第20話 ドワーフの技師、革新の農機具開発の物語
🧭 導入の書:この物語のはじまりに
「この“魔導式耕耘トラクター・グランベル5号”、村を変えるぞ!」
そう豪語するのは、鍛冶ギルドから派遣されたドワーフ技師・グラント。
魔導駆動と土壌感知魔石を搭載した超高性能農機具の開発に燃える彼だったが、
農家たちはその“便利すぎる技術”に困惑していた――
「それ、本当に“畑のこと”考えてるのか?」
🌾 本章:農地に立つ者たちの記録
「――はいストップストップ!!グラントさん、ちょっと止めてください!」
畑に響くエンジン音(※魔導音)。
風間が叫んだ時、既に畑の一角は“耕されすぎて”いた。
「見ろ!この均一な深さ!この完璧な撹拌角度!
まるで剣の舞のようだろう!」
誇らしげに胸を張るドワーフの技師・グラント。
だが、周囲の農家たちは複雑な顔をしていた。
「……なんか、畑の“匂い”が変わっちまったな」
「土が“疲れて”る感じ、しません?」
グラントの開発した【グランベル5号】は、性能としては最高だった。
だが――“畑と会話する”感覚が、どこか置き去りにされていた。
*
「グラントさん。技術が凄すぎて、土が追いついてないんです」
風間の言葉に、グラントは沈黙する。
「……でも俺は、“人の手の代わり”になりたくて、これを作ったんだ。
楽にさせたかったんだよ、農家を。
あんたら、みんな腰痛めてるし、夏は倒れそうになりながら耕してるだろう」
「それは本当にありがたい。
でも、“畑と人が対話する時間”も――農業なんです」
*
風間は提案した。
「“半自動農具”として改良できませんか?
畑の“反応”を読み取って、“一部だけ”手動制御が入る仕組みに」
グラントの目が輝いた。
「なるほど……人の感覚を“最後のセンサー”にするってわけか!」
そして、開発されたのが【グランベル・5R(Re:Soil)】
土の魔力反応を検知して、最適耕耘を“提案”するだけの補助機
最終操作は“人の手”に委ねられる
それはまさに、“機械と人が共に畑を読む”農機具だった。
*
「……これ、気持ちいいな」
初めて操作した若手農家・ユリオの声は、驚きに満ちていた。
「機械なのに、なんか“土と仲良く”なれた感じがする」
グラントは遠くからその姿を見て、静かに頷いた。
「……よかった。
俺、ずっと“道具”に誇り持ってたけど、
“人が誇れる時間”を残さなきゃ意味ねぇって、やっとわかったよ」
🌱 収穫のひとこと
便利さがすべてを救うわけじゃない。
だけど、“便利の向こう”に心が繋がるなら――それは、本物の技術だ。
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