第20話 実は……
「王国の使節団を率いるエルベール・ラーズヴェルト侯爵です。彼は貴族ですが、高潔な方ですので」
「紹介ありがとう、ミューレル殿。コハル殿と言ったね。この度は王国の貴族が大変申し訳なかった。国王陛下に変わって謝罪する。まさか大功ある者を襲撃するバカがいるとは。正直失笑を禁じ得ないが、被害にあったものにとっては恐ろしかったことだろう。このことは必ずや国王陛下に報告の上、グラード伯爵にはきっちりと罪を償わせるのでな」
「はっ……はい……」
ラーズヴェルト侯爵というのは、壮年で迫力と威厳のある貴族だったのでコハルが少し気圧されているな。
「そしてコハル殿。君はあの"暴風の化身"を討伐し、高品質な農作物を神殿に安く売ることで多くの国民を救った。これは表彰に値する……というか、称賛されるべき行為だ。素晴らしいことだ」
「えっ、私? いや、倒したのも売ったのも……」
「ん?」
どうしたコハル。そこはしっかりと栄誉を受ければいいんだぞ?
「どうかしたのか? どちらも君がやったことだろう? なら堂々と受ければよいのだぞ?」
「えぇと……それはどっちも
「農具が? いや、どういうことかわらかぬが、農具がやったことだとして、その農具の持ち主であるコハル殿が称賛されることに異論などないだろう?」
なるほど。
コハルは俺がやったんだから、俺が表彰されるべきとでも考えているのだろうか。
なんて可愛らしい娘なんだ。
でも、それは違うぞ?
俺はお前がいなかったら何もしてないしな。
それに、公爵が言う通り、俺はただの農具だ。
コハルの農具だ。
だから俺に遠慮することはない。
『コハル。俺はお前の農具だから、その貴族様が言うことが正しい。それに、俺はお前を助けたいと思って動いたんだからな。お前が表彰されるならとっても嬉しいぞ? 俺を使って良かっただろ?』
「もっ、もちろんです。
うんうん。本当に良い子だな、コハルは。
俺はやらかしたことに気付いたけどもうどうしようもないから
あとはだんまりで良いかな?
「
「喋った?」
「えっ? ……えぇと……
当然、そんなわけにはいかなかった。
「まさか喋る農具とは。伝説に聞く農神様の農具のようだな」
「本当ですね。しかし、それで納得できました。不思議な声が聞こえるなと思っていましたから」
『普通に会話してたけどな。感情の薄い天使みたいな子なんだろうと思ってたいして気にせず喋っていたが、気付いてなかったのか。なんだ、ただのドジっ子か』
「なんだとはなんですか! 私だって緊張とか、いろいろあるんですよ!」
まぁ、特に訝しがられたりとか、変な風には取られなかったみたいだからまぁいっか。
「あの"暴風の化身"を倒したなどと、今でも信じられない気持ちでいっぱいだが、喋る農具がやったと聞けば納得できる気もしてくるな」
「
「馬車のシール?」
馬車のシールだと???
えっ?
マジで?
もしかして前にシール貼ってあげるねとか言ってたの、馬車のシールなの???
そう言えば黄色いシール貼っておきますとか、馬車のシールとか言ってたっけな?
他のこと考えてた時だったのか、あんまり覚えてないけど。
前にも話したと思うけど、馬車のマークはこのゲームのトレードマークだ。
それが描かれたシールには様々な効果がある。貼るだけで超強力になる。
黄色ということはレア度から考えたらそこまで高くないけど。
白、黄、緑、青、紫、橙、赤、金の順だから下から2番目だけど、それでも効果は強いんだろうか?
ステータスには『[PS]***(参照権限なし)』とか書いてあったけど、もしかしてシールの効果だったのか?
「どこだ? どこにそのシールをどこで手に入れたのだ? どこに貼ったのだ?」
「えっと、ここです。うちの畑を耕していた時に偶然拾ったのですが?」
その場所は俺の視界の中で唯一見れないところ……。
まぁ、そこに貼るって言ってたし、今さらだよな。
「どれどれ。本当ですな。しかしコハル殿。これは黄色ではないな」
「えっ?」
ん? どういうこと?
黄色じゃない?
「これは金です」
「はい?」
金色だと?
あの最高レア度の?
マジで?
「どれどれ。なるほど。凄まじいスキルですね」
「わかるのか?」
「もちろんだ。そもそもスキル名はシールに小さく書いてある。コハル殿は読んでいたようだが、聞いていなかったのか?」
そうだったのかよ、チクショ~~~~!!!!!?
聞いておけばよかった……って、思わず悔しがっちまったけど、特に関係ないよな?
「はい。見ました。だから
「そうだったのか。ありがとなアリア。おかげでお前を守れた」
「えぇ。ありがとうございます♡」
付与されるスキルが変わるわけじゃないしな。
恩恵は受けてたんだから文句はない。むしろ力を貸してくれてたんだろう。
「仲良きことは良いことだ。ふむふむ。"夜の帝王"……」
「はい?」
「いや、失礼。効果が知りたければ、シール自体を鑑定すればよいのだ。見せてやろうか?」
「えっと、ちょっと、そのぅ」
「お願いしたいな」
「えぁ!?」
なんでアリアは戸惑ってるんだろうか?
「では、これじゃ」
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<黄金の馬車のシール>
[種族] シール
[レベル] -
[所有者]
[ステータス] -
[付与スキル]
・[PA]擬人扱い:他者からのスキルに対して、このシールの付与対象は人として扱われ、効果を発揮する。
・[PA]付与スキル拾得:付与できるスキルを自分でも習得できるようになる。ただしそれぞれのスキルの習得は取得条件を満たした場合に限る。
・[PA]攻撃強化:攻撃力を10倍にする。敵の物理無効防御を貫通できるようになる。
・[PA]夜の帝王:楽しいセイ活をおくってください。空も飛べるはずです。
---
なるほど、擬人扱いがあったから、さっきアリアの"農家の癒し"が俺に効いたんだな。
それに、付与スキル拾得のおかげで俺は擬人化を覚えたと。
さらに、攻撃強化によって暴風の化身を倒せたんだろうな。
最後のはよくわからん。わからんって言ったらわからん。
シール様様じゃねーか!?
---
<
[種族] 農業用具・
[レベル] 100(レベルアップによって強く、魅力的になっていく)
[所有者] コハル(親密度5,260、独占モード突入)
[ステータス] 攻撃力+2,980 × 10
[スキル] "身体強化"、"
[付与スキル] "
[耐久性] 882
[特徴] リガイアへの転生者の魂が宿った
<討伐歴> ※名前:レア度:討伐数:備考
・ラグラン・グラード:-(判定不能):0体:悪徳貴族。討伐失敗。
・レイピア:-(判定不応):0体:ラグランの持つレイピア。討伐失敗。
・暴風の化身:8(レジェンド):1体:この世界の台風の本体。討伐した? マジで? 国に表彰されるレベルだよ?
・ビッグモグラ:3(レア):2体:残虐非道な序盤ボス
>> 詳細を見る
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