私は紀元前7世紀の空を見上げ、世界が持つべき真実を伝えた。

Orange

第1話 : では、実際どちらが正しいのでしょうか?


**紀元前7世紀——**

当時の古代ギリシャでは、「地球は平らである」という“真実”が信じられていた。


しかし、その時代にひとりの天才の少年がいた。

彼は「地球は丸い」と信じる人物と共に、


——探し出し、伝え、そして、

世界が知るべき《真実》を明らかにしようとしていた。


***


あの夜、月は美しく輝き、

墨を垂らしたような暗い夜空には、

無数の星々が温かく、冷たい夜を包んでいた。


広大な草原、

観察にはこの上なくふさわしい場所だった。


僕は立ち上がり、夜空を見上げた。

そして感嘆の声を漏らす。


「…やっぱり、空って綺麗だな。」


草原に腰を下ろし、目の前にはパピルスの紙。

手にはインクと筆。


——この研究を続けよう。


そう、たとえこれが僕自身の純粋な発想でなくても、

やがてこの研究は未来の鍵になるだろう。


僕が完成させ、

僕が磨き上げ、

僕が世界に発表するんだ。


疑念から生まれた、新しい真実を——。


この研究、

「地球」に関するこの研究を、

必ずやり遂げる!



太陽が昇り、

青空が夜の星たちを覆い隠していく。


もう昼になっていた。


都市A——。


そこには机と椅子が並ぶ部屋があり、

一人の大人が、子供たちに教えていた。


その男は優しく微笑みながら、こう言った。


アントキ先生は、いつもの柔らかい口調で尋ねた。

「さて、子供たち~、今日は一つ質問をしようか。」


子供たちは大はしゃぎ。

目はまるで夜空の星のようにキラキラしていた。


アン・トキ先生は誇らしげに聞いた。

「地球の本当の形、知ってるかな~?」


すると、一斉に上がっていた手が、

徐々に迷いとともに下がっていく。


「どうだい?誰か答えられるかな~?」


そんな中、僕の手だけが真っ直ぐに伸びていた。


アン・トキ先生はそれを見て、にっこりと笑って言った。

「おお~、じゃあ、ダリウス、答えてみてごらん!」


僕は立ち上がり、背筋を伸ばし、

片手を背に、もう片方の手で説明を始めた。


「はい!地球の形は…」

一瞬の間の後、堂々と言い切る。

「もちろん、平らです、先生!」


アン・トキ先生は微笑みながら聞いた。

「その理由は何かな?」


僕は自信満々で答えた。

「それはですね~」


「視点の問題です!立っていると、地面は平らに見えますし、

落ちるものはすべて下に落ちますよね?」


「それはつまり、地球が神々によって特別に創られた証拠なんです!」


先生は一瞬黙り込み、

そして拍手をしながら言った。


「正解!神々は確かに地球を完璧な形で創ったのだ!さすがダリウス!」


僕は少し照れながら頭をかいた。

「い、いえ…そこまででも…」


アン・トキ先生はさらに誇らしげに言った。

「いやいや!12歳でそこまで言えるなんて、神々もきっと褒めてくれるぞ!」


他の子供たちも口々に言う。

「本当だよ!ダリウスってすごい!」


僕は再び椅子に座り、少し誇らしい気持ちで胸を張った。


——そうだ、この世界は…とても簡単な世界だ。


——頭が良くて優しい人間なら、

間違っても許されるのだから。


——神々への浅い信仰に満ちた愚かな世界。

生きるのは、本当に簡単すぎる。


彼らの神への信仰…。

僕はなぜ、そんなものを信じられるのか分からない。


愚かな者たちに囲まれた世界、

僕はこの場所にいるべきじゃない。


僕のこの笑顔は、

この地上がどれだけ生きやすいかを証明している。


支配、思想、そして自己中心的な欲望で争いが絶えない世界。

そんな愚かな地球に僕は…生きる価値があるのだろうか。



授業が終わり、

夕日が空を赤く染めていく。


もうすぐ、あの美しい星の夜が来る。

冷たいけど、星々が温かく輝く夜。


それは完璧な夜だ。

そう…僕は夜が好きだ。いや、宇宙が好きなんだ!



つまらないアン・トキの授業の帰り道、

家までは1キロだけど、早く卒業したい。


彼の教えることなんて、

もう全部理解しているんだから。


帰る途中、

僕は誰かにぶつかった。


バンッ!


「うわっ!」


その人は灰色のマントを着ていて、左目に火傷の跡がある。


うわぁ…怖い!

誰だろう?知らない人だ!


「わ、わぁ!ご、ごめんなさい、おじさん!ぶつかるつもりじゃ…!」


男は表情のない、冷たい声で一言だけ言った。

「…お前は——。」


僕はそのまま走って逃げた。


「こわっ!こわすぎ!あれ絶対変な人だよ!なんで自由に歩いてるの!?」


家に着いた僕を、両親は温かく迎えてくれた。


「おかえり、ダリウス。」

母は聞いた。「汗かいてるけど、どうしたの?」


僕は急いで汗を拭いて答えた。

「い、いや、ちょっと走ってただけだよ。」


母はうなずき、

父は幼い妹を抱いていた。


僕は薄い黒いマントを脱ぎ、

シャツとズボンだけの格好で部屋に入った。


ベッドに潜り込むと、天井を見つめながら目が閉じていく。



星の夜。

僕はどこか草原のような場所にいた。


美しい夜空の下、

四つの人影が月明かりに浮かび上がっていた。


彼らは僕に近い存在のように感じた。

——でも、誰なんだ?


僕が近づこうとしたその時、

目が覚めた。見えるのは、いつもの天井だけ。


「…うわぁ!夢だったのか?」


夢の途中、

僕は腹の虫で目を覚まし、台所へ行った。


台所には、茹でたジャガイモが2つだけ。


「…ジャガイモだけ?ま、いっか。」


それを持って部屋に戻り、食べる。


食べ終えると、僕は勉強机に向かった。


「さあ、観察を続けよう。」


僕は火星を研究している。


「惑星。それは、我々の祖先…つまり神々によって造られたもの。」


そして続ける。


「ある哲学者たちは、それらに名前を付けた。

たとえば“アレスの星(火星)”。でも、何かが足りない気がする。」


——火星には、何かが欠けている。


「僕はアレスの星(火星)を観察してきた。

でも、その軌道は一度、逆行したように見えた。何が起きたのか、まだ研究中だ。」


「軌道が逆行したその瞬間、

まるで人間が、真実にあと一歩で届くのに、

疑念と思想のせいで引き返してしまうようだ。」


(僕はため息をつく)

「はあ…この世界は一体どうなっているんだろう。」



宇宙の秩序。

それは哲学者たちによって語られたが、僕には美しく思えない。


神々による不平等。

彼らの創った不公正が、僕の信じる真実を揺るがす。


あれほど輝く星々、

あの丸い月ですらそうなのに——


なぜ、彼らはこう言うのか?


「地球は平らである」と。


**終わり**

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