第3話
第3話:裏切りの代償
佐伯隼人が次に目にしたのは、ネルフ本部の中でも最も人の出入りが少ない地下施設だった。そこには、ゼーレの指示によって新たに設置された調整室があり、その中には数人の影のような存在が集まっている。彼はそこで、今後の物資供給の管理を再編成するための具体的な話を聞くことになっていた。
加持リョウジが約束通り、佐伯をここへ案内してくれた。加持の表情はいつものように冷静で、どこか陰湿な空気を漂わせている。しかし、佐伯の心は先ほどから少し乱れていた。ゼーレの指示がどういう意味を持つのか、そしてそれが自分にどれほどの影響を与えるのか、未だに理解しきれない部分が多かったからだ。
地下施設の冷たい空気が佐伯を迎える。加持は無言で通路を歩き、佐伯もその後を追う。何度も通り過ぎてきたはずの施設だが、今はまるで新たな迷路に迷い込んだような気分だった。
加持が突然立ち止まり、扉の前で足を止めた。
「ここだ。」
低い声で、加持が告げる。
佐伯は頷き、扉を開けた。中には何人かの男性が座っており、テーブルの上には無数の書類やモニターが散らばっている。だが、目を引いたのはその中にあった、もう一人の人物だった。彼は、冬月コウゾウだった。
冬月は、周囲を一瞥した後、佐伯を静かに見つめる。その表情には、わずかな期待とともに冷徹さが宿っていた。
「佐伯、お前が来たか。」
冬月はやや無愛想に言った。
佐伯は軽く会釈し、テーブルの向かい側に座った。目の前に広がるのは、ゼーレの要求に応じるための新しい計画の詳細だ。それは、ネルフにとって、最も危険な一歩とも言える内容だった。
加持は横から口を開いた。「ゼーレは今、ネルフの全ての動きを掌握したいと考えている。今回の物資供給に関しても、内部調整を行い、実行部隊を編成するという形になった。」
佐伯はその言葉を深く受け止める。ゼーレがこれほどまでにネルフに介入しようとする意図は、一体何なのだろうか? 彼の脳裏には、先ほど加持が言っていた言葉がよぎる。ゼーレとネルフの対立が、これから自分たちをどう翻弄するのか、その先に待ち受ける試練は、ますます予測できなくなっていた。
「君には、新たに編成された調整部隊のリーダーとして動いてもらう。」
冬月が口を開く。「ゼーレの要求に従う者と、従わない者。これからはっきりとその線引きをする必要がある。」
「つまり…」
佐伯は慎重に言葉を選ぶ。「ゼーレの要求に従うことが、今後のネルフの未来を決定づけるわけですね。」
冬月は無言で頷く。佐伯はその瞬間、心の中で強く確信した。これは単なる物資供給の問題ではない。ネルフ内部での立場、そして自分の未来を決定する、大きな分岐点が迫っているのだ。
加持が続けて言った。「だが、注意すべきは、ゼーレの指示だけではない。ネルフ内には、冬月のように独立を守ろうとする勢力もある。その争いが、君にどれほど影響を与えるか分からない。」
その言葉に、佐伯は背筋が冷たくなるのを感じた。ネルフという組織の中で自分が選ぶ道が、どれほど危険を伴うものか、今更ながら痛感させられる。
「私たちは、ゼーレの要求に従い、調整部隊を編成する。そして、情報を漏らさないように、全てを徹底的に管理する。」
冬月は続けた。「もし、情報が外部に漏れれば、ネルフ全体が崩壊する危険性がある。お前の責任は、これまで以上に重大だ。」
佐伯はその言葉をしっかりと受け止めた。この先、彼がどんな選択をしようとも、その結果は全てネルフ、そして人類の未来に関わる。彼の肩には、途方もない重圧がかかっていた。
加持が最後に言った。「君がどのように動くかで、今後のネルフの運命が変わる。その覚悟を持って、行動しろ。」
その言葉が、佐伯の心に強く刻まれた。選択肢は一つではない。だが、どの道を選んだとしても、裏切りと代償を払う覚悟が必要だ。今、彼が立つべき場所は、どこなのか。
次回予告
佐伯は、ゼーレからの更なる圧力に直面し、自己の道を選ばなければならない。ネルフ内部で進行する複雑な駆け引きが明らかになり、佐伯の行動が組織全体に波紋を広げていく。裏切りと陰謀が交錯する中、彼の選択が全てを決定づける。
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