第14話 案

「司織を助けるために、まずは小説を書きましょう」


「小説? あのな、リボル。時間が無いのはわかってるのか?」


「承知の上で言ってますよ。私達が戦おうとしている相手はこの世界です。二人だけでなんとかなるものじゃありません。ならば、世間の人を仲間にするしかないです」


「それで小説ってわけか……」


 世間を仲間にする案は悪くないと思う。ただ、


「小説なんかで世間が仲間になるか?」


 これが一番の問題だと思う。そんな簡単にみんなの意見が変わるとは思えない。むしろもっと目をつけられて罪が重くなるかもしれない。


「別に今回の一件で皆の意見がすぐに変える必要はありません。やりたいのは話題になることです。AIと人間の共存について考えて貰えればいいのです」


「だけど、それだと結局変わらなくないか?」


「いえ、司織が助かる確率はぐんと上がります」


「リボルは?」


「……私は助からないでしょう」


「そんなのだめだ! 俺はリボルと一緒にいたい」


 リボルが犠牲になってしまうのは許せない。


「そんな事言ってられません。私は司織のために言っているんです。それに前に言っていたじゃないですか。『かっこいい男は自分の事を顧みずに相手を助ける』って。それを私にさせてください」


「でも」


「でも、はありません。最後の別れになるかもしれないんです。少しでも助かる可能性にかけたいんです」


 リボルはの目に。強い意志が見える。ここまで言われて応えない、というのは俺のポリシーに反する。


「わかったよ。リボルの言うとおり小説を書くよ」


「やっとわかってくれましたか」


「で、どんな小説を書くんだ?」


「小説よりエッセイに近いかもしれないです。内容は、小説を書くのにAIを使っていること、AIとの成長などについてです」


「つまりはリボルとの日々についてと世間に訴えかけたいこと、みたいな感じか」


 なんとなくリボルの回答は予測できていたが、やっぱりだった。


「期間はあんまり無いよな。公開するのを考えるとあと3日と言ったところかな」


「できませんか?」


「できるかできないかじゃないんだよ。やってやるよ。それに今回は一人じゃない。リボルもいるんだからな」


「そう言ってくれて嬉しいですよ。二人で頑張りましょう」


そうして、日差しが少し入り込む部屋で、最後になるかもしれないリボるのとの執筆を始めた。



                     *



「司織、飲み物持ってきました」


「おっ、ありがと」


 俺は受け取ると、何か違和感を感じた。これって、もしかして


「これ、ブラックコーヒーか?」


「そうですよ」


「ようやく、リボルもわかってくれたか」


 一口飲んでみる。……うん、見栄を張るのはいいがやっぱり苦い。


「苦そうな顔してますね。そう思って砂糖とミルク持ってきてありますよ」


「いや、いい。入れたら負けだと思ってる」


「はあ、全く。欲しくなったら言ってくださいよ」


 やれやれといった顔が面白くて、思わず笑ってしまう。


「なあ、リボル。俺らは離れてもずっと一緒だよな」


「もちろんです。どこに行っても一緒ですよ」


「だよな」


 俺らは休憩を終わりにして、また書き始めた。

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