番長、貞操観念逆転世界へ行く!
コロッケサンド
番長、逆転世界に飛ぶ
第1話 番長、世界を駆ける
俺は獅子王
身長185cm。体重100kg。
上裸に腹にサラシを巻き、その上から一張羅の学ランを羽織っている黒髪のリーゼント。
とある高校の番長をやらしてもらっている。
今日は隣の県の蜂須賀高校、別名パチンカス高校の番長とタイマンを張る予定があり、舎弟たちを引き連れ、バイクで移動をしていた。
運転は舎弟の1人である出っ歯のヤスにやらせ、俺は後ろに跨り、学ランをたなびかせている。バイクの免許は取っているが、運転すれば俺自慢のリーゼントが崩れてしまう。タイマン前にそれは困る。
これは俺のトレードマークにして、魂だ。
「兄貴、なんだか雲行きが怪しいでやんす!」
運転していたヤスが空を見ながらそう伝えてきたので、上を見る。
先ほどまで晴れていたのに、黒い雲が空を覆い始めた。ゴロゴロと雷の音まで聞こえている。
雨が本降りする前に、パチンカス高校に行かねば。
「お前ぇら、少し急ぐぞ!」
「「「ウースッ!!」」」
「ヤス、無理のない範囲で飛ばせ」
「分かったでやんす、アニ─────」
獅子王の体が、閃光で包まれた。
予告や予兆は無かった。
優れた肉体を持つ獅子王であったが、光速を超越することは叶わず、
───ドゴオォォォオオオオオオン!
雷が、バイクごと獅子王を貫いた。
◆
「───キ、───アニ───」
獅子王は意識が覚醒し始め、誰かに体を揺さぶられていることに気がついた。
目を開けると、見慣れた2本の出っ歯が目に入った。
「無事でやんすかアニキ!」
「……おう、ヤスか。他の奴らは?」
「あっし達以外、誰も見当たらないでやんす………アニキ、多分あっしら雷に打たれたと思うでやんすよ」
「あの光か。クソっ、雷如きで気絶するなんて情けねぇ」
「いや、アニキ。落雷喰らって無事だったら人類やめてます」
獅子王は「不覚!」と本気で悔しがっており、その反応に思わず
クラクラするが、獅子王は立ち上がり余りを見回す。倒れたバイクを見つけ、確認するが目立った傷はない。
バイクを起こして鍵を回せば、問題なくエンジンがかかる。
「ヤス。とりあえずパチンカス高校に行くぞ。もしかすると、他の奴らは先に行っているかもしんねえ」
「そ、そうでやんすね!」
タイマンの時間まで30分を切っている。
今はもうリーゼントに気をつけている余裕はない。獅子王はヤスを後ろに乗せ、バイクを走らせた。
◆
「どうなってんだ?」
予定していたパチンカス高校な時間ギリギリに着き、校門の前で跨いだままバイクを止める。
蜂須賀高校の校門や高校を囲う壁には、スプレーで汚く落書きされ、偏差値最低の不良高校特有の荒れた空気が流れている。高校内にいる学生も、見るからに不良で、目がギラついている。
しかし、
「パチンカス高校はいつから女子校になりやがった……!」
中にいる不良学生は女生徒のみ。
皆、ピアスやら、ウルフカットなど刈り上げて、長いスカートを纏ってスケバンのような格好。
そして、何より
150cmといった低身長の女性はおらず、平均して165〜175cmあたり。
スケバン女生徒達は、バイクに跨がる獅子王達を見てヒソヒソと話し出した。
『何だアイツら?』『女みたいな格好してっけど、コスプレか』『ワタシ、グレちゃいましたってか?ヒャハハ、カッワイイ〜』『おい見ろよ。アイツ、男の割にガタイがスゲェぞ』『可愛げあったら襲ってたのに、オスゴリラじゃねえか』
どうしようもない違和感を覚え、獅子王はバイクを走らせて、その場を離れる。
「何がどうなってやがる?!」
バイクが街中を走る。
間違いなく現代の日本の風景。
だが、明らかに違う。
例えば、広告。
『ゆるふわ男子が教える春のデートコーデ』と可愛らしい格好した男性の笑顔が、飾っている。
例えば、キャバクラの客引き。
スーツ姿の中年女性が、歩く女性に「今日は良い男の子居ますよ!」と声をかけている。
例えば、工事現場。
作業服や鳶服を身につけたガタイの良い女性が、黙々と働いている。
そして。
例えば、日本総理大臣。
中継先を映したテレビの中で、知らない老婆が国会議事堂の真ん中で言い訳をしていた。
総理大臣の名前こそうろ覚えだが、ただ間違いなく性別は覚えている。
行き交う人々の格好もそうだ。
男性ともすれ違うが、皆なぜか小柄が多い。
そして、日傘をさしていたり、ひらひらふわふわした可愛らしい格好をしたり。
───総体的に女のような格好や立ち振る舞い。
「……何なんだコイツは」
「アニキ。もしかすると、コレは」
「知ってるのかヤス!」
ヤスは「おそらく」と前置きをして、
「───男女逆転世界ってやつでやんすよ!」
「…………なんだそれ?」
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