アルヴァノス--運変の龍

博登あかと

プロローグ

龍が見たものと世界


--龍は、その一瞬を見ていた。


少女は血を流し…………


不安定な空気が満ちる中、戦の匂いが濃くなっていくのを感じる。

こんな状況で、私は自分の力のなさに悲観するしかなかった。


 そして、目の前で繰り広げられる光景。

“悪しき黒い男”の動き、速さ、そしてその背後に隠れた狙いに、私はひとしきりの警戒を覚えている。しかし、その男の動きの先にあるものがどうしても気になった。


それは、くろいおとこの背後で動く“風”——


 『少年。』


 その名を心の中で呼びながら、私は息を呑んだ。

その『少年』は、驚くほど冷静だった。いや冷静と言って良いのか?


 私が焦りを感じる前に、すでに戦闘の準備を整え、動き出している。私はその動きにただ目を見張るばかりだ。


 『少年』の体は風のように、次第にその動きが鋭さを増していく。それはまるで、大地を割るかのような威力を秘めた風。

その風に包まれる少年の姿は、確かに、普通の人間ではないと感じる。だが、その表現も何かが違う――いや、むしろその違いがあるからこそ、私は彼を信じられるのだ。


 男は『少年』に飛ばされると、すぐに風が動き、男を空中に持ち上げていく。『少年』はその瞬間に、足元から風を駆使して戦局を作り変えている。

風は次第に男を操るように、彼を運び、まるでゲームの駒のように動かしていく。それを私はただ見守っていた。


 そして、もう一度、男の目の前に『少年』が現れる――。

がしかし、やはり、男の電属性でんぞくせいによる攻撃は鋭く、迅速だった。

それは予測しづらく、ある意味でこの状況では一番の脅威である。しかし、『少年』の動きは遅くなく、ましてや焦ることもない。


 むしろ、何かを計算しているかのように、男の攻撃をあっさりとかわし、彼に向かって放った――“風の玉”。その瞬間、私の体が反応し、心臓が一瞬高鳴る。

 『少年』が放ったその力は、確実に敵に届く。その圧倒的な力を発揮しながらも、『少年』は少し涙を流している。その優しい心は何よりも私を安心させ、信じさせる要因だ。


 「ぐっ……」


 その声を聞いたとき、男が新たに使った“術”がその瞬間、明らかになった。『少年』の攻撃が当たると同時、男が繰り出した力は一種の反撃だろう。


その反撃は『少年』に当たってしまった。しかし、確かに一瞬だけでも、『少年』の力が彼に届いたことは確かだ。


 その刹那せつな、私の心はまた少し強くなった。少年の力が届いた証拠を、私の目の前で見たからだ。

私は彼の力になりたい。彼が望む道に進めるように。




・・・・物語の世界・・・・


——アルヴァノス——

この世界を作ったとされる神の名にちなんで、人々はこの地をそう呼ぶ。


 アルヴァノス紀839年春

この地には

<スセイリア王国>、<ミカドリア王国>、<タケミナール帝国>、

<コガクシア聖典国>、<アマノガルド共和国>が存在する。


またそれぞれが順に<自由><規律><強さ><学び><自然>を重んじている。


 各国には広大な領土があるものの、首都や主要な都市を除けば、多くの地域にはモンスターなどの敵対生物が頻繁ひんぱんに出没している。実際には、人々が安全に暮らせる範囲は限られており、名ばかりの領土となっている地域も少なくない。


 そして、スセイリア王国領『カザミ村』、ミカドリア王国との大森林と湖を挟んだ国境付近の村に運命が訪れようとしていた。



——カザミ村——

 人口はおおよそ380人。98世帯からなる村はスセイリア王国の中でも人口の少ない村だが国全体の街や村と比較すると子供の割合が多く子供達のはしゃぐ声で人口以上の活気を感じることができる。


 周囲が大きな森で囲まれており村の南には『首都スセイリア』へと繋がる道があり、また北側には『ミカドリア王国』との共同管理となっているこの世界で一番大きな湖『セーデリウス湖』がある。


 村は森林と湖に恵まれ、木材資源、魚類や農作物を王国に納めている。

自然豊かな村ではあるが恵まれた地形は野生のモンスターにとっても魅力的で、村でも警備隊はいるが王国からは定期的に騎士が改めて周辺の調査・討伐の為に派遣されてくる。

 ここの子供達はそれらの自然や人々を見て育っている。

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