第19話 これ以上の幸福があるなら教えて欲しいね
バチんと、確かに割れたというヒビのようなあとを残して、あとはなにも残らなかった。圧死。八谷はきっと、化石となって発見されることだろう。大人の死骸なんてどうでもいいけど。
「ほんと久々だな。これ」
「あんまり使う機会ないからね。大技すぎて使い勝手も悪い。それに屋外でしか使えないと来てる」
「……機嫌、治ったんだな」
「男児の敵は死んだ。これ以上の幸福があるなら教えて欲しいね」
「……本当に?」
「ん?」
「本当に、おれ、この姿でよかったよ」
「だね。じゃないと、ぼくは絶対、手を貸さなかった」
「……というか、おれ、この姿でも若干不安が残るんだけど」
なにを言ってるんだい。
「ぼくは見て聞いて愛でる側だよ。ショタコンにもいろいろ種類がいてね。特にぼくが男児の声と仕草に惹かれるのさ。体を弄ってどうこうする趣味はない」
「そうかい。それは安心――」
「いや、それは表現が違うか。そういう趣味は、まだ、ない」
「…………」
「…………」
「あはは………」
なにをそんな引きつっているんだい? 可愛いなあ。
「まあ、神様も大人だったってことだし。さっきも言った通り手を貸すよ。その神様探し、そんで神様殺し」
「そっか。そりゃあ助かる。おれだけじゃあ、多分無理だからな」
「だから、それまでは子どもでいて欲しいね」
「……努力するよ」
努力で維持できるのか。流石だ、地球。
地割れがあった場所に背を向け、歩き出す。この結果を、運転手は見てくれていたのだろうか。……見ていたとしたら、ぼくのことを、どう思うだろうか。
いや、そんなこと、関係ない。ぼくが今興味があることといえば、関心を向けるとすれば。
「このフットサルコートに、また元気な子どもがたくさん見れますように」
あ、いや、少し表現が違うな。
元気な男子児童がたくさん見れますように、だった。
―― 了 ――
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