第9話『あいつ割烹着の話題になると早口になる』



 "勘違いしないで欲しいのは"

「おう」

 "私は決して、肌を人に晒すのが趣味なわけではないし、自分の体型に自信があるから見られても平気ということでもない"

「ふむ」

 "倫理観や羞恥心を失ったわけでも……いや、多少はズレていると自覚しているが、ともかく、裸はマズイということはしっかりわかっているのだ"

「そうか」

 "ただこう、最初は突然の事故で驚いていたというか。さっきのはアルトが危ないとエリザが呼ぶから慌てていたというか……つまり、何か別の事に気を取られると優先度が下がるわけだ。自分の格好は"

「わかった」

 "だから決して恥ずかしくないわけじゃないというか、後から冷静になるとなんて私はなんというはしたないことをしたのかとか、後悔が湧き出るからその……"


「わかったから」


 俺はテーブルの向かい側に座って言い訳を続けるセンセイを、手で制する仕草をした。

 

 "み、見たことは……忘れて貰いたいのだが……"

「わかったから! 顔赤くしてもじもじしながら言わないでくれ! なんかこっちも恥ずかしいだろ!」


 乙女か!


 

 巨大ザリガニを退治してセンセイに服を着るように頼んで、気まずい雰囲気のままザリガニをマテリアル化した後でのことである。

 現在風呂場はエリザが使っていて、思いつめたかのようにセンセイは、自分は痴女じゃないということを俺に伝えてきた。

 よかった! 感情を失くしたり裸を見せて興奮してるセンセイなんて居なかったんだ! 地球は平和になってローゼンなんとかとギルデンなんとかは死んでハッピーエンド! 

 そんな風に喜べればよかったんだが、恥ずかしがってるセンセイのギャップがなんとも困るのであった。


「大体、そのセンセイの普段着? みたいなピッチリ服もなんだそれ。あのジャケット操作するのに必要なのか?」

 

 俺がそう指摘する。

 彼女は紺色の布で出来た、腰から太腿、脹ら脛に隙間なく張り付いたパンツ(下着じゃない方)と、サイズの小さいTシャツのようなやたら身体のラインが出る服を着ている。

 似合っているか似合っていないかは個人の感想に依ると思うが、町中で見かけたら二度見するぐらいには変だ。

 彼女は服を見下ろしながら、


 "む? 変か? いや、そもそも私は常に探索技工外装を着ているのだからあまりその中の服には拘らなくてな。これは昔からの部屋着というかインナーウェアというか……"

  

 少し考えて、またセンセイは顔に赤みを指して口をもごもごと動かし始める。


 "た、確かに外装を着ていなかった頃は、外出するときはこの上に別の服を着ていた気がする……とするとこれは下着に分類されるのか……?"

「落ち着けって。確かにインナーはインナーだけど、完全に下着ってわけじゃないだろ。セーフセーフ」

 "そうだろうか……"

「俺なんか酒場からステテコ一枚で宿まで堂々と帰ったこともあるけどセーフだったし」

 "酔っぱらいの行動ではないか"


 色々と複雑そうな表情をしたセンセイだが、やがて落ち着いたように紅茶(植物素材+水)を飲んて大きく息を吐いた。


 "まあ、この格好もアルトとエリザぐらいにしか見せるつもりは無いからいいとしよう"

「それがいい」


 伝説の探検技工士がちょっとエロい格好してるやや無防備な美女だってことは、絶対に世間に広めちゃならねえな。隠れた金鉱脈を吹聴するような馬鹿な真似は決して俺はしないが。

 しかし、と俺は彼女に尋ねる。


「センセイのクラフトだと服は簡単に作れるのか?」

 "ああ。基本的に布素材があれば。ゴム素材を混ぜれば裾やウエストの収縮性をよくしたり、鉄素材を混ぜれば破れやすいところを補強して頑丈になる。動物性の素材でも作れるぞ。何か必要なものがあるか?"

