悪役令嬢ざまぁモノの脳筋枠が本当に脳筋すぎた例

望月もちもち

ドゥルイトの愚将オズマンド・バラス

 ドゥルイト王国の騎士、オズマンド・バラスの評価は愚将であるとされている。

 二百年続いたドゥルイト王国の末期に生まれたオズマンドは宮廷貴族バラス子爵家に生まれた。父であるバラス子爵は国王の側近である侍従長の地位にあり、オズマンドも同年の第二王子の側近として侍っていた。


 オズマンドが史書に初めて名前が出るのはシュリュズベリィ公爵令嬢襲撃事件である。

 突如としてドゥルイト王国の宮中においてオズマンドが激昂し公爵令嬢に斬り掛かった事件である。


 なぜ、オズマンドがこのような行為に及んだのか不明であり、史書にはこの事件によってシュリュズベリィ公爵家の人間2名がオズマンドによって斬殺され、オズマンドは投獄、オズマンドの父であるバラス子爵は賜死となった結果のみが残る。


 オズマンド・バラスが再び史書に登場するのはそれから三年後。

 ドゥルイト王国の愚行によってもたらされたアヴァロン王国による戦争、並びにドゥルイト併合とも呼ばれる併合作戦である。


 半年による戦争の結果、アヴァロン王国王太子アーサーによるドゥルイト王国の王都ドゥバッハの陥落により戦争が終結。王都の外から降伏を申し出てきたドゥルイト側の将兵のひとりにオズマンド・バラスの名前が記されている。


 そして、ドゥルイト併合によって処刑された王侯貴族のひとりの中に数えられた貴族であった。


 なぜ、オズマンドが刑に処されたのか。その根本的な理由はいまだ不明とされる。

 いくつかある説のうち通説とされていたのはかつてドゥルイト王国の公爵令嬢であり、後に黄金王と呼ばれるアーサーの正妃となったシュリュズベリィ公爵家の令嬢アレクシアの意向が働いたとされる。

 またそれ以外にもアーサー王個人の怨恨やオズマンドの命惜しさに降伏してきた卑劣さに激怒したものなどあるものの、あくまで伝聞であることとあくまで説のひとつでしかない。


 しかし、ある種においてアレクシアがドゥルイト王国から追放された理由の一つでもある襲撃事件の主犯であり、第二王子の側近であったにも関わらず、王子の愚行を止められなかった罪。


 オズマンド・バラスという男が多くの書籍や演劇において佞臣というイメージを作られることとなった一因であることは否めない。


 短慮であり、戦争においてなんら役割を果たすこともなく、誇りもなく敵国であったアヴァロン王国に降伏する情けなさ。

 惰弱であり、卑劣であり、欲深で愚かなドゥルイト王国貴族の象徴。


 それが愚将オズマンド・バラスである。

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