第5話 なんでこうなるの
翌朝は4時起きだった。
昨日の約束通り、
(まさかこの僕が早速2人目とヤれそうとは)
生涯童貞で過ごし、次回の人生に期待しながらお墓に入るのが既定路線だと思っていた。
人生とは分からないモノである。
「――よっす」
やがて4時50分に美羽子がやってきた。
10分前というところに性格が出ている気がする。
本日も栗色ゆるふわヘアーを靡かせる美羽子は、黒のランニングウェアとスパッツという出で立ちであった。
朝に走っていると言っていたので、今日もカモフラージュがてらその格好で家を出てきたのだろう。
「ホントに来たんだな」
「当たり前じゃん。昨日の夜は修学旅行の前日みたいだったし」
気分が、ということだろうか。
よほど楽しみにしていたようだ。
「お風呂入ってきたから、わたしはもう出来る感じだけど広永くんは?」
「僕も一応入っといた」
両親の職場が海外のため親不在の広永家。
おあつらえ向きの状況で、互いに準備は万端。
和臣はあらかじめ布団を敷いておいた空き部屋に美羽子を案内した。
「ところでさ……広永くんはわたしでいいの?」
布団の上にそそくさと腰掛けながら美羽子が尋ねてくる。
「……初めてなんでしょ?」
「むしろ駿河で筆下ろし出来るのは光栄としか」
本当は非童貞だが、体操着の件を伏せるために童貞を演じる。
「ふ、ふーん……光栄なんだ?」
気恥ずかしそうに顔をうつむける美羽子。
和臣はそんな美羽子を可愛いと思ったのがスイッチになったかのように、ジュニアに血が通い始める感覚を悟った。
「あ、そうだ……ちなみに言っておくと、僕のってちょっとデカいから覚悟しといてもらえると……処女なんだよな?」
「うん……事前申告しなきゃいけないほどデカいの?」
「まぁ一応」
「ふーん……ちょっと見してよ」
そんなお願いに応じる抵抗感は薄かった。
ヤりまくりの柚が認めるほどのリーサルウェポンだと知れて自信が出たからだ。
というわけでズボンとパンツをズルン。
途端、美羽子がギョッとし始める。
「え……ウチのチビたちのと全然違うんだけど……」
見上げて、ごくりと喉を鳴らしている。
「……いけそう?」
「ま、まあ女はもっとデカいモノを生むわけだしね……ヤるだけヤってみる」
「……分かった」
「そういえばゴムってある?」
「あ……ない」
肝心なモノを忘れていた。
柚との時は柚が持っていたモノを渡されサイズが合わないながら着けていたが、今回は和臣が用意しておくべきだったかもしれない。
「さ、さすがにないとダメだよな?」
「さすがにね……」
「そりゃそうだ……えっとじゃあ、急いで買ってくるよ」
24時間営業のドラッグストアが近所にある。
というわけで、美羽子を留守番させて和臣は家から飛び出しチャリを漕いだ。
5分と掛からず到着したあとは、ゴム売り場を見つけて吟味。
「……一番大きいサイズでいいか」
でないとジュニアに苦しい思いをさせてしまう。
そもそも破けてしまうリスクも出てくる。
「――あれ? 和臣じゃん」
そのときだった。
「ゴム売り場で何してるワケ?」
「げ……」
予期せぬ声が聞こえたのでそちらに視線を向けてみると、そこにはなんとご主人様が佇んでいた。
そう、柚である。
寝巻きっぽいスウェット姿で、片手には日用品や食材入りのカゴを持っている。
「し、篠原なんでここに……」
「なんでって、ちょっと早めに目ぇ覚めてお腹空いたからさ、足りない日用品とかも含めて買いに来た感じ。近所だし」
その格好からして、和臣と違って徒歩圏内のようだ。
それこそドラッグストアの近くに実家があるのかもしれない。
「で? 和臣は何してるワケ? ゴム売り場で」
「いや、えっと……まぁその……」
美羽子とヤるためにゴムを買いに来たんだ、と正直に言えば柚は間違いなく怒るだろう。
そしたら体操着の件が表に晒されかねない。
「ぼ、僕はほら、篠原とするために大きいサイズのヤツを買っておこうかと思って」
「へえ、なるほどね。殊勝な心がけじゃん」
「ど、どうも」
「てか学校までまだ時間あるしさ、今から早速それ使ってみない?」
「ふぁっ!?」
それはマズい。
美羽子との約束が果たせなくなってしまう。
「ま、待つんだ篠原……こんな早朝からは勘弁してくれ。大体家に戻らないと親に怪しまれたりするだろ?」
「怪しむ連絡来たら散歩してるとか言えばいいし」
「ヤ、ヤるにしたってどこでヤるんだよっ!?」
「ヤリ部屋は学校からは近いけどこっからはちょっと遠いし、和臣んちは?」
「ぼ、僕んち!?」
「親居る?」
「い、居ないけど……」
「よーしじゃあ行こ? 今から和臣んちでえっち。逆らうならバラす」
(やべえよ……)
こうして和臣は非常にマズい状況となった。
美羽子が待つ我が家へ、柚と一緒に戻る。
どうにかして2人の鉢合わせを防がねば大変なことになる――それは間違いなかった。
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