第8話 慈愛の変態シスター

大陸中央、交易国ラドリアを越えた先。

森の中にひっそりと佇む小さな村に、レオンたちはたどり着いた。


その中心にあるのは、石造りの立派な教会。

朝の光に照らされ、白いローブのシスターがその前で祈りを捧げていた。


「神よ…どうか今日も、平穏な一日をお与えくださいませ……」


優しげに呟くその声の主は、シスター・エリシア。

しかし、そんな静寂は――

ガチャッ。


教会の扉が無遠慮に開かれた音で、あっさり壊される。


ズタボロの顔のレオンが、祈りの空間に土足で踏み込んできた。

「ここって教会だよな。もしかして……バハムートの呪い、解けたりしないか?」


「呪いじゃないでしょ!? ただの股間召喚獣でしょ!」


「フン。俺を呪い呼ばわりとはいい度胸だな」


リシアナがすかさずツッコミを入れる中、エリシアが静かに振り返った。


そして彼女の視線が、レオンのズボンに向けられ――止まった。

その中で、ひときわギラリと光るバハムートの瞳。


「……股間に竜……!? まぁ、なんて穢れた変態でしょう……」


にっこりと微笑むエリシア。

その笑みは、どこか――ゾクッとくるほど狂気を含んでいた。


「違う! ちがいますからっ! 俺は変態じゃなくて、事情があってこうなっただけで!」

「そうそう。これ、召喚獣なんだよ。レオンがうっかり――」

「うっかり股に宿っちゃって、呪いみたいなもんなんです! だから、なんとか解呪的なことを!」


必死に説明する一行に、エリシアは慈愛に満ちた声で頷いた。

「まぁ……それはまさしく呪いでございますね。なんて可哀想な……」


「ならば、この神の慈悲と聖水で――たっぷり、た〜っぷり清めて差し上げましょう……ふふふっ♪」


そう言って聖水の壺を手に取ると――


バッシャァァァッ!!


躊躇なく、レオンの股間めがけて豪快にぶっかけた!


「グオッ! 冷たい!?!!」

「うわ、何すんだ!ずぶ濡れだよ!? ズボンごとビショビショなんだけど!?」


レオンがズボンを押さえてバハムートと共に悶絶している間にも、エリシアはさらに追い打ちをかける。

「ふふふ……まだまだ呪いがうずいておりますね。ええ、我慢など要りません。もっと良い声で鳴いてくださいませ…はぁっ」


「やめてぇぇぇぇぇええええ!!」


しかし彼女の慈愛は止まらない。

手にした神の錫杖を、今度は優雅に振りかざして――


「神罰を……受けるがよいっ!」


ゴスッ。


見事に股間へクリティカルヒット。


「グゥッ……!?」


バハムートが豆粒サイズに縮んで震えだす。

かつての威厳は見る影もなく、ズボンの中でぷるぷると戦慄中。


「いい反応です……ですが、まだまだ清め足りませんね。もっとたっぷり、もっと深く……はぁっ……!」


ゴスッ。


「やめろぉぉおおおおおお!!」


何回かの慈愛という名の暴力を繰り返したあと、レオンの絶叫でようやく錫杖は止まり、エリシアは蕩けたような笑みで言った。


「ふぅ……素敵なプレイ、いえ、解呪でしたね。ですが、まだ完全に解けたわけではありません。今後も定期的に、私が付き添ってケアさせていただきます」


「もうプレイって言ってんじゃん!それ絶対違う目的だよね!?」


リシアナが目を丸くして問う。

「えっ、一緒に旅するってこと?」


「はい。神の使徒として、放ってはおけませんから。じっくり丁寧に、徹底的に…なぶ…救って差し上げます」


「いやいやいや! 旅に変態が増えたぞ!? 誰か止めて!!」


ティアは楽しげにニヤリ。

「面白い観察データが取れそうだね。今後も頼むよ、ドSシスター」


「受け入れるのが早いっ!やめろ!」


だが――エリシアはその耳元にそっと囁く。

「安心してください。神の愛でたっぷり可愛がって、いえ、救って差し上げますから」


「誰か助けてぇぇええええ!!」


リシアナが肩をすくめて一言。

「レオン、ドSシスターまで仲間になったね。解呪っていうか……完全に変態プレイじゃん」


「俺の旅、どこに向かってんだよおおお!!」


こうして。

慈愛のドSシスター・エリシアが新たに加わり、レオン一行は再び旅を続ける。


――股間竜と変態たちに囲まれながら。

過激と混沌、そして羞恥に満ちた冒険は、まだ始まったばかりである。

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