「いや、そうじゃなくて。ほら、折角自分の格好を気にし始めたわけじゃん? 別にインナーでもいいとして、センセイの別の服とか試しに作ってみたらどうよって思って。ほら、試しに。あくまで試しに」

 "別の服……"


 センセイはやや思案して、リュック(外装からの着脱式。ただしマジックハンドは装備時しか使えない)からマテリアルを取り出してクラフトしてみせた。

 意思を持って歩き出した丸太のようないつもの姿でクラフトしているのはよく見るが、こうして人間のときに行うそれはより神秘性が高く見える。

 手タレになれそうな白くて筋張っても無い滑らかな手指で、マテリアルを包むように持ち──融合させる。


 "……できた。スペランクラフターTシャツ"

「Tシャツかよ!?」


 そのややダボっとしたTシャツにはセンセイの外装をデフォルメした模様と、『スペランクラフターとして生きていく』という意気込みめいた文字が書かれていた。

 なおTというのはこの世界では割りとメジャーな表意文字的なアレで、トンファーを意味する形を表す。見れば誰しもおわかりだろう。

 ともあれセンセイはそれを被って袖を通すと、立って俺に見せるように着こなした。


 "中々いいじゃないか、どうだ"


 自慢気に言うが、俺はなんとも言えない表情をしているだろう。

 想像してみて欲しい。ピッチリしたインナーを上下着ている女性が、やや大きめサイズのTシャツをその上から着ているだけ。

 ダンスレッスンのトレーナーか。

 そしてTシャツの裾が妙にひらひらとしていて着てないのより目に悪い。

 いや。

 いやいや。

 この感想は決して俺が厭らしい目線でセンセイを見ているとか、着衣フェチの一種だとかそういうことじゃなくて、そういう風に見る男も世間的には居るんじゃないかなーって感想を浮かべただけだ。

 実際のところ、センセイが満足なら格好はどうでもいい。

 少しばかりー? ファッションの話題だったから提案してみただけでー?

 大事なのは見た目じゃなくて中身、そして能力だろう。

 

 "……? どうしたのだ、アルト。考えこんで"

「いいや、なんでもない」

 "恥ずかしながら私はファッションに疎くてな。まあ、年がら探検をしているし、探検技工外装が一番おしゃれだと思っているからいいのだが"

「おしゃれか……?」

 "種類は一応知っているから、一般的な物は作れるが独創的な物は無理だな……作業着などは幾つか作ったことはある"

「割烹着だ」

 

 俺は自然と口に出していた。


「割烹着とはエプロンの一種で広めの袖が手首まで保護している。全体的にゆったりと作られていて生地は白。模様は無いがポケットは付いている。裾は膝下まで伸びていて、スカートのように広がっておらずストンとまっすぐになっている。レースなどの飾りが付いている物もあるが俺は認めていない。背中に首と腰あたりに結び目がある」

 "いや……知ってるけどなんで早口なの"

「割烹着をクラフトしてみようかセンセイ。いや俺は別に何か特別なこだわりがあるってわけじゃないんだけど折角話題に登場したんだから今やらないといつやるのかってアレだろ。それに割烹着なら上から羽織るだけだから着替えるのもすぐでいいじゃないか」

 "……"

「ハハッ。なにセンセイそのちょっと引いたような目はもしかして俺が異常に割烹着にこだわる男だと思ってるもしかしてオイオイもしそうだとしたら超ウケルんですけどマジ」

 

 この自然な話の持って行き方は芸術的だ……俺は俺自身に花丸を付けてやろうと決めた。

 センセイは少しばかり躊躇ったが、布素材をクラフトして目の前に出した割烹着を広げてみせた。

 着ればいいじゃない。

 居酒屋開けばいいじゃない。

 大丈夫両立できるよ探検技工居酒屋。

 

 "やっぱりこういう、女らしい服は似合わない気が……"

「なんでそんなに自己評価が低いんだ。自分に自信が無ければ俺を頼れよ!」

 "どうしてそんなに勇ましく勧めてくる……あ"


 センセイが視線をやると、風呂場の扉が開いて湯上がりに貫頭衣を被ったエリザが湯気を出しながら出てきた。

 

「はふー……やっとお脳が落ち着いたです……あれ? 二人共どうしたんですか」

 "エリザ"

「あっ、先生! 素敵なシャツですね! 作ったんですか?」

 "ああ。ところでこっちの割烹着はアルトお勧めらしいのだが、エリザのほうが似合うと思ってな。付けてみなさい"

「わあいわかりました!」


 ああっ! くそっ! 割烹着がエリザの手に渡った!

