第3話 支配と孤独
母と父は、幼かった私に必要以上の食事を与え
太らせることを楽しんでいた。
「もっと食べなさい」
「全部食べきるまで席を立つな」
それは愛情ではなく、支配だった。
気持ち悪くて何度も吐きそうになっても我慢して食べ続けた。
「頑張って全部食べれば少しは褒めてもらえるかもしれない。」
そんな希望を信じて無理をして口の中に詰め込んだ。
そして、私は両親が望む様にブクブク太っていった。
さらに彼らは“教育”と称して容赦なく暴力を振るった。
問題を一問でも間違えれば、すぐに殴られ、蹴られた。
「なんでこんな簡単な問題もできないの?」
その言葉を聞いた瞬間、恐怖で頭が真っ白になる。
思考が止まり、喉が閉まりうまく声が出ない。
「早く、早く答えないとまた殴られる。」
そう思えば思うほど声が震えて出せなくなった。
そのうち、勉強そのものが大嫌いになった。
勉強机の前に座るだけで、息が苦しくなるようになった。
まだ幼かった妹は、そんな私の姿を母の膝の上で静かに見ていた。
父に首根っこを掴まれ、廊下に投げつけられる私を。
壁にぶつかる音が響いても、母は何も言わず、妹の髪を撫でながら黙って見ていた。
その恐怖と孤独は、家の中だけでは終わらなかった。
保育園では、太っているという理由でからかわれ
いじめられた。
「ブタみたい」「一緒に遊びたくない」
輪の中に入ろうとすれば、そっと背中を向けられた。
靴も隠された。
砂場で私が作った山は、誰かの足で無言で踏み潰された。
先生に助けを求めても、「気にしすぎよ」と笑って流されるだけだった。
家でも外でも、私は“いらない子”だった。
どこにも、私の居場所はなかった。
「なんで私ばっかりこんな目にあうんだろう…」
母には2歳下の妹がいた。
つまり、私の叔母だ。
「たかみの方が可愛い。あんたは本当に可愛くない」
「保育園のお迎えのときも、あんたの時とたかみの時じゃ先生の態度、全然違うもんね〜」
心をズタズタにするような言葉を笑いながら平気で言う人だった。
その隣で、同じように笑う母、私はそんな二人が心底嫌いだった。
物心がついた頃には、すでに私は母が大嫌いだった。
唯一、私にとっての救いは
祖母だけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます