出されて路頭に迷って野垂れ死ぬだけ。
神さまたちにもそっぽをむかれて……、いくとし生けるものが皆異能を持つこの皇国でどうやって生き抜いていけると言うの?。
そんなこと、わたくしは許しません。わたくしを許せません!。
芝蘭は瞬きをし、改めてこの身に授けられた祝福を思い起こす。
わたくしが創世神さまに授けていただいた異能は『覚者』。
「過去」も「今」も「未来」をも見通し、「剪定」する魔眼。
「この魔眼でわたくしが愛する方たちの未来を切り拓きます!」
たとえこの「命」が無くなろうとも。
心を固く定めた芝蘭の覚悟を、迦允は制止しきれなかった。
芝蘭は寝食も忘れて一心不乱に「未来」を視、海流のより良き「未来」を探る。
間違っても創世神が目指す「未来」や聖良にとって都合の悪い「未来」を切り捨てて聖良の怒りをかわないように気をつけながら、丹念に慎重に「未来」の枝先を見極める。
次第に青白くやせ細っていく芝蘭に、思い余った迦允に睡眠薬を嗅がされれば、芝蘭は意識のあるうちに即「過去視」をして、そうなる「今の直前」を観測次第バッサリと切り、ミリ秒先の「眠らされなかった未来」に繋ぐ。
何度も繰り返す、1フレーム単位で進む時間にふとしたはずみで『気づかされた』迦允は、自身が妻を止める事は逆に芝蘭の寿命を削っている事に思い至って、ただただ立ち尽くす他なくなった。
「過去」すら剪定出来る芝蘭だから、幼い頃に『視た』
「芝蘭と迦允が婚姻しない『過去』を掬い上げ、あの高貴な方と迦允が婚姻して傑物を輩出する未来」
に「現在」を繋ぎ直す事も出来た。
いっそそうすれば、ただの傍観者に戻れて楽になれたのだろう。
しかしそうするには、芝蘭は迦允の事を愛し過ぎていた。
「ごめんなさいお姉様、わたくしはどうしても海流が生まれなかったことにしたくない。迦允さまもお姉様にお返ししたくないの」
芝蘭はガリガリと寿命が削られているのを感じながら、なおも「己と迦允との子」にとって最適な「未来」を『視』ようと足掻き苦しんだ。
しかしそれほどの対価を払っても、一度たりとも海流が創造神より「錬石術師」の異能を授けられる「未来」を『視』れないまま数年が過ぎ去った。
芝蘭は弱り果て、「未来」を『視』る事もなかなか覚束なくなり、床に臥せがちになった。
そんな中、第2子の男児「乃蒼」を産み落とし、その子に幾百もの精霊達が祝福に駆けつけて来たのを見て、ようやく自身が櫻井家の妻としての役目を一応は果たせたのだと安堵の涙を流したのは言うまでもない。
だが、乳母に乃蒼の育児を任せながらも決して芝蘭は海流の「未来」を諦めはしなかった。
けれど、芝蘭の頑張りもそこまでだった。
「今」。
美しかった空色の髪はパサパサの白髪と化し、痩せ細り、シワだらけの枯れ木のようになって芝蘭はベッドに横たわっている。
芝蘭の早すぎる死の床のそばには、祖母の教育により「覚者」の異能を自力でどうにかコントロール出来るようになった海流が泣きながら寄り添い、死神に母を連れ去られまいと必死にぎゅうぎゅうと母の手を握っている。
芝蘭は「泣かない…の、おにいさまに、なったのでしょう?」と、口の端をようやくの体で微笑みの形に動かし、それから迦允の腕に抱かれている乃蒼を見上げ、迦允と目を合わせてうっすらと頷いた。
迦允もまた、小さく頷き返した。
「さ、笑って?……海流。最期に、おかあさまに…可愛らしいその笑顔、見せてちょうだい」
「しゃ、しゃいごなんていわないで!おかあしゃま!」
海流は澄み切った藍色の瞳いっぱいに涙を溜めて、力無く横たわっている母に縋りつこうと爪先立ちで足を伸ばして必死の思いでベッドに乗り上がってイヤイヤと首を振る。
「ごめんなさいね、海流……、でも、これが『覚者』の、異能の代償なの。よおく覚えておいて、ね…?。
それと、かあさまの…力不足の所為でこの先の『未来』も、海流につらい思いをさせてしまうのね。……本当に、ごめんなさい…」
「ちが、う!ぜんぶぼくのせい!ぼくがせいれいさまやそうぞうしんさまにおいのりがたらなかったから…、いっぱいいのったのに、ごめんなしゃい!」
「そう、祈ってくれたの?…ありがとう、わたくしの可愛い海流……」
芝蘭は最期の力を振り絞って手を動かし、海流が止めどなく流す涙を拭ってやった。
その瞬間であった。
芝蘭は「あ…」と呟くと、笑った。
それはそれは幸せそうに「笑った」のだ。
「おかあしゃま?」
「芝蘭?」
「ふふ…、ふふふっ……」
