第二十二話 僕の立場
昭和のいつか。どこかにある街。季節は冬(僕らは冬休み)。
主に
昼時ということもあり、店のドアベルはひっきりなしに鳴り続け、そこそこ広い店内も客で埋まってきていた。
「あ」
「なんだ霧丘、間抜けな声出して」
優子さんだ。異界で出会った河野の仲間で吸血鬼でもある。知らない女の人と一緒だ。
「霧丘君、久しぶりね」
「あ、どうも。こんにちは」
ぎこちない挨拶になってしまった。
山本と
「ふふ。文香ちゃんと仲良くね」
そう言って小さく手を振りながら奥の方へ去っていく優子さん。
「霧丘君、佐藤先輩と知り合いだったの?」
「おい霧丘、どういうことだ」
「な、何が? ちょっと知り合っただけだよ」
「あの佐藤先輩と? どこで? いつ?」
「三年生じゃ一番人気の佐藤さんだぞ」
優子さんは同じ学校だったんだ、しかも有名人だったとは。
「体育祭でフォークダンスの相手になってほしい女子ナンバーワンだった」
「振られた男子の数も学校で一番って噂なのに」
「その佐藤さんと知り合いだなんて聞いてないぞ、霧丘」
「お、お前ら怖いよ。落ち着けって」
僕も驚いてるよ。そりゃ綺麗な人だけど。もしかして黒瀬君も同じ学校に?
「こ、河野の友達らしくてさ、ちょっと会ったことがあるだけだよ」
「へぇー。河野さんって佐藤先輩と仲良いんだ」
「あ、うん。割と顔が広いみたいだよ、河野って」
「やっぱり付き合ってるんじゃないの?」
「だからそんなんじゃないって」
この場から逃げたい。ほんと。
山本と
「今度ダブルデートしようってのは本気だから。予定入れないでね!」
別れ際に
帰宅して母親に昼は外で食べたと伝えて自室へ入る。ベッドに寝転んで目を瞑る。
あの夜から信じられないことが連続で起きたけど、すんなり受け入れた自分に感心する。
そうか。
マンガのアイデア考える時に、異次元とか反物質のこと、地球上の炭素系生物とは別の系統の異星人、そんなことを頭の中でこねくり回してるからだろうか。
実際に自分の身に起きたこともまるでマンガみたいだけど……あくまでも現実だ。
あの海蜘蛛がこっちに生物兵器のような奴らを送り込んで、それを黒瀬君や佐藤さん達みたいな人が退治している。
河野もその一人。
あの異界で聞いた黒瀬君の忠告を思い出す。
僕の漫画を見たいという河野に交換条件として化け物退治の見学という話を知った彼はすごく真剣な顔をして僕に告げた。
『君は普通の人間。河野がそばにいても守りきれないことは必ず起きる』
『だから君には、まっとうな高校生活を送ってほしいんだ』
そして黒瀬君は少しだけ僕を羨むような視線を向けてこう言ったんだ。
『俺はもう後戻りできないから、なおさらそう思う』
一度は死んで、その後少し不思議な存在となって生き返り、見かけは歳をとることもなく。ひたすら化け物を退治していく毎日。
想像もできないな。
でもマンガに描くぐらいなら許されるかな。色々と変えなきゃならないけど、向こうで経験したことを何かの形に残しておかなきゃならない気がする。
決して世間には知られない彼らのこと。人知れず人々のために戦っているんだ。
そんなことを考えているうちに僕は眠りに落ちた。
どれぐらい眠っていたんだろう、目覚めると見知らぬ部屋。窓もないコンクリート打ちっぱなしの壁。天井には裸電球がぼんやりと部屋を照らしていた。
ここってどこだろう。
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