第5話:知りたくもあり、知りたくもなし

 今田さんから伺ったお話です。


 彼が昔、まだ中学生だった頃に奇妙な体験をしたと言っています。


 その頃はまだ地震への本格的な備えが整う前で、不審者への対応も緩い、かつてそれほど悪意が無いだろうと勝手に安心されていた時代です。


 その日、学校から帰宅していると、ふと友人に会いました。「よう」と挨拶をしてからその辺で買い食いをしながら学校の愚痴を言っていました。新任の誰それはクソだとか、どうせ偉くなりたいわけでもないのに勉強なんて必要かなどと、当時としてそれなりに教師に反発した愚痴をたれていました。


 しばらく話し合ったあと、その友人と別れて家に帰りました。ただそれだけのことだったのですが、家に帰ってから思い出しました。彼は前年に転校しているんです。どうして会ったのだろう、どうして不自然に思わなかったのだろうとは思いましたが、考えていても仕方ないし、もしかすると彼がこちらに来ていたのかも知れません。


 だからその場は何かの拍子に出会っただけだと思いながら夜に寝たのですが、翌日、朝起きると両親が深刻そうな顔をしてテレビを見ていて、そのテレビにはあの彼が転校していった先で大きな地震が起きたというニュースが流れていました。


「そんなことがありましてね、何度か地元で同窓会は開かれているんですが出席する気にならないんですよね。彼がもしその場にいなかったらあの時会ったのは……って事です。もちろん出席して元気にしていれば何の問題も無いんですがね……」


 彼は何処か寂しそうに語った。一度出席すれば分かる話だが、なんとなくこの話に決着を付けたくないそうだ。

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