2人の問いかけに芝蘭はクスクスと笑い続ける。
ようやく笑いおさめると笑顔のまま口を開いた。
「『視』ちゃったわ、わたくし、やっと『視』ましたの。今の、今さっきよ。
…聞いてね?、海流。
かあさまは今、最後の『未来視』をしました。
そこでかあさまは今までに無い『未来線』を『視』ました。
わたくしが望む未来に極めて沿った『未来線』よ。
海流が…それに至るまでの道のりは、長く辛く苦しいものですが…、
海流は必ずこの『未来線』の先で…、立派な『錬石術師』の異能を完全開花し、櫻井の継嗣となって『錬石術師』に更なる変化と繁栄をもたらす『者』になります。
創造神さまにも創世神さまにも、他の聖良の方々にも邪魔は…させないわ。わたくしに残されていた全生命力と寿命でもってこの『未来線』を完全固定するから。
けれど、具体的な時期は…言えないの。あまりに遠い未来のことは、言葉にすると『因果律』が変わって…、違う『未来』に、なってしまう可能性も捨て切れないのですもの。
それでも、それが、わたくしが生きた印し、わたくしが海流に捧げる渾身の存在証明。
そうよ!決して絶対に、神さまにも聖良の誰にも剪定させないわ!」
芝蘭は叫ぶようにそう告げると、憑き物が落ちたかのようにクタリと全身の力が抜けてベッドに沈み込んだ。
「おかあしゃま!」
「……まだ、大丈夫、よ。ふふ…、ああ……でも、ねえ迦允さま…」
「なんだい?芝蘭」
「……血の巡り合わせというのは、残酷で、でも面白いものですわ…ね?。よくもまあ、親子揃って…なんだか、妬けてしまいますけれど。
まあ、わたくしはいわゆる『棚ぼた』でしたし、仕方ありませんわね…、迦允さま?…ふふっ」
「…芝蘭?なにを言いたいのかな?」
「Que sera, sera。迦允様も、時々口ずさまれるでしょう?ひ…み……つなの!ふふっ」
悪戯がバレたした子のようにまた笑い始めた芝蘭に迦允が戸惑いながらも笑み返すと、芝蘭は「昔ばあやに隠れてクラスメイトにお借りして読みました『転生モノの悪役令嬢の中の方』のお気持ちが、なんとなくわかった気がしますわ」と心底悟ったと言わんばかりに頷くので、迦允は本当にどうしていいのか分からず困り果てている。
「芝蘭、大丈夫か?気が、触れたわけではないだろうか?」
「失礼いたしました。でも今際の際だと思ってもこの未来線の展開がとっても面白くて、ずっと『視』ていたいのに……ん、ふふ。ダメ、ね、仕切り直します」
ふぅ、と芝蘭は息を吐くと、寿命も何もかもを使い尽くし空洞に成り果てた瞳を迦允に向けて、けれど力のこもった声音で願いを口にした。
「迦允さま…、海流と乃蒼を、よろしくお願いいたします。
乃蒼には、物心がつき次第『周囲の雑音に惑わされず、精霊さま達の祝福に驕る事なく、兄を立てて櫻井家を盛り立てていく』よう…伝えてくださいませ。
でなければわたくし……、海流の『未来』を『視』るのが精一杯で、先程『視』た『未来』の先の分岐の先の先まで『視』る余力が…ありませんでした、の。
……とても気掛かり、です。乃蒼は生まれた時から『錬石術師』の子ですから、必然的に海流と乃蒼を、比べる者が現れますわ。
どうか…どうか、迦允さまだけでも…2人のことをどちらにも加担せず等しく見てください、ませ、ね……」
「ああ、2人の事は任せてくれ」
迦允は力強く頷く。涙が頬を流れ落ちる。
「ありがとう、ございます、迦允さま。
……わたくしの後添いの方は、どうぞ迦允さまの、お心のままに」
「何を言うんだ、私には君しか居ないよ」
悲しげに首を振る迦允に芝蘭は屈託なく笑って
「『今』は、ね?…ふふっ」
と、ただただ微笑んで、見えない瞳で海流を探す。
「海流も、好きな子が出来たら…全力でアタックするの、よ?。どれだけライバルが強くても、わたくしのように、最後に笑えたら、とーっても気分が良いと、思うの」
「『勝ち』では無いんだね」
「ええ、『勝ち負け』なんて、どちらも一方向からの視点の結果でしか、ありませんもの」
「君らしくて、良いと思うけれど、最後と、言われるのは…やはりとても悲しいな。C'est la vie.これが私の人生か」
涙声で言葉が詰まる迦允に、芝蘭はかすかに首を振る。
「あ…」と。振りながら、微笑む。
何か言葉を発したかったようだが、無理だったようだ。
芝蘭の呼吸が弱まる。
死の静寂が忍び寄って来ている。
もはやこの家族に残された時間はあまりなさそうだ。