 ファッキンアクシデントだ。

 不慣れな仕草で割烹着に袖を通して、センセイに首元の紐を結んでもらっていやがる。

 そうして──割烹着を着たエリザがくるりとその場で回ってポーズをした……もうどうでもいい。


「アルトくん! 先生! 可愛いですか!?」

「学生の給食当番みてぇ……」

 "ああ、可愛いよ。なあアルト"

「ねえねえアルトくんどうですかー?」

「はいはい可愛い可愛い。酒を注いでくれたらいい子いい子してやるからほら」

「んー」


 満足そうに鼻息を出して、エリザはビールを俺のコップに注ぐのであった。

 もうちょいだったのに……。 





 *******





 センセイの格好がどうだろうが仕事は仕事。酒呑んでさっさと寝て、翌朝は出発の準備だ。

 とりあえず起きたら便所に行って小便を放出することでエレクトダウン(比喩表現)させ、風呂場に設置されている洗面所で顔を洗ってうがいをする。

 初日に採取した銀鉱石で鏡まで設置されている。勿論、毎日小屋を引き払うときに分解して持っていくが。

 洗面所では先にセンセイが顔を洗っていた。 

 つまり、探検技工外装を装着してのっぺりとした厚みのない顔っぽい部分を、手ですくった水でばしゃばしゃと。


「……それって意味あるのか?」

 "この動作をすることで水を吸収し、内部でオート洗顔できるシステムになっている"

「はあ。便利なんだな。飯なんかもそれでいつも食えてるわけか」

 "そうだな。様々な機能がついていて案外快適だ"


 センセイは基本的に、それこそ風呂のとき以外は寝る際もこの外装を着ているのだからそりゃあ不便は無いのだろう。

 聞いたらセンセイに冷たい目線で見られるかもしれないから言わないが、ある程度は中の人は風呂の必要も無いし、排泄関係も清潔に処理できるようになってるんじゃねえかな、多分。最初にセンセイが風呂に入ってるときに数日入りっぱなしだった外装に近づいたが、悪臭はしなかったから。

 そんなことを思っていると、センセイはタオルで顔を拭いて順番で並んでいた俺の顔をじっと見た。


「ん?」

 "はいこれ、アルト"


 そう言って、さっと手品のようにクラフトし取り出したのは──シェービング剤付きカミソリであった。

 受け取ると眠そうな顔をしたエリザが風呂場に入ってきて、それの素材を口にする。


「鉄素材と油素材とアルコール素材ですぅ……。センセイは夜に余ったお酒をマテリアル化してますからその素材で……ふにゃあ」

 "正解。アルトも髭を剃るといい"


 言われて顎を撫でると、人よりは伸びるのが遅い方だがチクチクしていた髭が少し伸びて目立つようになっていた。

 

「おっと。これじゃいい男が台無しだ。なあ?」

「そうですねー……ってなに言わせるんですか!」


 眠かったからか、一旦同意してツッコミを入れてくるエリザである。


 "確かに、アルトは髭が無いほうがいい男だな"


 ……。

 センセイはそういうのだが、外装なので素で言ってるのかおちょくって言ってるのか判断し難い声音だった。

 まあいいか。

 

 不精な髭も剃り終えてすっきりとした後はざっとした片付けだ。

 小屋の内装等はセンセイが分解していくので、主に干していた洗濯物を取り込んでおく。

 釜の近くで熱があって乾きやすいところに俺とエリザの下着が干されている。最初はパンツを干すのに抵抗のあったエリザだが、俺が「女子のパンツなんか興味ねえよ~ダサダサパンツが~」と散々からかってやったら開き直って同じ場所で干すようになった。エリザに絡むときはIQを下げ気味で行くとコミュ成功すると思う。

 

「アルトくん持ち上げてくださーい」

「面倒くせえなあ俺が取るっつーのに」

「男の人に下着触られたくないですよ! 妊娠しますよ!」

「どこの淫魔だ俺は」


 と、高いところに干してあるものだから、エリザの両脇に手をやって持ち上げてやり、自分のパンツとブラジャーを回収させる。こいつも案外胸はデカイ。生意気なことに。生意気バストめ。

