第22禍 熱・愛・発・覚

『大人気アイドルK、熱愛報道をA紙が執筆中?』


「あ~…とうとう来るか」

「かなりょん、すまん。どっかで撮られたかもしれん」

「先週の一緒にコンビニとかかなり気を許してガードゆるゆるだったもんな」

「オレもお前ほどの人気アイドルの彼氏としての自覚が足りなかったよ…」

「すまん、ホントに…事務所とか大丈夫かな?」

「CMとか違約金…ダメだ、怖いこと想像しちゃうね」

「でもまだKってかなりょんのことじゃないかもしれないし」

「バレたら開き直ってかえってPRする?」

「今の世相なら彼氏バレくらい…ね?」



「おいかなりょんどういうことだよ?」

「誰だあのバンドマン」

「週刊誌に載ってたお前と一緒に朝帰りしてたあいつだよ!!」

「まさかお前…二股してたのか…」

「おい答えろよ…だんまりかよ」

「どういうことか説明しろよ! なぁ! お前を作るのにいくらかかったと思ってんだよ!」


「…や、やべ~…オレ…彼女を殺っちまった…」

「首が折れ…これ、接着剤でくっつくかな…」

「オーダーメイドした業者に…アクリル…等身大の…」

「ああそうか、もうひとつ発注すりゃいいのか」

「いやいやダメだって!」

「オレのかなりょんはこのかなりょんだろ!! 男として責任とれよオレ!」


「かなりょん痛いか? ゴメンな、こうでもしないと運べないんだ」

「よしここまで切ったらもうあとは手で折れるな」

「だんだん解体するの上手くなってるわ、オレ」



「ち、違うんですお巡りさん! 挙動不審なのはその…荷物が重くてふらついてるだけで…」

「あ! 見ないで! そのバッグを開けないで!」

「…そうです…オレ…恋人を、かなりょんを殺しました…二股していることがわかって…信じたかったけど…カッとなって…」

「え? 帰っていいって…!? なんで? オレ人殺しですよ!?」

「あの超人気アイドルを殺したんですよ!? 死刑でしょ!」

「ひょっとしてあんたら芸能界とグルか! かなりょんが死んでるのがバレると大損だから、隠蔽しようとしてるのか!? クソが! 絶対SNSに書いてやるからな!」



『みなさん、本物のかなりょんはもう死んでいます。なぜなら彼氏の僕が殺したからです。今テレビに出ているかなりょんはニセモノです。芸能界の陰謀です』


「おっ事務所からの注意喚起ポスト? 『悪質なデマには法的措置』? やってみろよ! むしろやってやる! 法廷で全部証明してやるからな!」



「かなりょん…オレは今もこうしてお前の亡骸と暮らしている…献身的な彼氏って誉めてくれよ…しかしすごいなお前…あれから一年経つのに全然腐敗しないで…。けど…どうしよう…敗訴…賠償金100万円だってさ…ハハ…」

「一緒にテレビでも観ようか、かなりょん」


「あの端っこでダンスしている娘、良くない?」

「センスあるわ…なんでバックなんだよあんな娘が」

「え? イソスタ見たんだけど、推せるわあの娘」


「かなりょん、お前もういいわ。別れようぜ」

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