第5話 神社にお詣り(前編)

 翌日、午前十時に家を出発して最寄り駅へと向かった。二回ほど乗り換えしなければいけないが、まなみが抜かりなく調べてくれていた。


 電車を降りて歩く事、十五分程で目的地近くに到着。今は十一時を少し回ったぐらいだが腹が減ってきた。


 少し早いけどお昼は神社の近くにある蕎麦屋が有名らしいので、先に行ってみるかという話になった。


 幸い平日の少し早めの時間だった事もあり、然程店内は混雑していなかった。俺たちはテーブル席に座り、それぞれ冷たい蕎麦を注文した。


『はーっ、分かってたけど暑いねぇ…お店の中は冷房が効いてて涼しいけどさ』

「ホントだな…帰りはアイスでも買って食べながら帰るか」

『ホント⁈和兄ぃの太っ腹!』

「まぁ俺のためにわざわざ神社まで一緒に来てくれたんだから、それぐらいはな?」


 アイス一つで大喜びするまなみを見ていると、こういう所は子供っぽいよな。普段は真面目なしっかりものだけに、ギャップがあって余計可愛く見えるというか––––。


 そうこうしている内に三人前のざる蕎麦が届いた。麺は風味豊かでコシがあり、ツユも絶品。流石に評判の店だけはあるな。


 三人で美味しく蕎麦をいただいた後は、いよいよ目的の神社の境内を目指す事に––––。


 途中百段の階段があり、上まで登るのに一苦労だ。俺は息を切らしながらなんとか登っていくものの、まなみは軽やかに駆け上がって行く。


『和兄ぃもお姉ちゃんもダラしないなぁ…それに、お姉ちゃんはなんでサンダルで来ちゃったの?』


 歩きやすそうなスニーカーのまなみとは対照的に、あかりは見栄えを重視した白基調の可愛い見た目のサンダルを履いていた。確かにこれでは歩き辛そうだ。


「あかり、大丈夫か?」

『うん、大丈夫…っていいたいところだけど、ちょっと靴擦れしちゃったかも』


 俺はあかりの痛がる場所を見てみると、確かに赤くなっていてそのまま歩くのは辛そうに見えた。


「仕方ないな、ほら俺の背中におぶされ」

『ごめんね、和樹…お言葉に甘えるよ』


 俺の背中に乗ったあかりだが、思った以上に軽い。それでもこの階段がキツい事には変わりないが。だが俺にとってはそのキツさを忘れさせるものを感じてしまう。


(あかりのいい匂いと…ふくよかな胸が俺の背中に当たってる––––や、柔らかい。しかしこうやってあかりをおんぶするなんて、幼稚園の頃以来だけど本当に成長したよなぁ…特に胸が)


 俺が感慨に耽りながら階段を登っていると、まなみが大声を上げる。


『あーっ!お姉ちゃん、ズルいよ⁈ま、まさかこのために歩きづらいサンダルを…?昨日だって和兄ぃに分けるために、チーズケーキを頼んでたし…⁈』


 上段から俺たちの姿を見ていたまなみは、あかりの意図に気付いたようだった。そして俺は見事に密着して胸を押し付けるというあかりの策略にハマっていた––––。


『和樹、ありがとう。このお礼に…帰ったら私のおっぱい、好きにしていいからね?』

「………っっっ!」


 最近のあかりの破壊力はとんでもない––––俺にわざと甘えて、その後に俺を甘えさせるなんて真似をしてくるんだから。


 基本人に迷惑をかけないように、と考えるまなみには出来ない事だろう。まぁまなみはまなみであかりには出来ない事をやって来るんだけどさ。


『お、お姉ちゃん…そこまでするなんて!』

『え?それを言ったら、昨日私が何回替わってって言っても、ずっと和樹の上に跨りっぱなしだったでしょ?お陰で私は二回しかしてもらえなかったのに…』

『い、いやあれは…和兄ぃに私の良さを分かってもらう為というか––––』


 そう、上になったまなみは凄いのだ。8の字を描くようにねっとりとした艶かしい腰使いかと思えば、搾り取るように激しく動いたり…その上、俺の口内を思う存分吸い尽くしてくる。


 …なんて考えてる場合じゃ無いな。ただでさえあかりをおんぶしていて歩きづらいのに、この状況で膨らんできてしまったら––––。


『じゃあ今日はその分、私の良さを和樹に教えてあげるから。まなみは大人しく見ててね?』

『えー⁈どうせご自慢の胸で和兄ぃを籠絡するつもりなんでしょ?』

『和樹はおっぱい星人なんだもの、使える武器は使わないとね?』


 …周囲に人はまばらにしか居ないとはいえ、公衆の面前で何を話してるんだこの姉妹は?


 そして俺というと、二人の会話から今日家に帰ってからの事を想像してしまい––––おんぶの前傾姿勢から更に前屈みになってしまった。

 

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