 ちなみにセンセイ(中身)の衣類関係は、着ていたものを即マテリアルに分解して新品をクラフトするそうなので洗濯すらしないという。

 俺らはそれぐらいだが、小屋からセンセイが回収するのは以下のものだ。


 釜と風呂場の焚き木の残りと灰(炭素材・灰素材)

 鏡(銀素材)

 ランタン(油素材・硝子素材・鉄素材)

 ベッド(木材・布素材)

 置き時計(木材・瓶に入った水素材)

 机・椅子・扉(木材)

 

 風呂の水は全部流しておき、便所には蓋を閉める。

 朝食を終えてそれらの作業を順番に行い、俺達は出発するのである。

 ちなみに今日の朝飯は[エビとアボカドのタルタルソースサンドイッチ(ザリガニ素材+植物素材+油素材+卵素材+穀物素材)]と[ブイヨンスープ(ザリガニ素材+コウモリ素材+蛇素材+植物素材+薬草素材)]とまあ材料の多い二品目だった。

 この豪華に使ってるメニューもエリザの勉強のためらしい。特にブイヨンどうなってるんだ。なんでそれでブイヨンできるんだ。異様に臭い魔女のごった煮になりそうだが、薬草の消臭が効いているのかすっきりとした朝にありがたい味だった。そして卵素材の出処は気にしたら負けな気がする。

 

 ともあれ、俺達は小屋を出発した。

 

「エリザ。昨日見たザリガニみたいなやつが出てくるかもしれないから、見つけたらやかましくない声で教えろよ」

「はい! 頑張ります!」


 昨晩見かけたということは生息域に既に入っているということだ。警戒しておいて損はない。

 しかし倒したのは二匹とも白いザリガニだったのでそういう固体色なのかもしれないが、だとすれば明かりに反射して見つけやすいはずだ。

 

「なんで白なんて目立つ色なんでしょうね」

「目立たねえよ。ここは普段明かり一つ無い真っ暗闇なんだから、白だろうが金色だろうが同じだ。ここらが住み家な生き物の殆ども視力は退化してるんじゃねえかな」

「ははあ……隠れおしゃれってやつですか」

「違う。多分餌の問題だ。日光が差さないから普通ザリガニが食う藻類が繁殖しないだろ。すると藻類に含まれる光合成色素を摂取できないから殻に色が付かないってわけだ」

 "アルトは無闇矢鱈に詳しいなあ"

「これぐらいはガキの頃ザリガニ育ててりゃ気づくし、気になったら調べる程度の知識だろ」


 ちなみに魚ばっかり与えてたら赤色から青色、そして白色に変化する。

 それでここのザリガニについても見当がついたのだが。


「ザリガニ博士ですね!」

「俺が十歳までだったら素直に喜べただろうよその称号」


 言い合いながら暫く進んでいくと、下り道になってきて少し生臭いような空気が流れてきた。

 センセイが立ち止まって手で制し、ヘッドライトの光量を上げる。


 "ザリガニの群れだ"

「どれどれ……うおっと、十体以上居るな」

「光で照らされてもこっちに気づきませんね……」

「視力が無いからな」


 目を凝らして下り道の先を見ると、デカイ水溜まりの近くの陸地に例の白いザリガニがうようよとたむろしていた。

 さすがにあの中を突っ切って行くのは難しい。ただでさえ攻撃性が高い上にハサミで岩を殴り砕くようなやつだ。


「まあこんだけ距離が離れてりゃ十分だろ。投擲機で槍をぶん投げて仕留める。センセイ、準備してくれ」

 "頼りにしている"

 

 するとセンセイはまずちょっとした高台を石素材で作った。丁度高い位置から一直線に狙えるようないい感じの狙撃ポイントである。

 そして石素材で[石の槍]をクラフトする。強度にはやや不安があるが重さは十分であり使い捨てるには便利な、そこらに素材のある武器だ。

 クラフト。クラフト。クラフト。

 ……多すぎねえ?

