無自覚②
(同じ模様、同じ症状何か関係性がありそうだ)
だが、私は車掌。医師じゃない。それどころか私は、学が足りない程だ。
「ありがとうございます。落ち着きました。」
「なら、良かったです」
そして私は他の仕事を片付けた。
休憩時間。
「なあ、いいか?」
私から話を切り出した。
「あんたが話を持ち出すとは珍しいな。やっぱ悩みでもあったのか?」
「お前一応俺より年下だろ?」
「そんな事、いいじゃないっすか」
ため息をついてみせた。
「乗客の足とか腕に、目みたいな模様入っている人を見たことあるか?」
「?」
「足とか腕に、連なって目の模様が入ってる乗客。見たことないか...」
私は、指でどこに入っているかをなぞって見せた。
「どうしたんすか?そんなこと言うタイプの人でしたっけ?」
「俺だって普段から、こんな意味が分からないとこを言うわけじゃない」
「なんでそんな事聞くんすか?そもそも」
「昨日と今日、体調不良の乗客がいたのよな?その乗客どちらもに、その模様が入ってたんだよ。疲れてる訳じゃないからな」
「う〜ん。そんな人生まれてきてから見たことないっすよ。」
「そうだよな...」
「にしても、気になりますね。その人達。2日2連続、もしかしたら明日もいるかもっすね。その時聞いて見たらどうです?」
「あぁ、気が向いたらそうするよ」
面倒な奴だが、良い奴だ。
そして、次の日。
「いるかもっすから、聞いてくださいよ。俺も気になるんで。」
「仕方ないな、いたらな」
今日も同じように、切符を確認する。
そして、後4両の切符の確認をするという所で、体調が悪そうな男性がいた。
「大丈夫ですか?」
質問に対し
「ちょっと、頭痛と吐き気がして...」
また同じ容態だ。ビニール袋と嘔吐物を固める粉に加え未開封の水のペットボトルを持ってきた。
今回は吐くまでに、少し猶予があった。しっかりと、目の模様も刻まれていた。少し間を空け、乗客が落ち着いた頃に問いかけてみた。
「その手と足の模様はなになんですか?」
乗客はぽかんとしていた。
「なんのことです?」
「え、いや手の甲と足首にあるじゃないですか、目の模様が」
乗客は手の甲と足首に目をやった。
「ちょっと分からないですね」
緑葉は焦った。
「あぁ、そう...ですか。分かりました。すいません。」
完全に変な奴になってしまった。
(見えていないのか?あの模様が)
残りの乗客の切符を全て確認し終えた。運転室に戻った。
「ビニール袋とか持っていったってことは、いたんすよね?」
「とりあえず今は、運転に集中しろ」
「へいへい」
仕事が終わり、例のことを伝えた。
「どういうことっすかねぇ。見えてなかったとは。もしかしたら、呪いとかなんすかもね。」
「だとして、なんで私に見えているんだ?」
「そりゃ...。この仕事何年もやってるわけっすから、何か念みたいなものが働いてるんじゃないっすか?」
「適当を...」
やれやれとため息をついた。
そして別々の日に、2両目、1両目にも同じく体調不良の乗客が現れた。
「また、出たんすね。体調不良の乗客。」
「乗客を幽霊みたいに言うんじゃない。」
次の日の休憩時間。
「今日は出なかったっすね、例の乗客。」
「体調が悪い客がいないのなら、何よりだ。」
私が缶コーヒーを奢ってやった。コーヒーを受け取る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます