第34話 数を増やす為に
「あ、あの本当にするんですか……?」
「もう決まった事じゃないっすか。何がそんなにいやなんすか?」
「嫌とかじゃなくてですね……ミサキさんはいいんですか?その……旦那さんと、ウチがする事」
リカに罰の内容を伝え、イチイや亜人連中と途中会ったりもしたがダンジョンへと帰ってきた。
その間リカはずっとこの調子だ。
無論私とて旦那サマとリカが性行為をするという事に抵抗がない訳じゃない。
だが、それを差し置いても今は数を増やす時期なのだ。
リカと私の二台体制で数を増やし、オスは私達の所に、メスであれば亜人どもに押し付ける。
幸い亜人達が月に一度纏まった数の生きた人間をこちらに寄越してくれる事になっているので維持費に関しては問題無い。
それに兼ねてより危険視していた異常繁殖をこうして選り分けてしまえば心配はいらない。
後は増やした彼らが飢えぬように餌代としてポイントから出せば済む。
「そりゃ……まぁ、旦那サマを愛しているのは間違いないっすよ?だから複雑っすけど、感情よりも現状とすべき事を優先しなきゃいけないってだけです」
だから必要以上にいちゃつくのは禁止!と手で大きくバツを描いて釘を刺す。
まぁわざとこうしておどけた態度と行動でやんやり注意するのにはそこまで深刻に捉えるな、という言外の思いがあるのだが……なんとなく伝わればいい。
「ミサキさんが良いなら良いんですけど……そもそもウチもちゃんと孕めるんですか?」
「ん?そうっすねぇ……依頼先からテコ入れがあったみたいで、私のスキルの一つをリカさんにも複製出来るみたいなんすよ」
度々あったダンジョンマスターである私に対する機能追加、それが私が旦那サマ以外に犯され孕まされたタイミングで来たのだ。
時候の挨拶と共に始まったそのメッセージを読み解くにどうやら私をこの世界に寄越した神は節操もなくただ淫奔に魔物に犯されて数を増やすことを望んでいたようで、ようやくの二種類目の魔物との交尾、妊娠をいたく喜んでいた。
それと同時に、今後更なる御発展と人間の個体数の調整をお願いします、とメッセージは締め括られていた。
「つまり、私のどんな生き物とも完璧に交尾出来て問題が一切起きず、状態の良い個体が必ず産まれるっていうスキルがあるんすけど、それをリカさんに複製しようと思ってるっす」
こうして文面のみを見れば異世界テンプレのチートの様に見える。
実際は魔物相手に股を開く以外の才は無いチートになる訳だが。
「今更に過ぎますけど、リカさんは大丈夫っすか?こんな要求、まともな精神をしていたら了承はしないっすよ。本来生物は同種の異性と交尾するようにつくられてるっす」
私は神によってその性別も世代交代の手段も歪められた存在で、故にこの世界にあるべきでないスペックの旦那サマに相応しい。
だがリカは違う。
「別に私としては違う罰を考えてもいいっす。けれどこれを提案したのは一番実利があると判断しての事っす」
「あ、いえ。それは大丈夫です。ウチはただ旦那さんとミサキさんの間に入るようで申し訳無かっただけですから。それに、よりお二人と親しくなれるなら是非……」
以外とリカのこちらへの帰属意識が強い。何が原因だろうか。
「ならいいっす。取り敢えずはでも我が家でゆっくりしましょうか」
ダンジョンを空けていたのはたったの数日だと言うのに実に懐かしいと感じるのは色々な事が起きすぎた故だろうか。
荷物を降ろし万年床と化したマットレスに独り寝転ぶ。
今頃は別室で旦那サマとリカが閨をともにしている事だろう。
「これで一ヶ月半ちょっとで二匹の計算っすか。で少なくとも一匹は亜人に譲渡する事を考えると実質は一匹……」
それも雌雄の選別が出来ない為些か安定に欠ける。
亜人の街を去る前、イチイと再び対峙した。
その時に彼女は贈り物が芽吹くまでは無償で人間を提供すると言っていた為幾つ旦那サマの子らを貯金出来るかに掛かっている。
「それにあの女……無事に産まれたらこちらから協力してもらいたい事がある。って言ってたっすね……次は何をさせられるのか」
あの時の旦那サマは一番御するのに苦労した。
なにせイチイを見た途端に私が止める間もなく飛び出してしまったのだから。
あれほどに歯をむき出しにして唸る旦那サマなど見た事が無かった。
旦那サマへの確かな愛を感じはしたが折角の交渉相手を殺す訳にもいかず旦那サマを止めるのに随分苦労した。
何故止めるのか、ミサキはイチイが憎くないのかと問われたのは記憶に新しい。
「無償で新しい種類の魔物をプレゼントされたって意味では贈り物っすよねぇ。どんな能力なんすかね?」
亜人達の狩りが果たして動物を狩る一般的な物を意味するのか、果たして彼ら独特の言い回しによる何者かを狩る事なのかは不明だ。
「見た目自体はそんなにおっきく無くてー……でもなんか口に物凄く頑丈に針金が巻かれてたのが気になったすね」
犬みたいな、でも違う見た目の何かとしか形容しようが無いあの魔物は何だったのだろう。
狩りの共で一般人たる私が想像するのは狼や鳥の類だが、となれば旦那サマとは違いある程度正面きっての戦闘を得手とする魔物なのだろうか。
人と野生動物の間には例えそれが猫のような小さな物であっても絶望的な差が存在すると言う。
狼のようなあの魔物なら尚の事だ。
「後はどれだけの期間妊娠っすね……犬か狼っぽい見た目だからそれに類する生き物だと仮定したら二ヶ月くらいっすかね?」
多少ポイントの余裕にも目処が立った為にメモとペンを購入して自身の考えを整理していく。
「犬ならそれで一回に四から五頭ほどかあ……」
もしこの仮定通りならイチイからのこれは皮肉や冗談を抜きにして本当に贈り物かもしれない。
だが複数頭出産するという事は一個体毎の強さがそこまで無い事を意味するが……
「今は個体的な強さじゃなくて使い捨ての数を必要としているからいいんすけどね。あ、早かったっすね、リカさん。旦那サマ」
いつもの如く思考を整理していれば、リカ達が別室から帰ってきた。
「私はもっと時間が掛かると思ってたっす」
「ミサキさんの夫なんですから、そういう意味で親しくなる訳にも行かないですよ」
「あれ?気持ちよく無かったっすか?」
私は定期的に満足させてもらっているのだが……。
「ち、ちがっ!そういう話じゃ……!」
「ふふ、冗談っすよ。私の顔を立ててくれるのは嬉しいっすけど別に楽しんでもいいんすよ?」
別に減るものでも無い。
人間とは性行為に際し快楽を得る生き物なのだから、否定する必要も意義も無いはずだがリカは罰だと言う建前があるからか、それとも私の旦那サマだと言う事を強く意識してかさっと済ましたようだ。
________________________後書き
旦那サマ『ミサキの一旦道徳や倫理を抜いて思考するクセは直した方がいい』
もっと人間側を強化しても良さそうだなこれ。
ちょっとヌルゲーになってる気がする。
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