方々伝聞録
Mad Fruits Company
チョコレイトの木
ふいにチョコレイトが食べたくなったので、買いに出たら売り切れだと言う。店のおやじの話すには、つい今しがた立派な身なりの紳士がやって来てみんな買って行ってしまったらしい。
俄にその紳士が憎くなってきた私は、店を飛び出した。すると200メーターも行かないうちにどうやらその紳士を見つけた。大きな革のトランクを提げているので、ははぁ、チョコレイトはあの中に違いないぞ、と思った。
私が彼の肩を叩き、「もしもし、あなたチョコレイトをそんなにどうするつもりです」と訊ねると男はいやにそわそわし始め「いや、それはちょっと教えられません。秘密なのです」と、どうあっても答えない。
いよいよ辛抱できなくなった私が、「やい、畜生め! なにも全部よこせと言うわけではないんだ。そのうちの一つを売ってくれというのだ! 200円でも300円でも払う。私はチョコレイトが食べたいのだ。それをたった一つだってやれないというのか!」と怒鳴ると、その紳士、大層驚いてキャッと一声あげたかと思うと、忽ち空を走って行ってしまった。後にはチョコレイトが一枚落ちていた。
次の日の昼ごろ、たばこを買いに出たら六つ辻にある桜が一晩で太ったという話を耳にした。「さては」と思った私はチョコレイトを一枚買って六つ辻まで行き、その桜の根元に放ってやると、俄にどうどうと木が鳴り、次に見た時チョコレイトは消えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます