秘密を明かされる

 さて、どうしたものか……。


 引船さん、いや、引船カレンの質問によって、俺の望む展開へ事態を持っていくのはほぼ不可能となった。


 俺の望む結末は、『前橋レンと剣条シアンの破局に関して、俺が一切関わっていない』事を前橋レンに証言させること。

 

 それは即ち、二人の破局の原因が前橋レン、若しくは剣条シアンにあったということだ。


 そして、そうなった場合、立場が悪くなるのはまず間違いなく、前橋の方だろう。


 周囲に女性を侍らせたハーレム野郎(学生)。


 そんなものが許容されるのは、創作の中だけだ。

 

 だからこそ、前橋の幼馴染み、ハーレムメンバーの1人である引船カレンには、剣条シアンと俺の間に何らかの関係があってもらわないと困るのだろう。


 だから、妄想としか言えない噂が流れるのを止めなかった。


 剣条シアンの幼馴染みである俺を巻き込むために。

 

 だから、話し合いの場を食堂にした。


 周囲に俺とシアンの間に何かがあったのではないか?という可能性を聞かせる為に。


 そう、


 可能性でいい。


 本当に関係があったのかなんて、引船カレンにはどうだっていいのだ。


 剣条シアンの方に、破局の原因があったかもしれない。


 その可能性があればそれでいい。


 前橋レンが、一方的な悪者にさえならなければ。


 引船カレンにとっては、それだけでいい。




 ……。


 我ながら、度の過ぎる妄想をしてしまったものだ。

 だが、案外的を得ているとも思う。


 何故ならば、


 俺が引船カレンと同じ状況であれば、同じことをしたかもしれないからだ。


 自分のよく知る人間が、周囲から吊し上げられるかどうかの瀬戸際で、別の人間に疑いを向ける。


 それでその人を守れる可能性があるのなら、


 俺だって、その選択をするかもしれない。


 だから、俺には引船カレンの行動を、責めるなんてできないなんて言うと思ったか!


 責めるね、めっちゃ責めるね!


 だって今それやられたら不味いことになるの俺だもん!


 自分のよく知る人を守ろうとするのは当然だけど、まず自分の安全ありきなんだよ!


 



 と、いう訳で、


 俺は引船カレンの質問に対してどのように返すべきなのか、


 彼女の質問の内容は

 『剣条シアンと、その幼馴染みである俺との間に何か関係があったのではないか?』

 更に言えば、

 『関係があった場合、それが前橋レンと剣条シアンの破局の原因なのではないか?』

 である。


 否定することは簡単だ。


 ただ1つ、俺とシアンしか知らない、ある《秘密》を明かせばいい。


 だが、それを言うのは余りに代償が大きすぎる。


 俺とシアンの、これから先の学生生活に及ぼす影響は計り知れない。


 その事に関して、正直な所、俺はどうなったって構わないと思っている。


 だか、シアンにとっては、彼女の持つ夢が永遠に閉ざされる可能性がある。


 それを思えば、この手段をとることは、絶対にできな「関係はあるわね」い。


 ……。


 おや?


 おやおやおや?


 聞き間違いかな?

 今、俺の幼馴染みちゃんの声で、聞き捨てならない台詞が聞こえたような……?





 「アタシとコイツの間には、肉体関係がある」



 「でも、アタシと前橋の別れた理由に、その事は関係ない」



 「それで納得、してもらえるかしら?」


 ちゅるり。


 場を凍らせる発言と共に、彼女、剣条シアンは、カレーうどんを食べ終えた。


 


 いや、何してくれてんの?

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