第四話 生命管理局

「はい、どちら様でしょう?」

 メリサは炎に包まれた扉を開けた。扉の向こうには、漆黒の衣装を纏った男が立っていた。左胸には炎の輪っかがハートの周りに浮かぶデザインが施されている。

「私は生命管理局せいめいかんりきょくのヴィオス・ファザールと申します。生命の誕生を感知したので、こちらのお宅に伺いました」

「あっ、そうなんですか」

 メリサは生命管理局の仕事の速さに驚きながらも、ヴィオスを家に招き入れた。生命管理局は自然に生まれた者ではなく、メリサが行ったように、人工的に生み出された命を管理する機関である。

「あなたが誕生させた生命はそちらにいる方々ですね」

 ヴィオスは左の手のひらをフレイとバレットに向け、メリサに確認した。メリサはコクリと頷いた。フレイとバレットはどこか緊張したように、視線を彷徨わせていた。緊張しているのはメリサも同じだった。

「どういう経緯で、新たな生命を誕生させたのかを説明していただけますか?」

「はい、分かりました」

 メリサはヴィオスにフレイとバレットを誕生させた経緯を説明した。ヴィオスが頷きながら、指を鳴らすと、メリサの言葉が立体化し、ふわふわと空中に浮かんだ。その光景に感心しながら、メリサは説明を続ける。

 メリサが説明を終えると、ヴィオスは立体化した言葉を食べ始めた。メリサは驚き、思わずフレイとバレットと目を合わせた。フレイとバレットも驚いた表情をしていた。

「――記憶のインプット完了。コホン、それでは2人分の生命代せいめいだいを払っていただきます。1人につき、5000ジェロニランなので、10000ジェロニランになります」

「ちょっと待ってくださいね」

 メリサは壁際の木製の棚から箱を取り出した。蓋を開けると、中には大量のジェロニラン――通貨のこと――があった。10000ジェロニランを手に取ると、ヴィオスに渡した。ヴィオスは10000ジェロニランを受け取ると、ポケットに仕舞った。

 人工的に生命を生み出すと、生命管理局に生命代を支払う義務が生じるのだ。支払いを拒否した場合、永住権を剥奪されて国外追放となる。罰則が重たすぎる気もするが、新たに生命を生み出すことは、それだけの責任を伴うのかもしれない。

「それと1週間以内に、生命管理局生活課せいめいかんりきょくせいかつかに出生届を提出してください。それでは失礼します」

 ヴィオスは頭を下げると、背中から漆黒の翼を生やし、猛スピードで帰っていった。

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