第16話 神頼みって、あるじゃんか
「神頼みって、あるじゃんか」
割葉と出会って間もなくのこと。まだ事態を呑み込めていないぼくに、割葉が言ったことがある。
「あれってさ、無駄なんだぜ?」
「無駄っていうのは、神様はそんなこと無視するっていう」
「ちげえよ」割葉は、言った。「言語が違うから、届かないんだ」
「言語……」
「日本語だとか英語だとかの言語だ。おかしいとは思わんのか? 種族が違えば、使う言語がかわる。草木は人語をしゃべらん。動物は人と会話できん。なのに、――なんで神とは人語で会話できると思ってるんだ?」
「……………」
「お前だけなんだよ、深椎木 言誤。お前だけが、神と対話できる唯一の人間なのさ。お前は世界中で、ただ一人、人間でありながら神と対等に話ができる人間なのさ」
「……じゃあ、なんで、その神様は魔法使いなんてものを生んだのさ。直接会いにくればいいのに」
「そんなの、怖いからに決まってんだろ」
「…………」
「怖いのさ。怖いんだよ、あいつは。とにかく臆病なんだ。だから会いにこない。遠巻きに観察して、弱るのを待つ。それがあいつの手段だ。それに、喋れるということは、会話できるということは、殺すこともできるんだ。わかってるか? 言葉で殺す。心を殺す。消えない傷を付ける。言葉ってのは、脅威なのさ。お前らだって、言葉の暴力っていうフレーズがあるんだろ? それとおんなじだよ。ただ、同じ暴力でも、お前から言われるのは、桁が違う。唯一会話できるお前が、神に死ねとでも言ったら、いやそんな直接的な表現じゃなくてもいい。ちらっとでも、無意識でも、そんな気じゃなくても、口から出ちまえば同じだ。その言葉はあいつを殺す」
「…………」
「魔法使いは、お前を連れてくるための駒だよ。それだけの役目だ。ほかに理由もない。存在意義なんてない」
――四つ葉戦争の最大の目的は、深椎木 言誤。お前の捕獲だよ。
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