第7話原作と違う事が起こる


「それで、さっき連行された男子生徒が、グラウンドで大剣を振り回しながら暴れたから。グラウンドはこの惨状な訳……?」


 騒ぎを聞きつけ、やってきたハピネスライアー学院の教諭達。俺が先程起こった出来事を話して、貧乏揺すりをしながらイライラしているのが分かる担任教諭のハナノ先生が俺の話を聞いてくれた。


 ハナノ先生が言ったグラウンドの惨状とは。そこかしこで地面が割れていたり、クレーターのような物もできていて。あげくの果てにはグラウンドにあった備品が全て壊れていま。その備品の中には俺達の体力測定で使われていたドローンのような機械も混じっている。


「全く、入学初日からなんて事をしでかしてくれたんだ」


 ハァとため息をもらしながら、苦悩する表情を浮かべていたハナノ先生の肩に手を置く男性が現れる。


「ハナノ先生、ため息をもらすと幸せが逃げますよ。生徒達の前では笑顔を大切にといつも言っているでしょ、スマーイルですよ」


「クロアット先生、そんな呑気な事を言っている場合ですか。見てくださいよこのグラウンドを」


「話を聞いて大体の事情は分かったから、君達はもう寮の方に帰りなさい。他の生徒達はとっくに寮に帰っているよ」


 男性教諭の登場で、ハナノ先生は怒りたくても怒る事ができず。俺とアネット・ヴァルタンの二人は解放された。


「私はこっちだからティア君、また明日」


 女子寮の前でアネット・ヴァルタンと別れる。別れる前にアネット・ヴァルタンは俺の事をティア君と呼んで寮の扉を開けて中に入っていく。


「ティア様に向かってなんて口の利き方を」


「ネクロ、彼女には手を出さないでほしい」


「……ティア様のご命令であるなら」


 ネクロは俺の命令をしぶしぶ受け入れたような反応だ。女子寮から男子寮まではそれほど遠くない歩いて五分程である。


「さてと、ネクロもう出てきていいよ」


 寮の部屋に入ってベッドに横になってネクロに声をかける。透明化を解除して姿を現して空中に浮かんでいたネクロはベッドで横になっていた俺の体にダイブしてきた。


「はわぁぁぁ一日振りのティア様から漂う匂い〜」


 スンスンと鼻で俺の体の匂いを嗅いでくるネクロ。


「なぁネクロ、一つ聞きたい事があるんだけど。さっきの男子生徒暴れる前と暴れている最中で変わった事がなかったか?」


「変わった事でしたら異常な程の瘴気を纏っていた事でしょうか、普通あの年齢くらいの人間でしたら異常な程の瘴気を体に取り込めば死んでいてもおかしくありません」


「それは本当か?」


「ティア様は私が嘘をついていると思っているのですか?」


「いや、ネクロが嘘なんてつく訳ないよな」


 ベッドに寝転んだまま先程起こった事を頭の中で考える。


 まずアネット・ヴァルタンが襲われた事、これは「明日君が死ぬなら」で主人公がアネット・ヴァルタンと知り合う為に起こったイベントなので間違いない。


 だがおかしいのは暴れた男子生徒の事だ。アネット・ヴァルタンを襲いグラウンドで大剣を振り回し暴れた男子生徒は俺が知っている限りそんなイベントは起こらなかったはずだ。


 この世界に来てから色々とおかしな事が起こっているのは感じていた。まず聖女ドロテアが序盤に殺されてしまった事、そして殺したのは魔王軍幹部の一人で第三位大堕天使ルシファール。


 俺が知っている限り聖女ドロテアは序盤には殺されなかった、主人公と共に協会から逃げ出して、数年間主人公の家で一緒に過ごす事になり。共に学院に入学するはずだった。


 それにドロテアを殺した魔王軍幹部、第三位大堕天使ルシファール。アイツは本来なら後半に出てくる

 ボスキャラなのだが、なんであの序盤の協会に現れたのか謎だ。しかもアイツが狙っていたのは聖女ドロテアだった。


 そして一番の問題はこの世界に主人公が存在していない事だ。俺が今いる世界は「明日君が死ぬなら」というエロゲの世界だ。


 エロゲには必ずヒロインと仲良くなって付き合う為に主人公が存在している。


 主人公は俺と同級生でこのハピネスライアー学院にも入学しているはずだった。だが入学式でいくら主人公の姿を探しても主人公の姿はなかった。まるで主人公なんて存在していないみたいだ。


「なんで原作とは違う事が起こってる、それに主人公は一体どこにいるんだ」


「ティア様……?」


 もぞもぞとベッドにある毛布の中から顔を出して、心配そうな表情を浮かべてくるネクロ。


「悪い、ネクロ少し教えてほしい事がある」


「私が答えられる範囲なら、全てお教えしたはずですが」


「いや、まだネクロに教えてもらっていない事が一つある」



 ☆☆☆



「うーん、今回もぱっとしないな」


「ルシファール、何だいそれ?」


「人間を殺して奪ってきた宝なんだけど、全部ガラクタみたいなものさ」


「ふーん、おっ、その巻物要らないならもらってもいい?」


「いいよ、僕は君みたいに忍術には興味ないから」


 金銀財宝と呼ばれそうな宝の中に紛れていた、大堕天使ルシファールは紐で巻かれていた紙を放り投げてその巻物を全身黒い忍装束を覆われている女が受け取る。


「でもまさか、あのネクロが魔王様を裏切るとは」


「いいじゃないか、どうせ彼女が居なくなった所でそこまで影響はない。それにネクロが居なくなってくれたおかげで、僕のお気に入りの子が幹部入りしたんだよ」


「ああ、あの女か、確か元聖女だったみたいだな」


「うん、いやぁ堕とすのに結構時間がかかったよ」


「ニヤニヤ笑ってキモい」


「あっつー、もういきなり燃やすなんて酷いじゃないか。それにこの服お気に入りだったのに」


 一瞬で体を燃やされたはずのルシファールは次の瞬間には体が再生していて、火傷の跡すら残っていなかった。


 ルシファールは服を燃やされた事で文句を言おうとしたら、ガチャリと扉が開く。真っ黒に染められた修道服を着た黒髪で目を布で覆われた女の子が杖をつきながら歩いて登場する


「ルシファール様とそちらは?」


「こちらの女性は君と同じ魔王軍幹部だよ、あとで紹介しよう。それよりもどうだい、その魔王様からもらった力は上手くコントロールできるかな?」


「はい、魔王様からいただいたこの力、必ずやコントロールできるようにしてみます」


 ルシファールの目の前で跪く女の子、ルシファールは女の子の頭を撫でる。


「そうか、なら期待しているよ。君は僕のお気に入りだからね、それと今日から君は魔王軍の幹部第十二位に昇格だそうだ」


「ああ、それは魔王様に感謝しなくては」


 神様にでも祈るかのようにその場で正座をして両手を組む女の子、ルシファールと全身黒い忍装束に覆われていた女性は何も言葉にせず女の子を見ていた。


「魔王様から君に初任務がある。僕達や魔王様を裏切った。裏切り者を始末してきてほしいんだ」


「それが魔王様の命令とあれば、私にお任せください」


「なら君に任せるよ、新たなる魔王軍幹部の一人、第十二位闇の聖女ドロテア」

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