第33話 農業支援金をめぐる腐敗!ギルド職員の決断
🧭 導入の書:それは“数字”から始まった
「……この支援金、実際に支払われてないのに、“配布済”になってる?」
若手職員・リュークの声が震えていた。
アースル村支部で扱っていた農業支援金の報告データに、不自然な数値が見つかった。
本来、災害被害を受けた農家3軒に送られるはずの補助金――
だが、農家には届いておらず、報告では“完了”になっている。
風間が調べると、それは本部の補助金管理部に繋がっていた。
使われていない金は、“予算操作”のために上層で吸収・流用されていたのだ。
🌾 本章:正しいことを知ってしまった者の記録
「バレなきゃいい。それが本部のやり方か……」
風間は呟いた。
これは一支部の問題ではない。本部の一部、特に天下り幹部ファグンの関与が濃厚だった。
支援金の「一部凍結」「帳簿上の完了処理」「架空の講習費計上」――
その裏では、“支援されない農家”が、静かに畑を手放していっていた。
「正義感だけで飯は食えないよ」
支部の中堅職員がこぼす。
「でも……“不正を見逃して働く職場”で、心は生きられませんよ」
リュークの言葉に、風間は深くうなずいた。
⚖️ 選択の時、ギルドの未来を問う
風間は動いた。
関係資料を“正式な報告ルート”ではなく、監査審議会へ直接提出。
農家たちの証言と共に、支援金の“未配布記録”を添えて提出した。
それは、内部告発に等しい行為だった。
「君の行動は、職務規範違反にもなりうる」
監査官の冷たい声。
「でも、それが“農業を守ること”なら、俺は――後悔しません」
⚔️ 決着と余波、そして信頼の種
数週間後、ギルド内部で粛清人事が始まった。
ファグンをはじめとする“上層部の不正処理関係者”は軒並み解任・処分。
農業支援金の制度は再設計され、現場の意見を反映する透明な仕組みが動き出した。
風間の行動は一部で問題視されつつも、
多くの現場職員たちの共感を呼び、ギルド内に新たな改革意識が広がった。
その夜、リュークがそっと言った。
「風間さん、あの日……黙っていたら、俺、ギルド辞めてたと思います」
風間は静かに答えた。
「俺だって迷った。
でも、“農業を支える”って言うなら、泥も掬わなきゃ嘘だからな」
🌱 収穫のひとこと
支えるとは、きれいなことじゃない。
でも、誰かが“正しさの側”に立たなければ――土は、いつか濁ってしまう。
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