NEET'n NEET
ハヤシダノリカズ
第1話
僕の名前は
こんなライトノベルの書き出しのようなモノローグを頭の中に浮かべなきゃならない位に、現在の僕は混乱している。自分自身のアイデンティティを改めて確かめる必要に駆られている。
いつからだろう。いつからか僕は毎日同じ夢を見ている。正確に言えば全く同じではないのだけれど、夢の中で僕は、似たような毎日を過ごす他人として生きているんだ。これまでで一切関わりの無かった見知らぬ赤の他人の人生を、僕は毎日夢の中で体験している。でも、その赤の他人の人生もまた、引きこもりのニート。親に与えられた子供部屋にこもって、部屋を出るのはトイレと風呂に行く時だけ。飯が食いたくなったら足で床をドンとやって階下の母親に催促する。すると、十数分後に部屋のドアの向こうに盆に載せられた飯が届く。耳を澄ませては、それを持ってきた母親の階段を下りる音を確かめてからドアを開け、飯を部屋に持ち込み食う。そんな引きこもりニートの毎日を、ずっと夢の中で体験している。そして、それは、起きている時の僕の生き様そのものなんだ。
だから、僕は確かめる為に頭の中で繰り返す。『僕の名前は佐伯友則、絶賛引きこもり中のニートだ』と。『夢の中で毎晩見せられるハンドルネーム【めろりんめろん】とかいうキモオタ根暗デブじゃない』と。
めろりんめろんというハンドルネームで誰にも読まれていないブログを書き散らかしている夢の中の僕がPCをシャットダウンした時に、真っ黒のディスプレイに映った顔は醜く太っていた。そして、夢の中の僕は生気のない目で自分の顔を認識した後すぐに、見たくもないものを見たといった感じでノートPCを閉じた。
僕はめろりんめろんじゃない。僕はあんなに太っていないし、僕はあんなに醜くない。僕は佐伯友則。めろりんめろんじゃ、ない。
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