幽霊たちのお気に召すまま

城井映

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「私たち、もう、付き合うべきだと思う」

 そう言われて、あたしは隣にいる女を見た。

 彼女──朝烏麻路あさがらすまみちは、ネイビーのリボンでハーフツインにまとめたさらさらの銀色の長髪の合間から、切れ長の眼差しをあたしに向けていた。銀の似合う真っ白の肌、滑らかな鼻梁の輪郭と、薄い唇。ぴんと背筋の伸びた身体の線を、無骨な黒いロングトレンチコートが覆っている。女子高生というには大人びすぎた風体、そして、あたしといるにはあまりにも優等生然としすぎたこの女が、あたしと付き合うべきだと言っている。

「いいよ」

 あたしは高鳴る心臓の音を隠しながら、平然と返してやった。

 どうせ一ヶ月足らずで終わってしまう関係なら、とことん突き詰めてやろうじゃないの。

「よろしく、麻路」

「うん、よろしく……碧子あおこ

 麻路はあたしの名前を呼んだ。

 その名前の通り、あたしは自分が碧く香ったような気がした。

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