第2話
俺は、ウェイティングをする。
後輩メンズコーディネーターに、手伝ってもらいながらフロックコートを纏う。
昼間の新郎の服装は、モーニングコートとフロックコートが主流だがモーニングコートは新郎新婦の父親が着る事が多い。
その為、新郎はフロックコートと言うのが現状だ。
モーニングコートは、ジャケットとベストは黒の共地、前裾が斜めに丸くカットされたモーニングカットやカッタウェイカットと呼ばれる形で、衿は剣先のように尖ったピークドラペル。
前あわせはシングルブレストという生地を重ねない形で、ボタンはひとつ。
パンツは黒とグレーの縞模様でコールパンツと呼ばれるものを合わせるのが正式だ。
片や、フロックコートはモーニングコートに比べジャケットの前裾が水平にカットされた直線的なロングシルエットが特徴。
現在では、このフロックコートは結婚式でしか着ることが無くなってしまった。
ダブルブレストと言うジャケットを二枚重ねたようなシルエットが特徴でもある。
シングルブレストと違い生地の重なりを大きく見せることで、胸と肩の部分を強調し、より豊かでフォーマルな印象を与える事が出来る。
俺は、シルバーグレーのスーツを身に纏った。
着用すると、とても引き締まったような気持ちになる。
緊張しているのだろうか。
「あー、鈴木さん」
「どうした?」
背中に回っていた後輩が、俺に声をかけて来る。
どこか、顔色が悪い。
なんかトラブったかな?
「それが…新婦さまが来ていないらしくて」
「え!マジか」
式まであと3時間。
遅くても3時間前には会場入りをお願いしてあった。
俺は、スマホを手に取り電話を掛ける。
だが、呼出音はするが彼女が出ない。
「く、出ない」
「どうしましょう、先輩」
「自分の結婚式で対応することになるとは…俺は、一度両家に会いに行く。
お前は、支配人とキャプテンに状況説明を頼む」
「分かりました」
お客様で、ドタキャンや昔のドラマみたいに花嫁を攫ったりするのを経験はしてきたが自分自身がそんな経験をすることになるとは思ってもみなかった。
実花の身に何かあった。
そう考える自分と逃げ出したんじゃと言う可能性とが頭を駆け巡り鬩ぎ合った。
先ずは、義両親の控室に向かう事にした。
実両親は、後でいい。
なんとでもなる。
はぁーっとでかい溜息を吐き控室の前に立った。
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