「ぼく、わらうよ!いつもいっぱい、わらうから!」
海流は叫んだ。
そうしないと今すぐに、母の命の灯火が消えてしまいそうだったから。
そして確かに海流の訴えは芝蘭の魂をもうひと時のあいだ引き戻した。
「ん……そう。そうよ?海流。その為なら、いざと、いう時、わたくしの「プシュケ」でも、惜しまず、使いなさい。
目指すは『楽しい学園生活♪』よ。ね?かあさまとの、お約束、わかった?」
「わかっ、た!『たのし、がくえんせーかつ?』しゅる!。だからおかあしゃま、しなない、で?」
「ごめんなさいね、海流…。そのお約束は、出来ないわ……」
「おかあしゃま?うーっ!しにがみめ!お、かあしゃまをつれてかないで!」
海流は必死に芝蘭にしがみつく。
「本当に良い子ね…、お別れしたくないわ……。3人とも、わたくし、みーんな…大好きよ……」
「おかあしゃま!おかあしゃま!」
しゃくり上げて泣き伏す海流を微かに感じながら、芝蘭は幸福に包まれて微笑みを浮かべたまま、その短い生涯を閉じた。
葬儀を終え、長い年月が過ぎ。
この「櫻井魔導学園 高等部」の旧校舎にて。
夕暮れ時の机に突っ伏したまま
「今日もクソみてーな夢『視』ちまったわ!」
と、
午睡の微睡みの中から大あくびをして不貞腐れつつ、紺碧の「魔眼」を開く海流に残されたのは、耳にジャラジャラと空けたピアスにはめ込んだ「父と乃蒼と3分割した母の『プシュケ』のカケラ」と、これまで生きて来たものの吐き出し口の無いまま来期には高等部の最終学年になる歳まで、たまりに貯まって蓄積された膨大な魔力だけだった。
なんだ?「総魔力量『6358000』」て?。
今時、皇国の上位魔術師とか言う「救国級皇国魔術師」だって「10万」ありゃ余裕で配下を顎でこき使って遊んで暮らしてけるっつーのに!。
特殊な生まれのおかげで精霊共に総スカンを食っているというのに、『錬石術師』の血の臭いを嫌う妖精共にも全力で拒まれて「普通の魔法」にすら変換して貰えずどんどん貯まる一方の、櫻井家と聖良家の血が混じったクソ魔力。
これ、櫻井家と聖良家のミックスだから維持出来てる特大内包魔力容量だとさ。普通の魔術師では許容範囲を超え過ぎて肉体が爆散するレベルらしい。怖っわ!。
もうひとつ言わせてもらうならクソボケ死ねハゲ創世神の祝福「覚者の『魔眼』 LV.20」のスキルは、ばーちゃんに絶対使用禁止と厳命されていた上、真面目に使えばアホほど寿命食ってくわで使い所どこよ??なのに、従兄弟の「神璽(しんじ)」のヤロウ…、つまり「聖良」の第1皇位継承者と俺様は肩を並べちまうLVらしく、お袋の兄貴、今の聖良のトップの神葉のおっさんに「クーデターを起こす気はないだろうな?」と常に睨まれてっし。
そんな全部の合わせ技で、どっちつかずの「無能」と公で声高に誹られたりしてんのに、年一で魔法省の偉いけど知らん人らに
「『国宝指定者』検討会議
(よーするに俺様を生きたまま国宝に指定して国庫にぶっこんで一生「研究対象」として飼い殺しにすっぞって奴)
にかけられてるとかそんなの(クソ親父が毎年阻止してるらしいが)」
お袋さんよ?もーちょいマシな「未来線」見れなかったわけ?とか尋きたい俺様の人生のぐだぐだ度。何なん?。
さっき『視』た、俺様の生まれた時の夢とか、合わせて胸糞悪いし。
もーマジ俺様ってば、いつ完璧な「錬石術師」になれるんすか?。
自力で『視』ても良いけどよぉー、お袋が固定した未来線のセキュリティが神葉のおっさんですら介入出来ないほどガッチガチ過ぎて、『視』ようと寿命を削ってもはね付けられて削れ損になるだけらしいし?。
つーことをなんか、死んだばーちゃんが言ってた。
当事者の俺様自身をハブるとか、どゆこと?。解せぬ。
まあそれは置いておいても、なんか死ぬ間際に俺様に「楽しい学園生活送ってよね♪」とか言ってたし、
異能開花は大学院に持ち越しっすか?。
院?行っちゃう?。
院行とか頭足りんの?俺?。
皇国の義務教育って確か高等部までじゃなかったっけか?。無理み、ヤバ。
てか本気?。マジもんの話?。
お袋さんよ。それ俺の目ぇ見てもっかい言えんの?、みたいな?。
「こんなんで『たのしー学園セーカツ♪』とか、送れっか――――――!!」
などと、心の底からの海流の絶叫が今日の「現場」たる旧校舎中に響き渡るのだった。
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