色のない世界線。
凜果
第1話 祖母と知らない赤ちゃん
「子どもを可愛くない母親はいない!」
実家のことを相談したとき、職場の先輩にそう言われ怒られたことがある。
「私とは住む世界線が違うんだな」と思った。
両親に愛されて育った人、子どもにしっかり向き合い愛情を持って育ててきた人には、私の話や気持ちは全く理解できないんだと思い知らされた日だった。
ある人は言った。
「なんか、漫画みたいな話ですね〜」と…。
世の中には、子どもを平等に愛せず、可愛いと思えない母親もいる。
私の両親が、まさにそうだったように…。
毎週金曜日の夜、白い車がやってきた。
助手席から降りてくるのは、おばあちゃんと目の大きな赤ちゃん。
私は部屋の隅から嬉しそうにその子を抱き上げる両親を眺めていた。
いつも怒っているはずの母が優しい声であやし、父もどこか穏やかな表情を浮かべている。
「この子は誰なんだろう?」
日曜の夜になると、また白い車がやってきた。
母は泣きながら手を振り、父も静かに手を振っている。
その光景が今でも目に焼きついて離れない…。
幼かった私は、何が起こっているのか全く理解できなかった。
私はずっと、一人っ子だと思っていた。
そして、三人家族だと思っていた。
それなのに。
私が保育園の年長に上がるとき、その日は突然やってきた。
「今日からこの子と一緒に暮らすよ」
母の手を握る、小さな女の子。
目が大きく、ハッキリとした顔立ちの赤ちゃん。
「自分と顔がそっくりだ!可愛くて仕方がない」
母はそう言って、妹を自慢の娘として育てた。
私には、見向きもしなかった。
幼いながらに、見た目で扱いがこんなにも違うんだと、痛感した。
私には、二歳離れた妹がいた。
妹と私は、車で三時間半も離れた場所で別々に育った。
母の実家では、二人の幼い子どもを同時に育てるのは難しいという理由で、妹は生まれてから三歳になるまで父の実家で過ごすことになった。
私が母の実家で祖母に預けられていた間、妹は違う場所で育てられていた。
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