第2話 ゲームが作りたい

 オリジナルゲームが作りたい。しかし、どうすればいいのかわからなかった。心がもやもやしながら、今日も学校へ行った。


 教室の後ろの壁には以前、習字の時間に書いた『漁夫の利』の文字が並んでいた。そして、その近くで、男の子たちがなにやら会話をしている。私は耳を澄まして聞いてみた。


「木を見て森を見ずだと? むしろ、森の中から木を探せ」

 意味不明なことを言っていた。


 私はこの人たちは国語のテストの成績が悪いのかなと思った。しかし、国語自体はできるのかも……とも思った。



「おはよう!」


 友達の支子つかこが話しかけてきた。


「おはよう……」


 私の表情があまり良くないのか、支子も困っているようだった。


「ゲームのプログラムを入力して動かしていたんだけど、自分自身のプログラムが組めないんだ」


 私はそう言ったが、もちろん支子がわかるわけがない。


「宝石の原石は磨かないと、輝かないんだよ」


 支子がそう答えた。


 私が理解できてない顔で困った表情をしていると……


「余計な部分を削り落とすと、見たいものが見えてくるよ」

 ニコニコしながら、そう答えた。


 どういうことだろう。そう思っていると、『キーンコーンカーンコーン』とベルが鳴り、授業が始まった。



 なにか心がもやもやして過ごしていたら、いつのまにか下校時刻になっていた。支子は部活があるらしく、今日は私は一人で帰った。



 帰る途中、小学生高学年の男子だろうか。自動車のおもちゃを捨てようとしていた。そこへ友達だと思われる男の子が話をし始めた。


「それ、捨てるの? じゃあ俺にちょうだい」


「でも、その自動車、電池で動くんだけど、まっすく走らないぜ」


「いいよいいよ。モーターの部分が欲しいだけだから」



 私はその会話聞いて、支子が朝、話したことを思い出した。


(宝石の原石は磨かないと、輝かないんだよ)


 そっかー。欲しい部分だけを残せばいいのね。急いで走って家に帰って、パソコンの前に座った。


 私は雑誌にあったプログラムで以前に自分で入力した、プレイヤーが上下左右に動くことができ、画面上に散らばった餌を決められた時間以内に食べる……というものがあり、それをロードした。


「プレイヤーが上下左右に動くところのプログラムだけが欲しい。それだけを取り出そう」

私はそう呟いた。


 要らなそうな部分を消して、動くかどうか確かめる。ちゃんと動いていそうだったら、プログラムをセーブする。ダメだったら、一つ前をロードする。これを繰り返す。次第にプログラムが減っていき、洗練される。


「(おそらく)できた~!」


『プレイヤーが上下左右に動く』の出来上がりである。

 これは永久保存しておく。


 次は迷路内において、敵を避けながら、重要なアイテムを数個取るとクリアするゲームをロードした。これも以前に入力したものだ。


「迷路内の敵の動きだけのプログラムを取り出そう」

私はまたまた呟いた。


 プレイヤーが上下左右に動くプログラムはさっきやったので、取り除きやすい。プレイヤーとの壁判定のところも時間はかかったが、取り除けた。アイテム関係も消すのは惜しいけど、自分の思った最小プログラムが欲しいので、取り除いた。


 これで敵の動きのプログラムが出来た。壁に当たると上下左右どれかにランダムに決定して移動することもわかった。


 よく考えたら、こっちのプログラムだけで良かったんじゃ……とも思った。これを二つ、つまりプレイヤーの上下左右のところと、敵のアルゴリズムを分ける。しかし、それは結果論だろう。


 そして、この手の作業を繰り返し、いくつかのサンプルプログラムが出来た。今後はこれを参考にすれば、簡単なゲームなら作ることができるかもしれない。



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