第6話 EYE:DUEL
《EYE:DUEL 開始まで――60秒》
スピーカーのアナウンスが終わると同時に、
白い部屋の中央に、対峙する2つの椅子が現れる。
氷室 蓮は混乱していた。
申請した記憶はない。それなのに――デュエルは“確定”していた。
(勝手に仕組まれた? いや……違う。自分が無意識に――)
咲良 美音はすでに椅子に座っていた。
その顔には、いつものアイドルスマイル……ではない。
冷ややかな、もう一つの人格の笑み。
「……怖いの?」
「お前……二重人格って、演技か?」
「どう思う?」
美音は笑う。嘘か真か、それすら“混ぜてくる”。
《デュエル開始》
《挑戦者は、相手の“嘘”を1つ指定・暴露することができます》
蓮は深く息を吐いた。
目の前の相手は、誰よりも“演技”に長けた嘘の使い手。
だが――
(だったら、論理で崩すまでだ)
「お前は……“咲良 美音”じゃない。
少なくとも、今ここにいる“人格”は、本物の美音じゃない」
「へぇ、続けて?」
「世間の“アイドル・美音”の口調、仕草、癖――
どれも今のお前とは違う。まるで……後から作られた存在みたいだ」
「つまり?」
「お前は“作られた人格”を演じている。
本物の人格は――もう、死んでるんじゃないのか?」
沈黙。
数秒後、美音がクスクスと笑った。
「なるほどね。さすが“探偵くん”」
《ジャッジ判定中――》
蓮の心拍が跳ね上がる。
(頼む……届いてくれ)
《“暴露”、第2層到達。核心には未達。判定――不完全》
《罰則:挑戦者の嘘の断片を公開》
モニターに表示されたのは――
【ヒント:蓮の“嘘”は、過去の“死”に関係している】
「っ……!」
蓮の呼吸が乱れる。
エマが見守る中、美音は立ち上がった。
「惜しかったね。でも、あと少しだったわよ。
次はもっと深く、私の“中”を見に来てね」
彼女の瞳は、どこか楽しんでいた。
演じることの快感と、“殺されなかった”安堵。
《EYE:DUEL 終了。両者、生存。情報開示完了。》
蓮は静かに拳を握りしめた。
(オレの嘘も、もう……少しずつ、見えてきてる)
だけど、それは“誰にも知られちゃいけない”。
命を懸けて守らなければならない、“最悪の真実”だった――。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます