第14話
『………………げ、とはなんだ?結衣。』
深い色をした紺色のシャツに黒のネクタイを身に着け、黒のズボンを履いている人物は若干睨むように私を見ている。
ジャケットも綺麗に着こなす、その姿に胸の高鳴りが鳴る。
その違和感を知ってはいたがあえて蓋をする。
「………………すみません。おはようございます、安藤先生。」
深々頭を下げて再び頭を上げる。
「おはようございます、神無月さん。ぼんやりとしていたら遅刻をしますよ。」
私の姿を見て、にっこりと綺麗な笑みで微笑んでいる。
ただし、唇は歪めてはいたけれどね。
通りすがりの女性達が、隣にいる人を見ては頬を赤く染めて溜息をついている。
艶めかしい溜息をつかれているにも関わらず、当の本人は慣れているようで。
「正体を知ったら大変なのに。」
と溜息をつきながら小さく呟いた。
「何か言いましたか、神無月さん?」
これまた爽やかな笑顔でにっこりと笑んでくる。
この人物を見る通りゆく女性達は、顔を真っ赤にさせながら歩いていた。
朝だから余裕が無いから、連絡先とか声をかけたいんだろうと意味深な視線を送ってくる人もいる。
反対に、側にいるだけで私を睨む女性もいたけどね。
きっと、あれよ。
マンガとかで見る。
《キーーー!何、あのおとなしい子。邪魔よ。》
みたいな事を思っているんだろうな。
いえ、私はあなた達の思っているような関係ではないのでご安心ください。
「さっきから、何をぶつぶつ言っているんだ?」
「独り言なので気にしないでください。」
胡散臭そうに見る男に向けてにっこりと微笑む。
「相変わらずだな。」
そんな私を見て面白そうに笑みを浮かべた。
「遅刻するぞ。」
身体の向きを変えて歩きだす男の呼び掛けに、慌てて足を動かした。
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