究極カップラーメン戦争〜長年カップラーメンを愛し続けた俺のカップラーメン調理技術は世界最強!〜
@tetois
第1話 究極の味
ずっと俺はカップラーメンのプロになりたかった。10歳からの夢だった。挫けそうな時、諦めそうな時、俺を支えたのはカップラーメンだった。
……これは俺が未だ見ない最高の一杯を作る。そんな物語だ。
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2009年8月29日……。
「櫻井くん。突然呼んで済まない。単刀直入に言おう。君には我が社のカップラーメン課に配属が決まった。今我が国で一番ニーズがあるのはカップラーメン……会社の一存が関わるレベルのプロジェクトだ。存分に頑張ってくれたまえ!」
……ついに来た!この辞令が!プロになりたいと願って十年……。俺に憧れのカップラーメン課の配属が決まった。
「本当にですか!?はい!頑張ります!」
「まずはそうだな……。君が美味しい物を作れるという知名度上げと学びの為にもアマチュア大会に出るといい……。これは調査費だ。期待しているよ。」
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社長から辞令が下った後、俺はスーツを着こなし、カップラーメンのプロの入り口とも言える町である宇出へと向かった。同じ課の事務員を務める永瀬さんも同行した。
「櫻井さん!ここからわが社の伝説が始まりますね!絶対にプロジェクトを成功させましょう!」
「……ああ」
俺はテンション低めで返し、対戦相手を探していた。ぶらりぶらりと歩いていた所、屋台をやっている鉢巻を巻いた男が俺を呼びかけた。
「よう。その目付き……貴様も作っているな」
「ふん……だったらどうする?」
「当然申し込む。対戦を!」
対戦を申し込まれたか。まあいい。せっかく来たんだ。デビュー戦としてはちょうどいい。俺は宇出の大会管理局に直ぐ様電話を繋げた。
暫くすると大会のステージが設営され、対戦が始まった。
「レディースアンドジェントルメン!今から始まりますよ!今回対戦するのはッ……まずは左ッ!宇出でアマチュア界のトップとも呼ばれた男!今にも鯉から龍に成り上がりを果たそうとしております……字はッ安藤耕一郎!」
安藤耕一郎……聞いたことがあるな。最近アマチュア界で最も注目されているんだっけ。まあ誰が相手だろうとぶっ潰すだけだ。
「そして右ッ!今回始めてこの地に降り立ち現れた新たな挑戦者!その正体は果たして……。字はッ櫻井翔吾!」
「櫻井さん……どうかご武運を」
永瀬さんが贈るエールに対し、サムズアップで応えて俺はステージ上へと駆け上がる。
「審査員は2人おります。さぁまずは先行!安藤さんから始めてください!」
審査員は楽街と八女川。楽街はラーメンの巨匠とも呼ばれる60歳のプロの料理人……。八女川は半ば20歳でありながら2年前にチャンピオンになったカップラーメン界の撫子姫とも呼ばれるロングヘアーの女だ。
安藤は直ぐ様調理器具とカップラーメンを準備した。味噌󠄀か。一番王道であるが故に実力が最も反映されやすい味。安藤の自信を伺える。
彼はふたを勢い良く開け、火薬を振りかける。そして湯沸かしの為の水と鍋を持ってきた。水は六甲の水……。そしてケトルではなく鍋。拘りだな。
「ふん……見とけ新人。先輩としてだ。教えてやるぜ敗北の味ってやつをッ……」
やがてグツグツと沸騰した湯をまるでビールを美味しくする為にあえて高く入れるかの如く注ぐ。湯と麺は混ざり合い、白に輝いていた。
3分後全ての調理を終え、後入れスープを入れ、安藤は審査員に手渡す。そして俺にもそのラーメンが来た。
「出来上がりましたので皆様右から順にすすってみて下さい!まずはカップラーメン界の巨匠!楽街さん!」
楽街がラーメンの感想を語る。
「やるなと言った感じだね。味噌という味の都合上実力が直接問われる物だが、ここまで来たか――。基本の麺の固さ、スープの絡みなどが極めて洗練されている」
「八女川さんはどうですか?」
「そうねぇ……。私も同意見だわ」
安藤……どんなラーメンを作ったんだ?一先ず勢い良く音を出し啜ってみた。成る程。確かに楽街さんが言った事は間違えはなさそうだ。基本を極めた魂の一杯といった感じか。
……だが、それだけだな。
「挑戦者の櫻井さんはどうです――」
その瞬間俺は安藤のラーメンの器を腕で一気にひっくり返した。
「なっ……何しやがる!」
「このカップラーメンは俺から言わせれば生き恥だな。これを称賛する楽街さんと八女川さんの精神もはっきり言って正常じゃあない。どいつもこいつも節穴だ」
それに対して司会者が反論する。
「櫻井さん!じゃあ貴方はこれ以上が作れると!?」
「ああ……。基本を極めるだけ、それだけじゃあプロとは言えない……。俺が本当のカップラーメンの姿を見せてあげますよ。勿論……あんたと同じラーメンで」
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