#12-3 Magical Dreamer
アルペン山脈の南麓に広がる古びた街ラコナ。その近くに聖なる山として教団が立ち入りを禁じられている山がある。その山腹にひっそりと隠れるように佇むという古代遺跡を目指し、あたしたちは歩を進めていた。苔むした石畳、崩れかけた階段、朽ち果てた塔の影が薄霧に溶け込んでいる。古びた鐘楼がわずかに揺れ、カランカランと音を立てるたびに、どこかから小鳥が舞い上がった。
参道の先には観光名所の古代遺跡がある。でも、あたしたちの目的地はそこではない。地図にしたがって参道から外れて、お父様がかつて訪れたという隠された古代遺跡を目指す。十年以上も経っていて、木々が多い茂ってしまっているのかもしれない。お父様が来た痕跡はなかなか見つけられなかった。
「ここだと思うんだけど……」
「私たち……ひょっとして遭難してるなんてこと無いよね」
「それはないし、最悪魔法で焼き払うから大丈夫」
「じょ、冗談だよね?」
「ふふん。冗談だと思う?」
ニヤリと笑うシラだが、目は本気っぽい。
そんなシラが手にした地図を広げ、もはやどこが道かわからないような森の中で、隠された古代遺跡の入口を探していたが――。
「あった! 間違いない。ここだよ!」
シラは目を輝かせて森の木々に守られるようにひっそりと佇んでいる苔むした門を指さした。それは山肌に半ば飲み込まれるように埋まっており、長い年月の風雨に耐えてきた証を示している。
「魔王カーネルの残したメモに従えばここで間違いないよ!」
「なあ、ちょっと待て。ここでいいのか?」
「それをこれから確認するんでしょう?」
「それはそうだけど……開くのか?」
マティアが眉をひそめる。シラはふんっと鼻を鳴らし、手を合わせた。
「簡単には開くわけないじゃん。でも……そこはこのメモにはそこもちゃあんと書いてある……」
シラは研究小屋から持ってきたメモを元に、門の横にある穴に手を突っ込む。
「ほら、あった。ここに仕掛けがある。いけるって! よーし。いくよー。錆びてないといいんだけど……」
シラがレバーを引くとそれはスムースに動いた。
――ゴゴゴゴゴ。
地響きとともに、長らく閉ざされていた石扉が軋みながら動き出した。苔と砂埃が舞い、冷たい空気が漏れ出してくる。
「お、おお……開いた……」
マティアが感嘆の声を漏らす。あたしは少し警戒しながらも、剣に手を添えた。ここにお父様が知ったことの秘密がある。と思ったその時――。
バサバサバサ――。
長年閉じていた扉が開いたことに驚いたのだろう。何匹かのコウモリが飛び出してきた。
「きゃあ! こ、こうもり! 私、こうもりダメなの!」
ユニはそういうと持っていたクロスボウで、飛び去るコウモリに打ちまくった。
動揺してるのか、鏑矢やら発煙する矢やらお構いなしだ。
「大丈夫、大丈夫だよ! コウモリはもういないよ」
あたしはそう言ってユニを抱き寄せて落ち着かせる。
「ごめん。もう大丈夫」
落ち着いたユニはそう言ってくれた。
「じゃ、行こっか。何があるかはわからないけど……ここまで来たんだもの」
ユニも小さく頷き、石段を一歩ずつ踏みしめて、闇の中へと進んでいく。
こうして、長き時を経て閉ざされていたラコナ遺跡の探索が幕を開けた。
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