固有スキルは【独楽創造】のみ!?独楽を片手に無双する異世界転生!

チキンナゲット65p

第1話 社畜、死にかける。

 やぁ!俺は社畜!絶賛30連勤実施中!

今ならサービス残業毎日3時間ついてくる!

労働基準法?俺の辞書にはないよ!

今?謎の体調不良で絶賛倒れてるよ!

ここはどこかって?トイレさ!

トイレは僕の第二の故郷だよ!


 さて、俺が倒れるまで働いているのは、

すごい仕事をしていると思っているんじゃないかい?例えば、数億の商談中とか?

あるいは、他社を買収したり、

すごいテクノロジーを開発しようと

スパイに狙われたり、社内で名を上げようと虎視眈々と駆け引きが行われているとか!


 どう思う?君。

そう、この俺の回想を読んでる君さ!


 残念でした!どっちもハズレ!

普通に飲食店サービス業さ!

文字通り馬車馬のように働いてるよ。

不思議だよねー。なんで倒れるまで

働いているんだろか!ふふ、おかしいよね。


 ほんとオカシイよ……

どこで道を間違えたのかな。

昔は、成績も良かった。

小学校のときは簡単だったな。

百点は何回か取れてたと思う。

そこからかな。勉強しなくなったっけ?

勉強はそもそも嫌いだし。

あとは何もわからなくなって、

成績は悪くなる一方。よく怒られてたなー。


 あ!でも友達は……多くはなかったか。

図書館で本読んでたな。帰りはいつも一人か。いや、下校の時間は何かしら遊んで帰ったような。いつからだ?中学から一人…。

 

 いいや!運動!運動は、得意ではないけど下手じゃないさ。球技は才能がないだけで。

でもそれだけ!よくクラスメイトに責められたっけ。ヘタクソ!とかルールくらい把握しとけって。でもさー、ルールなんて学ばなくない?普通。授業でやらないよね?

そりゃ分からないよ。


 大学も行ったけど、特にこれといってないか。部活入ったけど、最後は嫌々やってたなー。面白くないし。主将は消えるし、後輩はなめてくるし、OBは役に立たない上に文句だけどはつけて責任だけはとらされて。

サークルもどきはつくったけど、特に最後は変な空気で終わったし。駄目じゃん。

つら。暗黒歴史つら。

みんなも、マネするなよ?こうなるゾ☆


 トイレの個室で胃薬や風邪薬、栄養ドリンクなど、30連勤の身体に効きそうなモノを摂取して、なんとかその後やり過ごした。


 家に帰って電気をつける。安アパートに

1人。昔は彼女もいたっけ?

あ、ゲームの話か。昔はゲームもエロゲーも漫画もアニメも何でも来いだった。

セリフ回収、エンド全回収のために何日も

没頭したり。ずっとやってたなー。

小学校からどっぷりハマってたから

しっかりオタクに育ちましたよ。


ところがだ。今じゃ積みゲー積み本すら

できない。積んでいるうちはまだ幸せだったと今更思う。

はは。なんのために働いているのか。

昔は色んな事やってたのに。

今じゃ遊ぶチカラもありませーん。

俺は力なく床に倒れ込む。


 若干のゴミ袋といつ飲んだか分からない

しっかり乾いたマグカップが転がっている。

もう拾う力もない。疲労はあるのに。

なんちゃって……


 危ねぇ。最後の言葉がつまらんダジャレになるなんて。死んでも死にきれん。

こんなときは、アレに頼るしかない。


 朗報です!そんなあなたでも気分を

癒してくれるアイテムがあります!


 エエー? ソンナスゴイモノガー? シンジラレナーイ!

 「その名もー?『ラジオ』!」


 ラジオ~?イマサラー?フルクナーイ?

 しかも、小型携帯用ラジオ!


 これさえあればいつでも簡単に

ラジオが聴けます!しかも!無料!

電池さえ交換すれば24時間聴けます!


 エエー?24ジカン!?スゴーイ! オマエヨリハタラクー!!

おい、悪口言ったやつ誰だ?


 そんなすごいラジオを使って

今日の夜のお供を決める。

ダイヤルを回すとザザーって音が聞こえる。

確かにアナログだけどさ。

周波数が合うとニュースや曲とか聞けるんだ。ちなみにホワイトノイズみたいで

このまま眠れるぜ?


