9 舌切り雀リターンマッチ
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは心優しく、森で出会った怪我をした雀に毎日、もち米を炊いてはせっせと食べさせていました。
おばあさんは心狭く、テレビのチャンネルがズレただけで10秒で雷を落とすショートヒューズでした。
ある日、いつものように雀と談笑していたおじいさんに、おばあさんが爆発。
「なんで米がねぇんだよォオ!! 雀に喰わせる米なんてねぇんだよォオ!!」
とブチ切れ、雀の舌を
「パチィィイーーン!」
と、ビンタの勢いで切り落としたのです。もはやハサミすら使わない新時代の舌切り。
雀は当然ながらショックを受け、そのまま家出しました。
数日後。
おじいさんは心配になって雀を探し、雀の宿へとたどり着きました。
出迎えたのは、全身黒スーツにサングラス姿の雀たち。
「スズメ一家」と名乗るその組織のボス――舌を切られた雀は、“ボス・スズマロ”になっていました。
「オヤジィ……来てくれたのかィ……」
もはや言葉はヤクザ口調だが、雀のくちばしはゴールドに光り、舌は機械仕掛けの最新鋭バイオチタン製に。
「アンタには世話になった。礼がしたいんだ」
そう言って、雀たちは二つの箱を持ってきた。
「でかい箱と小さい箱、どっちが欲しい?」
おじいさんが迷っていると、ボス・スズマロが小声でささやく。
「小さい方にしとけ。デカい方は“オカン対策用”だ」
おじいさんは素直に小さい箱を選び、帰って開けてみると、中には一生分のもち米、最新の炊飯器、そして雀翻訳スマートスピーカーが入っていた。
数時間後、デカい箱を勝手に開けたおばあさん。
中から飛び出してきたのは、マッチョな雀たちと、パンチパーマのボス雀・スズミ姐さん。目の前にはこう書かれていた。
「雀を舐めんなコラ!」
ド派手な演歌が流れ、姐さん雀の「舌切られブルース」が始まり、おばあさんは音圧でぶっ飛ばされ、裏山まで吹っ飛んで行きました。
こうして、おじいさんはもち米とテクノロジーに囲まれて幸せに暮らし、
おばあさんは雀への謝罪と演歌の猛特訓をする日々を送ったとか、送らなかったとか。
――めでたし、めでたし(?)
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