第12話 不穏
夜。
孔雀はとある地下室にて、フラスコに様々な液体を混ぜ、それを熱していた。
そして熱し終わったそれを小さな檻の中のネズミに飲ます。
ネズミの口に渡った瞬間、ネズミは息苦しさに悶える。
泡を吹いて、斃れて動かなくなったネズミ。
フラスコを持ち上げ、孔雀は様々な゙薬草とそれを調合する。
静まり返った真夜中に浮かぶ、不気味な光景だった。
夜が明けると、翠色と紅玉は起き上がる。
いつも食事をしている部屋へ向かうと、そこはしんと静まり返っていた。
使用人達がそさくさとテーブルに食事を運ぶ。
だがいつもと違うことが一つ。
孔雀の姿が見えない。
「失礼しますが、孔雀さんはどこにいるんでしょうか?」
紅玉が使用人達にそう訊いても特に答えてくれなかった。
「どうしたんだろう」
紅玉が翠色へ心配そうな表情を浮かべる。
「何かあったんじゃ」
「大丈夫さ、きっと。何も心配ない、もしかしたらどこか遠くに出かけているかもしれない」
紅玉もとにかく頷いてご飯を食べる。
何か嫌な不安が胸に靄を貼り、紅玉は食べても味がまるで感じられなかった。
その後も部屋に戻る二人。
紅玉はやはり気になるようだ。
「やっぱり、何かあったんじゃない? 見て来たほうがいいんじゃ」と、困惑した表情の紅玉を宥めるように翠色は語りかけた。
「大丈夫さ、きっと。何かの気のせいだ」
「うん……………」
やがて、空に曇天が広がる。
ゴロゴロと雷の音がして、大雨が降り注いだ。
外の曇った空のせいで、二人はその暗さにうつらうつら眠くなる。
そのまま目を閉じ、ベッドの上で眠ってしまった。
雷の大きな音が鳴り響く。
カッ、と眼の前にその光が射し込み、翠色はそれに起こされ目を見開いた。
隣のベッドに紅玉が居ない。
「紅玉! 一体どこに!」
翠色は叫ぶように屋敷を歩き、紅玉を探す。
誰一人として人の気配がない薄暗い屋敷。
翠色は胸騒ぎに駆られ、走り出す。
屋敷のとある部屋にたどり着いた。
ドアを開けると、石の階段が敷かれた部屋。
翠色は下へと続くその階段を降り、慎重に進んでいく。
やがて、階段を降りた先は一つの地下室だった。
冷ややかな石畳の部屋。
眼の前には手足を鎖に繋がれた紅玉の姿。
体中の皮膚に痛々しく傷が膿み、血が滲んでいる。
「紅玉!? 一体何が!?」
「翠色………………逃げて……………」
紅玉は枯れた声でそう言って、一筋の涙を流す。
「誰が! 誰がこんなことを………………! 誰が紅玉を傷つけた!」
翠色は怒りに震える。
愛する者を傷つけるなど、翠色には我慢ならなかった。
「おや、君。来ちゃだめじゃないか。全く」
後ろからそう声がして翠色は振り向く。
そこに居たのは孔雀だった。
「貴様! 紅玉様に何をした!?」
「簡単だよ、実験さ」
「どういうことだ!」
「僕は数年前から毒の研究をしていてね。様々な虫や毒草から抽出した毒をどう使えるのかを試したかったんだ。彼女に飲ませた毒は倦怠感を起こす毒と強烈な痛みを与える毒。もちろん、かなり強い毒であり、どうやら彼女のように体へ損傷を付けることがあるみたいだ」
「なぜ人で実験をする!? 彼女は何も関係ないだろう!」
「それは違うね。これは実験であり、彼女に僕の愛を分かってもらうための行為だ。彼女は君のことばかりで僕に見向きもしない、僕はこんなにも彼女を愛しているのに、こんなにも彼女が好きなのに。それなのに答えてくれない。なら、実験の糧として毒を飲ませれば、僕の好意を認めてくれるかと思ってね」
「はっ! 紅玉は多分、お前みたいなクズを好きになんねぇよ。そんな歪んだ愛情表現、そりゃあ見向きもしないだろうよ」
翠色が鼻で笑って、孔雀の眉がぴくりと動いた。
翠色は更に挑発する。
「人間、内面も大切だからな。容姿がいくら良かったってねぇ」
孔雀の顔が怒りに歪む。
翠色はそれに身構えた。
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