第26話 ピエールさんのココア

さて、マシュマロはどの辺でしたか……。

店内の管理をエテに任せていた部分が多く、探すのに少しだけ時間がかかってしまっています。


それなのに探しやすいのは彼女が普段から整理整頓をして、細かく掃除もしてくれているおかげだと実感する。


ありがたい限りです。彼女はいつも気を使って見ないと気が付かないところまで配慮してくれますね。

さて、マシュマロはこの辺でしたか……。


記憶の中から思い当たる棚を探すと、マシュマロが見つかった。


海底なのにマシュマロがあるのが不思議で気になる?そうでしょうね。牛乳も気になったのではありませんか?

詳細は秘密です。さあ、おふたりの元に戻りましょうか。


カフェに戻るととても暖かい雰囲気を漂わせて対話していた。

エテが初めにぼくに気がついてにっこりと笑うと、シャポネさんも気がついてミルメルシィにも慣れてきたのかぎこちないなりに笑顔を見せてくれた。

コーは先ほどぼくが使っていたカップに入って数本の足と胴体を出している。眠っているのかもしれない。


ココアを入れたマグカップにマシュマロを3つずつ乗せた。


さて、完成です。先にマシュマロをとってくるべきでしたね。

温度が低くなっています。ええ、冷めてしまったというやつですね。



「お待たせいたしました。ぼくからのささやかなドリンクです。どうぞ」



そんな少し失敗したココアを差し出すと、2人の満面の笑みが返ってきた。

エテはよくこのような表情を見せてくれますが、シャポネさんもほんの少しエテに似てきた。



「ピエールさん!これ!あの時に作ってくれたやつと同じですよね!?」



やや興奮気味に彼女は瞳を輝かせて声を出して、ぼくの目を見つめた。

ぼくも彼女を見つめ返して、返答した。



「ええ、ミルメルシィを作ってから初めに淹れたココアと同じ容量で作りましたよ」


「わああ!嬉しいです!ありがとうございます!ピエールさん!!!」



再度、満足そうににっこり笑うと彼女はマグカップを落とさないように両手で持って口につけた。

その様子をじっくりと見ていたシャポネくんもぼくに頭を下げて、ココアを飲み始めた。


「ん〜!美味しいです!私、ピエールさんの淹れたココア大好きなんです〜!」



表情で、いや違う、体全体で幸せー!と表現してくれる彼女は非常に可愛らしい。

その横で小さく何度かシャポネさんも頷きながらココアを飲んでいる。


心地いいですね。こういう関わりは好きですね、ぼく。


2人のふわふわとした形容し難い空気を感じながらぼくもココアに口つけた。


少し温かみは残っているものの少し冷めてしまっています。

おふたりはお優しいですね。こうして淹れただけなのに感謝してくれるので。


視覚、聴覚ではこの暖かい空間を。触覚では甘いマシュマロとココアを。

そんな贅沢を堪能した。

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