 昔、爺ちゃんが聞いてて憧れてたんだ。

大人って感じがして。

災害の時とかも役に立つし、

誰かの投稿を読み上げてみんなで共有する

あの感じが好きだった。

ま、投稿なんてしたことないけど、

誰かの投稿を聞いて一人突っ込んだり、

そんな考え方があるのかと勉強になったり。


 知ってる?電柱って空洞なんだってさ。

あと、トゲアリトゲナシトゲトゲって

どっちだよって思うじゃん?

ニセクロホシテントウゴミムシダマシって

いうのもいるんだよ。知ってた?

結局どっちだよってね。俺はどっちも好き!


 こういう学校や社会じゃ役に立たない

無駄知識だけは増えていく。

勉強になるとやる気がないんだよなー。

漫画、ゲームなら暗記は得意なのに。

セリフとかめっちゃ覚えてるよ?

と誰に言うでもなく空虚にドヤる。

 

 俺はなんとか立ち上がり、手を洗う。

ポットでお湯を沸かし、コーヒーを作る。

もちろん、苦いから牛乳はたっぷり。

温めている間に部屋の片付け。

しんどくたってやらないと、

誰も助けてくれないんだ。

自分でやるしかない。

学校を通して分かったことはそこだ。

誰も助けてくれない。

理不尽は普通だ。独りが普通だ。

必要なのは力か知恵だ。

ま、俺には両方ないけどさ。


 独り言を呟きながら一日の終わりを必死に抵抗し、まだ終わらせないと足掻く。


 明日はやっとの休みだ。

他の人が辞めていき、

何故か自分だけ辞めず、

業務は増えるばかり。

だからこうなるんだ。

いつもいつも、俺は誰かの何かを片付ける。

でも、それは誰にも褒められない。

損な役回りだなーって思う。


 ラジオは相変わらずノイズを発している。

ザーッて、静かな夜に少しだけ音を添える。不思議と嫌な音だとは思えない。

他の局にチューニングするのも面倒なので

結局そのままにしている。


 沸き立つ蒸気。熱湯が沸き立つ。

インスタントのコーヒーに入れて、

成分無調整のミルクを注ぐ。

まるでブラックな社会を

聖なる力で晴らすかのように

黒色が白く染まっていく。

闇を中和していくかのように。

きれいなウッドカラーになる。

一口飲むだけでほのかな苦味がミルクの甘みを引き立てる。酸味が甘みを引き立てる。

疲れたときは浅煎りが合う。


 1時間はボッーとしたかと思えるほど、

カフェオレが体に染み渡る。

時計を見るとまだ五分しか経ってなかった。

ああ、疲れてるなーって思う。


 ホントは眠いはずなのに、

明日が休みだからかな。眠くないや。

ご飯も食べないと行けないのに。

また一口飲む。

幸せだなーって思う。

皮肉なものだ。疲れたときこそ

うまく感じるカフェオレ。

いや、疲れてなくても美味しいんだけど。


 スマホが震えた。

嫌な予感がする。こんな夜更けに

連絡してくるやつは1人だけ。

ま、友達がいないってのもあるけどさ。


俺はしぶしぶスマホを開く。

やっぱり店長だ。


 〇〇さんが体調不良で休み。

明日出勤して。


とのこと。


スマートフォンの頑丈さに感謝だ。

俺は握り潰す勢いで握っていた。

ふざけんな。俺も体調不良だわ。

てか、お前のせいだろ!

人件費ケチるからこうなる!

ってわからないのかなー。

あー、一気に疲れが溢れ出てきた。


そのまま床に倒れ、

蛍光灯が眩しく、目に刺さる。


 今すぐ消えたい。

ここじゃないどこかへ。


俺はもう頑張った。十分じゃないか?

カフェオレ1杯でささやかな幸せを感じる

この俺に、どうしてこうも酷い仕打ちを?


助けて。


そう思うことしかできない自分が憎い。

つらい。いっそこのまま俺も……


「てんてんててーん♪

どうも天界ラジオ、DJケイ爺じゃ。

今日もガイアの幕開けじゃー!」


 そのとき、小さなノイズだったラジオから

変な爺さんの声が聞こえてきた。

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