ブルー・ホライズン -意識多重世界の果て-

Algo Lighter アルゴライター

プロローグ:その空は、記録されていない

それは、統合ログに残っていなかった記憶だ。


どの意識にも該当せず、

どの視覚データにも一致せず、

国家記録網にも記されていない。


けれど僕は、確かにそれを“見た”。


青い空が、風に揺れていた。


誰にも制御されていない空。

指定された色彩パレットにも含まれない青。


息を吸ったとき、胸が痛くなった。

それは懐かしさでも恐怖でもなく——

きっと、“生きている”という感覚だった。


それが何なのか、わからなかった。


主意識も、副意識も、それを知らない。

けれど、僕の中にだけ、もう一つの“誰か”がいる。


——君は、まだ“本当の自分”を思い出していない。


そう、青い空は言った。


(静かなノイズ、揺らぐ光、立ち上がる風景)

——ここから始まる。

“選ばされた世界”と、“選ばなかった世界”の狭間で、

僕は、僕自身を選びなおす。

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