第3話  ~僕と静かな早朝~

(ふああぁぁぁ…ってもう朝か)


 まどろみの中で目が覚めた。周りはみんなまだ寝ていた。重たい体をゆっくり起こし窓をしずかに開けた…。そこは一面、緑の世界。空は青くとても天気が良い。

 さわやかな朝の陽射しは、家の近くにある木の葉や、それにつく水滴を鮮明に映し出していた。


大きく深呼吸をする…。


 都会と田舎では空気の味がぜんっぜん違うということを最近知った。

みんなを起こさないように着替え、なんとなく外へ出た。

庭の木の枝では、小鳥たちがさえずっていた。セミが朝から鳴いている。

外に出てみたものの…特別、やることもない。

でも、たまにしか見ない景色だからか…とてもワクワクする。

何かが起こりそうで…。




ぶらぶら歩いているうちに近所の森のことを思い出した。

そこでは、カブトムシやクワガタがよく獲れる秘密のスポットがあるのだ。

以前はその木に、市販の樹液を塗りたくり、翌朝ここに来て、ノコギリクワガタやカブトムシなどを取って喜んでいた。たまにスズメバチがいて泣きそうになったこともあったけど…。


そんなことをして遊んでいた。あのころの妹はとても可愛かった。

僕の後ろをついてきて、虫を見るたび僕に引っ付いて…それが今ではアレだ。


 久しぶりに訪れた森は昔の雰囲気ではないように感じた。

むかし、お世話になったクヌギの木はまだあったが、樹液を出すポイントは干からびていた。


人間と同様、森も歳を重ねるということをしみじみ感じたのだった。


ブ~ン……ブ~ン……


(……………………)


人が感慨にふけっているというのに…。

空気も読まずにまとわりついてくるヤブ蚊を手で払いながら、僕は森を出た。


 次に用水路を探索した。ザリガニがいることを期待したのだ。浅瀬の水の中に黒いザリガニの背中を発見した。ザリガニはじっとしていて動かない。

スキだらけだ。捕まえるのはとてもたやすい。

…だが、靴が汚れてしまう。実家ではないので、靴の替えがない。

裸足になって泥に足を突っ込むこともできるけど…そこまではしたくない。


(う~ん…むかしはずっと見てても飽きなかったけど…)


あんまり動かないザリガニを見てもつまらなくなり、すぐに飽きてしまった。

別の場所をぶらぶらしていると誘蛾灯の下で、元気に動くカブトムシを見つけた。


「おおっ!ラッキー」


僕はそいつをつまみ上げた。

見事にうねったツノ!高級車を彷彿させる光沢のボディ! 

こんなのはそうそういないハズ! 

…と思ったけど、逃がしてあげよう。

僕のエゴでせまい虫カゴに入れたらかわいそうだ。


「ふふっ、僕も大人になったなぁ…」


(バイバイ、カブトムシ。お互い夏を満喫しよう!)


そろそろ朝ご飯かな。僕は自分の行いに自己陶酔しながら、結局家に帰るのだった。結局、なにか起こりそうな予感というのは気のせいだったようだ。

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