第27話 四天王筆頭
タクのもとに大陸西部に残るダンジョンや魔物を討伐した素材が大量に献上された。それらの素材を吟味して生活に必要なものなどを各国に割り当てた。
タクの考えた生活品は各国の職人によって作れるようになっているので、素材から生活を便利に豊かにする道具が国民の手にわたっていく。
今はすべての人類の総数が少ないので、こういうことが簡単に行っていける。
これは良いことでも有るが、何をするにも人手が足りないという事実であり、そして人口の増加は短期間でどうにかできることではない。
先の戦争でタクはそれを痛感した。
戦闘で大切な人々を失う訳にはいかない。
単純な戦闘を担う道具を作らなければいけない。
「個々のホムンクルスに制御させる戦闘用の道具、兵器を作る」
「……致し方ありませんね、我々は明確に魔王軍の的になりました。
我々が戦力を担って人類の剣となる」
大陸の2/3まで壁は完成している。この作業と並行してタクは兵器開発に着手していく。
「大出力魔法をもっと安全に防げないと駄目だね」
「迎撃型だと味方に被害が出ましたからね」
「盾方式は出力勝負になってコストが高いんだよねぇ」
「連発されるとエネルギー切れになる可能性がありますね」
「……敵の魔法を利用して防ぐ盾つくればいいんじゃないか?」
「まぁ、そうすればエネルギー源は相手が用意してくれますが、相手の魔法を防ぐ魔力を相手の魔法からって、成立しなさそうな……」
「魔力を吸収するシステムと、防ぐシステムを連続して配置していけば……よし、こんな感じでいいかな、エリシュお願い」
タクはその場でささっと試作品の盾を作り出していく。それを地面に突き立ててエリシュが魔法を放つ。
エリシュの魔法が盾に当たると格子状の魔法陣が魔力を吸収し、後方に盾を生み出す。残念ながら速度が間に合わずに先端部分が盾を破壊してしまった。
「もう少し時差がないと危ないな……だったら」
タクは思いついたシステムをすぐに形にして試験を繰り返して運用に耐えうる物を産み出していく。
グランバスティオンが魔法で破壊できない存在になると同時に、タク達の兵士たちにも魔法が通用しなくなった。
もちろん、簡単に作り出しているように見えて、とんでもなく複雑な工程がぎっしり詰まっているので、タク以外の存在がこれを成立させるためには国家規模のプロジェクトになるために現実的ではない。
小型化して自動運用なんて離れ業は現状タク以外に実現不可能なのだ。
人類と魔族、この種族の間には大きな差が存在した。
力の差もある。
最も大きな差が基本的に魔族は不死不滅であるということだった。
だから人類たちを滅ぼしていたのも、気まぐれのようなもの、時間の価値もまるで異なる。
四天王筆頭、火のレイヴィンがアザスから話を聞いて動き出すのは、気が向いたら。であって、早急に調べようとも思ってもいない。もちろんアザスも、いつか行くのであろう、程度にしか考えていなかった。
結果として、タクは大陸縦断グランバスティオンを完成し、北東の島に隠れ住む巨人族、東の妖精族、南東の竜神族を救い、魔人達の住む魔王領を覆うように壁を構築、各国を街道で結び、高速移動用交通網を張り巡らせ各国を大いに豊かにしていく。人類7種族は手を取り合い魔王たちに対抗する借りの国家セブンスを作り出した。7種族の長が共同で治めるその国家、しかし、本人が認める認めないに関係なく、その国家の上にタクとホムンクルス、ゴーレムの組織が存在している。
そんなこんなで、魔王国の外はすっかりと変わってしまっていったある日、火のレイヴァンがその気になるのであった。
「それではこれより人間どもの作った壁とやらを見に行くとする、皆ついて参れ!」
レイヴァンが率いる魔人部隊、魔獣部隊は四天王最大。その量、質共に他の四天王を圧倒している。レイヴァン自身は地獄の炎を表した鈍い赤色の鎧を身に着けている。魔法も武力も四天王1。周囲を焼き尽くしてしまう己のオーラを鎧で封じ込めているほどの存在である。その部下たちも非常に強力な魔人や魔獣が多く揃っており、とくにレイヴァンが跨る火龍王ヴェルフェリエイアは一体でいくつもの国を焼き尽くしてきた。
邪悪なオーラさえ感じるレイヴァンの一団が、魔王城のある
「なん、だと?」
眼下に広がる広大な更地と巨大な壁が地平線まで続いていた。
「報告と違うではないか?」
「あんなもの吹き飛ばしてやりますよ!」
部下の一人が前に出て魔法を唱える。
「くくく、やりすぎるなよ、大陸自体を壊してしまえば魔王様の暇つぶしが無くなる」
「紫極の深淵、虚ろなる空虚、闇よ雷よその力を顕現し壊せ、壊せ……
魔人の前に空虚が現れる。風が消え、音が消える。
次の瞬間その空虚から閃光と雷光が絡み合いまるで踊るように放たれる。
その膨大な力に大気が震え地が割れる。
暴力を体現したようなエネルギーの暴竜が壁に激突する。
次の瞬間、壁はそのエネルギーの全てを一瞬で吸収し、大気を焼き、地面を溶かした極大魔法が、消え失せたのだった……
「は?」
魔人は自らの手のひらを見つめ、今目の前で起きた現象を理解できずに立ち尽くすしかなかった……
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