29 何かおかしなさるかに合戦
ある日、カニが道で柿の種を拾った。そこへサルがやってきて言った。
「おいカニ、その柿の種とこのバナナの皮を交換しないか? 未来を見据えたサステナブル投資だぞ」
カニは「未来……?」と首をかしげつつも、「皮より種のほうが使えるだろう」と思い、危うく断りかけた。が、サルがしたり顔で「これ、SDGs対応エコ素材だぞ。いずれ世界を救う」とプレゼンしたので、何となく乗せられてしまった。
数年後。
カニはせっせと柿の木を育て、大豊作。ビタミンCも豊富で、干し柿にすれば冬越しも安心。まさに健康ライフの勝者である。
一方サルは、いまだに干からびたバナナの皮を大事にファイリングしていた。最近では「これはアートになる」と吹聴しているが、誰も買ってくれない。
ある日サルが柿の木にやってきた。
「おーい、親友カニ! その柿を俺にも分けてくれ。俺はフルーツ好きだし、免疫力アップしたいし、あとSNSに映えるし」
カニは断ろうとしたが、サルは木に登って勝手に柿をむさぼり食う始末。しかも熟していない渋柿まで丸かじりして「うげっ」と顔をしかめると、逆ギレして柿をカニに投げつけてきた。
カニは「ちょっと! フードロス!」と叫んだが時すでに遅し、直撃で大けが。
その知らせを聞いた仲間たちが立ち上がった。
蜂は「ミツバチ連合のドローン部隊を出撃させる!」と武装蜂起。
臼は「SNSで炎上させよう」とハッシュタグ運動を開始。
栗は「熱々にローストされたいか」と不敵に笑い、ストーブの上でスタンバイ。
サルが再びカニ家を襲撃に来たとき、仲間たちは待ち構えていた。
蜂のドローンがサルの周囲でブンブン攻撃。サルが慌てて逃げようとすれば、臼が「わるいね砲」を投下、SNSで炎上。
そこへ栗が熱々ジャンプで背中に直撃。サルは「アチチチ!」と悲鳴をあげた。
最後にサルは観念し、「もう悪さはしません、代わりにこのバナナ皮アートを譲ります」と土下座した。
だがカニたちは冷たく言い放った。
「それ、誰も欲しくない」
こうしてさるかに合戦は終わった。
カニは柿の実でスイーツを作り、臼はモチをつき、栗はマロンケーキとなり、蜂ははちみつを添えて、みんなで仲良くティータイム。
ただ一人、サルだけがバナナ皮をオークションに出し続けているが、いまだに入札ゼロである。
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