 石の槍がジャラジャラと三十本ばかり大量生産された。

 訝しげにその制作風景をエリザと並んで見ていたのだが、センセイは作り出した大量の石槍を材料にして、再びクラフトする。

 出来上がったのは──たった一本の、ドラゴンの尻尾みたいに棘の生えた石槍であった。


 "[石のガイボルガ]という使い捨ての武器だ。投げつけると材料にした三十本の槍に分離して降り注ぐ"

「マジかよすげえ。あっ、ひょっとして昨日やってたフラクタル理論の説明ってこれの作り方に関係してたのか?」

「なんですかーフラクタルってー」

 "……エリザのおやつアルトに半分渡す"

「覚えてます! 覚えてますよ! あの異様に眠くなるやつですよね! 面白かったなあフラクタル! 監督誰でしたっけ!?」


 適当ヒャクパーで応えてる感丸出しのエリザである。なんだよ監督って。

 ともあれ、ずしりと重たいがしっかりと規格は投擲機に合う。ある程度は投擲機の方で調整してぶん投げられる槍の長さを変えられるけれども。

 上手くいきゃあ一発で終わるかも、という期待に僅かに顔がにやける。

 なんというかアレだ。手に花火を持ってて蟻の巣を見つけた子供のような嗜虐感。誰だってそれぐらいあるだろ? 行き過ぎるとサイコだがな。

 松明をエリザに持たせて俺は投擲体勢に入る。


 数歩の助走を踏んで、投擲機に組み込んだ石のガイボルガを思いっきり振り下ろし──百メートル先ぐらいに居るザリガニの集団にぶん投げた!


「ッラアア!」


 ぎゅん、と一直線に斜め上から重力加速を加えて飛来する槍は、その半分の距離で一瞬光ったかと思うと同じ速度で目標周辺に散弾のように三十の槍が出現。広範囲にザリガニの群れに降り注ぐ。

 センセイのヘッドライトを全開にしてその光景を俺らは確認していた。

 

 ば、と地面を叩く音と甲殻を砕く音は殆ど同時に鳴った。

 三十に別れたとはいえ狙いはほぼ適当。だが八、九匹のザリガニが上方向から振ってきた槍に身を貫かれ、地面に縫い止められた。既に神経をやられたのか動かなくなった個体も居る。

 外れたか、手脚のいずれかを砕かれた程度の被害のザリガニ数匹はどこから攻撃されたかもわからずに、後ろに飛んで逃げてデカイ水溜まりの中へ消えていった。

 残されたのは、虫の息のザリガニのみだ。

 上々の結果。俺は軽く歌でも歌いたい気分だったので、機嫌よく口ずさんだ。


「蹂躙、蹂躙、蹂躙、じゅうりっひいぃぃぃん♪」

「なんですかその歌」

「パリー・ドートンの[蹂躙Julene]。ヒットナンバーなんだが知らないか?」

「知りませんよーそんな物騒なの」

「ま、ともかくどんなもんよセンセイ」


 俺が二の腕を軽く叩きながらセンセイに告げる。


 "さすがアルト。正直、君と組めて良かったと思ってるよ"

「なあに、センセイが武器を用意してくれるからさ」

 "安全な距離から敵を倒す……余計な怪我や損耗のリスクを避けるというのは探検での戦闘で重要なことだ"


 センセイは──まあ、喜ばしい感情が声に篭っているのがわかった。


 "私と君は相性がいいようだ"

「そりゃ嬉しい。なんだったら今度親睦を深めるため一緒に食事でも?」

 "ふふっ今晩も手料理を振る舞ってあげるさ"

「ならちょっと作るとき割烹g」

「アルトくん!」


 俺の純真な要求はエリザが腕を掴んで揺らすことで遮られた。


「あんだよ」

「あたしも技工士の勉強頑張って、アルトくんの役に立ちますからね!」

「わかったわかった。上手いことできるようになったら褒めてやるよ」

「絶対ですからね!」


 センセイの作ったドすげえ槍の効果に熱を上げたのか、とにかく熱心に主張するエリザであった。

 子犬かこいつは。


 ともあれ俺らはほぼ無力化したザリガニ共のところへ行き、センセイのサイコブラスターでトドメを刺してマテリアルにするのであった。





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