第3話

無機質な声がする方へ歩いていくと、既に先客がいる。



無駄に長い足を組み、真剣な表情でテレビの画面を見ている。



他人から見れば溜息をつくような風貌だ。



容姿端麗と言う言葉が似合う人物は、私に気がついたのか声を掛ける。



「おはよう。」


外見だけじゃなく、なんて良い音のする声なんだろう。



心地よい澄みきるような低い声。



これで笑顔を見せれば、世の中の女性は虜になるだろう。



あいにく、表情は見えない。



身体の向きは声のするテレビに向けられていたからだ。



相変わらずな人。



心の中で溜息をついた。




「……………………挨拶無しか。まあ、いいけどな。」


急に身体の向きを変えて私を見る。



顔が良すぎるせいか、真剣な眼差しで見られるのはいまいち慣れない。



…………ただし、性格はなんとも言えないけどね。



瞳の色は闇よりも深い黒。


見つめられると何もかも囚われそうだ。



「顔を見ないで挨拶されるよりは良い方かと思います。」


負けずにまっすぐ見つめて答える。




「相変わらずだな。他の奴らが聞いたら驚くような答えだ。まあ、いい。」


私の答えを聞いた人物はふっと笑う。



「また被害者が出たみたいだな。昨日は何をしていた、結衣。」


「お言葉を返すようですが、私は仮にも学生です。早めに眠っていました。」


「早めに、ね。自覚が無いみたいだな。君はタダの学生じゃない。呑気に寝れる立場ではないはずだ。わからないなら教えてあげようか?」


まっすぐ見る私を見ては、ニヒルな笑みを浮かべた。

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