第13話 生きる意味
人間が「生」の極限状態におかれたとき、人間を支えるものはなんだろうか。
人間が生きる意味は何か、と言い換えてもいい。
例えば、1人の軍人たる軍人が敵国に捕虜として囚われてしまったとしよう。
彼はそのときに自分の人生そのものと対面しなくてはならなくなる。
もし生きる目的が「生物としての生命活動」にあるならば、きっと簡単に拷問に陥落し、情報をたれ流しにして、生き長らえることを優先するだろう。
しかし、「軍人」として、祖国に対する忠誠心を優先するならばどんな拷問にも耐えて自分の生をまっとうするに違いない。
人間の生きる意味は、まさに自分の生き様に対する自尊心に由来するのではないだろうか。
それは誇り、と言いかえることもできる。
もちろんその誇りの程度、自尊心の深さは人それぞれであるが、やはり自分の生き方に誇りをもって生きている人は孤高の気高さと何事にも動じない堅い信念をもっているものだ。
そしてその誇りの高さと、いかにその誇りを守って生きているかがその人の人生の価値を決めるのではないだろうか。
僕は、自分の生き様に誇りと自尊心を持って生きていきたい。
*****
ある晴れた春の日。
桜が満開の植物園に僕と彼女はピクニックに来ていた。
彼女は当時、いわゆる女子高生だった。
桜がきれいだ。
時折強く吹く春風が桜の花びらを散らし、僕と彼女の肩には何枚かのそれが存在をアピールしている。
こういうほのぼのとした時間はずっと続けばいいのに。
僕の作ったお弁当が気に入ったらしく、彼女はきれいに食べてくれた。
今はおなかいっぱいで少し眠いらしい。
近くの桜の木の下に、家族連れの姿があった。
小学生くらいの姉妹が小さな犬と遊んでいた。
僕: 「いつか結婚したら犬飼おうね」
彼女: 「イラナイ~」
僕: 「なんで?かわいいやん」
彼女: 「ペットは1人で充分やわ」
それ、誰?
僕: 「まさかおれがペットだって言うんじゃないよね・・・」
僕は一応、何の偶然かそこそこの偏差値のある大学に通っていた。
親戚のおばちゃんは何を勘違いしたのか、将来の日本を背負って立つ人間になると誤解しているくらいだ。
17歳のコムスメにペット呼ばわりされるのは、当然間違ったことだと言えよう。
彼女は意味ありげな表情をしたあと、
彼女: 「おすわり!!!」
僕: 「ワン!」
返事をしていた。
今度「もしもし子供相談室」に自分の行動の理由を聞いてみたいと思う。
彼女: 「お手!!」
僕: 「ワン!」
彼女: 「ねえ、チュウしてほしい?」
僕: 「ワン、ワン!!ハウッハウッハウッ!」
彼女は冷静な顔をして、
彼女: 「お、あ、ず、け♪」
僕: 「クゥ~~~~ン、クゥ~~~~ン」
彼女: 「じゃあ、あそこの売店でアイス買ってきて♪ ダッシュで」
僕: 「ワン!」
・・・・・。
家まで送ったとき、彼女はクルマの中で僕の頭をなでて、
彼女: 「よしよし、今日はよくできました。お礼のチュウあげるね」
そう言って、僕のおでこにキスをした。
ほんとに楽しいピクニックだった。
彼女も楽しかったと思う。
マンションに戻った僕は、その晩、電気の消えた暗い部屋で、
膝を抱えて、泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。