第46話 文化祭実行委員たち 【外伝20】

――文化祭準備初日。

売る用のおまもりを作ることになった女子チームは机をくっつけて作業を始めた。


「ナコちゃん実行委員系の仕事珍しくない?」

「そうそう、カレンは家庭科部の出店の製作でゴロリンは寝るので忙しいからさ。」

「そっか、じゃあまたしばらくよろしくね。」


修学旅行で仲良くなった柴北と卒井の二人は、隣同士の席に座りあの時の話をしながら作業を進める。


「ていうかナコちゃん、もしかして結べない?」

「......バレた?」


おまもりによくある"二重叶結び"の製作に苦戦する卒井の隣でゆっくり彼女にやり方を教えるお姉さんな柴北と、正直自分もいまいち分かってなかったから説明を聞いて助かっている前の席の伊須。

そんな三人の作業の中、黙々と作業を進めるリーダーになった宵川の四人。


「クラス長もっと線に沿って切って!」

「俺こういうの苦手なんだって!」

「外にはみ出るのはいいけど、内側に切るのは直せないから!」

「ちょっとわかったから静かにしてくれ!」


そんな話を後ろでギャーギャー言いながら大きな看板を制作する男子チームを背に、手元の細かい作業に集中する。


「ったく男子ったら、楽しそうね。」

「ナコちゃんほら、こうやってやるの。」

「.....あ、ごめんちゃんと見てなかった。」

「ちょっと!」


卒井はダンボールを切るだけで大盛り上がりする男子チームの声に気を散らさないように、ただひたすら紐を見つめてお守り特有の結び方を練習する。


「.......あー、やっと一個出来たけど紐がヨレちゃった。」

「ナコちゃんほら、あと九十九個ね。」

「柴北さん追い打ちしないで!」


完成したお守りを小さな箱に入れ、嫌々次の素材に手を伸ばす卒井。


「中の紙にひとこと書いてるときは楽しいんだけどねー。」

「あと九十九個もあるもんね。」

「だからやめてって柴北さん!」


一方で隣に座る柴北は、紙にボールペンで恋愛成就と丸文字で書き、周りに丸っこいハートと丸っこいうさぎのイラストに颯爽と描き上げると、ものすごいスピードでそれを袋の中に入れてサッとキレイに結ぶ。


「ねえなんでそんな早いの?」

「出来るって!ナコちゃん頭良いんだから!」

ナコ裁縫だけほんと苦手なの!」

「ほら伊須ちゃんもなにか言ってあげ......って。」


柴北は斜め前に座る伊須に話しかけようとすると、彼女が卒井同様に紐をぐにゃぐにゃやってヨレヨレにしていることに気づく。


「え、あ.......へへ、バレちゃった。」

「同士だ!」


卒井は仲間を見つけるやいなや、前に座る伊須に身を乗り出すように話しかけ、安心して一人じゃないことに胸をなでおろす。


「やっぱそこの結び難しいよね!?」

「うん、みんなスラスラやるから焦っちゃって。」

「なんだよー!早く言ってよ!」


急に声が大きくなった卒井は伊須相手に強引に握手を交わし、二人で顔を近づけて柴北と宵川の作業を見つめる。


「......」

「.......ねえ、伊須さん。」

「はい?」

「もうナコ達はさ、コマ結びでやらない?」

「.......うん、そうですね。」

「二人ともダメだからね!?」


たったひとつの完成で満足し、おおきく体を伸ばしてあくびをする卒井と意識がどっかに行っちゃったのではないかというくらい一点を見つめる伊須。

柴北は二人の出来なさに頭を抱えていると、後ろでうるさかった男子チームの遊部がこっち側へ来た。


「伊須ちゃん、そっちどんな感じっすか?」

「遊部君......今はこんな感じかな。」

「ええすげえ!本物みたいだぞこれ!」

「あ、それは.......」


遊部は箱に入っていた卒井のお守りを一つ手に取ると、目を輝かせながら男子チームの方へ持って行った。


「これ見ろよ!」

「え、すごいなこれ!」

「これそこの神社で買ったやつじゃないの?」

「さすがにやべえって!!」


十分くらいかけてようやく完成したヨレヨレの紐で結ばれた一個目のお守りに対し、ものすごい顔で食いつく男子たち。


「べた褒めされてるじゃん。」

「......たくもう、しゃあないわね。」


卒井は立ち上がり、男子チームの元まで歩く。


「それ、あげる。」

「え!いいのか!?」

「ちょっと待てよ!俺が見つけたから俺のだろ!」

「待てここはジャンケンだろ!」


小学生みたいな争いをする男子チーム。

卒井はそれをみると、自分の心の奥にひっそりと眠っていた承認欲求のカップがひたひたに溜まっていく。


「争いは辞めて!ナコ......みんなの分作ってくるから!」

「「うおおおおおおお!」」


男たちの喜びの雄たけびに心が満たされながら、堂々と席へ着き隣で作業する柴北の方へ体を向ける。


「......柴北様、もう一度教えてくださいませんか。」

「なんであんなこと言っちゃったのよ!」


残り百五個になった。

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