番長、貞操観念逆転世界へ行く!

コロッケサンド

番長、逆転世界に飛ぶ

第1話 番長、世界を駆ける

俺は獅子王 たけし

身長185cm。体重100kg。

上裸に腹にサラシを巻き、その上から一張羅の学ランを羽織っている黒髪のリーゼント。

とある高校の番長をやらしてもらっている。

今日は隣の県の蜂須賀高校、別名パチンカス高校の番長とタイマンを張る予定があり、舎弟たちを引き連れ、バイクで移動をしていた。


運転は舎弟の1人である出っ歯のヤスにやらせ、俺は後ろに跨り、学ランをたなびかせている。バイクの免許は取っているが、運転すれば俺自慢のリーゼントが崩れてしまう。タイマン前にそれは困る。

これは俺のトレードマークにして、魂だ。


「兄貴、なんだか雲行きが怪しいでやんす!」


運転していたヤスが空を見ながらそう伝えてきたので、上を見る。

先ほどまで晴れていたのに、黒い雲が空を覆い始めた。ゴロゴロと雷の音まで聞こえている。


雨が本降りする前に、パチンカス高校に行かねば。


「お前ぇら、少し急ぐぞ!」

「「「ウースッ!!」」」

「ヤス、無理のない範囲で飛ばせ」

「分かったでやんす、アニ─────」


獅子王の体が、閃光で包まれた。

予告や予兆は無かった。

優れた肉体を持つ獅子王であったが、光速を超越することは叶わず、


───ドゴオォォォオオオオオオン!


雷が、バイクごと獅子王を貫いた。





「───キ、───アニ───」


獅子王は意識が覚醒し始め、誰かに体を揺さぶられていることに気がついた。

目を開けると、見慣れた2本の出っ歯が目に入った。


「無事でやんすかアニキ!」

「……おう、ヤスか。他の奴らは?」

「あっし達以外、誰も見当たらないでやんす………アニキ、多分あっしら雷に打たれたと思うでやんすよ」

「あの光か。クソっ、雷如きで気絶するなんて情けねぇ」

「いや、アニキ。落雷喰らって無事だったら人類やめてます」


獅子王は「不覚!」と本気で悔しがっており、その反応に思わず語尾やんすをやめて突っ込むヤス。


クラクラするが、獅子王は立ち上がり余りを見回す。倒れたバイクを見つけ、確認するが目立った傷はない。

バイクを起こして鍵を回せば、問題なくエンジンがかかる。


「ヤス。とりあえずパチンカス高校に行くぞ。もしかすると、他の奴らは先に行っているかもしんねえ」

「そ、そうでやんすね!」


タイマンの時間まで30分を切っている。

今はもうリーゼントに気をつけている余裕はない。獅子王はヤスを後ろに乗せ、バイクを走らせた。





「どうなってんだ?」


予定していたパチンカス高校な時間ギリギリに着き、校門の前で跨いだままバイクを止める。


蜂須賀高校の校門や高校を囲う壁には、スプレーで汚く落書きされ、偏差値最低の不良高校特有の荒れた空気が流れている。高校内にいる学生も、見るからに不良で、目がギラついている。


しかし、


「パチンカス高校はいつからになりやがった……!」


中にいる不良学生は女生徒のみ。

皆、ピアスやら、ウルフカットなど刈り上げて、長いスカートを纏ってスケバンのような格好。

そして、何より身体たっぱがデカい。

150cmといった低身長の女性はおらず、平均して165〜175cmあたり。


スケバン女生徒達は、バイクに跨がる獅子王達を見てヒソヒソと話し出した。


『何だアイツら?』『女みたいな格好してっけど、コスプレか』『ワタシ、グレちゃいましたってか?ヒャハハ、カッワイイ〜』『おい見ろよ。アイツ、男の割にガタイがスゲェぞ』『可愛げあったら襲ってたのに、オスゴリラじゃねえか』


どうしようもない違和感を覚え、獅子王はバイクを走らせて、その場を離れる。


「何がどうなってやがる?!」


バイクが街中を走る。

間違いなく現代の日本の風景。


だが、明らかに違う。


例えば、広告。

『ゆるふわ男子が教える春のデートコーデ』と可愛らしい格好した男性の笑顔が、飾っている。


例えば、キャバクラの客引き。

スーツ姿の中年女性が、歩く女性に「今日は良い男の子居ますよ!」と声をかけている。


例えば、工事現場。

作業服や鳶服を身につけたガタイの良い女性が、黙々と働いている。


そして。

例えば、日本総理大臣。

中継先を映したテレビの中で、知らないが国会議事堂の真ん中で言い訳をしていた。

総理大臣の名前こそうろ覚えだが、ただ間違いなくは覚えている。


行き交う人々の格好もそうだ。

男性ともすれ違うが、皆なぜか小柄が多い。

そして、日傘をさしていたり、ひらひらふわふわした可愛らしい格好をしたり。

───総体的に女のような格好や立ち振る舞い。


「……何なんだコイツは」

「アニキ。もしかすると、コレは」

「知ってるのかヤス!」


ヤスは「おそらく」と前置きをして、


「───男女逆転世界ってやつでやんすよ!」

「…………なんだそれ?」

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