第22話 収支情報収集中【外伝11】
授業終わり、新聞部改め広告部の羽谷は小さな部室で頭を抱えていた。
「あーネタがねえ!!」
広告部の先人たちが手に入れた部室は綺麗なパソコン室......の薄暗い準備室。
先人たちが机や椅子を持ってきたり、それなりにレイアウトしているお陰でひとつのちゃんとした部屋みたいになってはいるものの、やはり薄暗さは際立つ。
そもそもパソコン室に準備室など必要あるのかと思うが、もし必要ないから失くそうと言われようものなら簡単に部活が終わってしまうのでみんなバカなふりをしている。
「今日は処理研も人多いし、そもそもパソコン空いてっかな。」
書く準備が出来たら隣のパソコン室にある誰も使ってないパソコンと印刷機を借りて新聞を製作する。
いまの時代、スマホでも簡単にできるがそこは彼らのプライドだろう。
「てかそんなんどうでもいい!どうしようほんと!」
広告部の務めは毎日次の日張り出す新聞を作る事であり、その中でも羽谷は持っているエピソードの数とその知識量から"羽ペン先生"として一週間の内3~4回コラムを掲載している。
「珍しくうるさいですね羽谷さん。」
「いや亀井ちゃん、最近本当になんもなくてさ。」
別クラスの同い年、亀井ララ。
去年の文化祭準備期間にインタビューをして回る羽谷や、クラス長がカジノに挑戦した際にカメラを回していた生粋のカメラウーマン。
「来月テストですし、それを書いたらどうですか?」
「あぁ、期末の話は再来週に書こうと思ってたんだ......まあどうしても思いつかなかったら最悪書こうか。」
結構普段から余裕をもってストックを溜めている彼だが、ここ最近の彼はなにもない。
「なんでなにもないんだ......。」
「前にお金使いすぎたって言ってましたよね。」
「......そうだ、ノーパソ買って金と時間がねえんだ。」
必死にお小遣いを貯めた彼は近くのゲームショップで中古のノートパソコンを買った。
自分の文章制作に対するやる気の投資である。
「確かに、ここ最近ずっとノーパソの話してますね。」
「いやだって面白いんだよー聞いてよ。」
スマホで来た連絡をわざわざノートパソコンの方から返信するくらいノーパソにどっぷりハマった彼はお金と時間をそこに吸われていた。
「それ書けばいいじゃないですか。」
「もう4~5回連続ノーパソについて書いちゃってんの。」
ノートパソコンの素晴らしさを語る回を何回も掲載している彼は、同じクラスのファンである宵川までもが飽きていた。
「他の話ないんですかって......なんか起きたら書いてるっちゅうのよ。」
「まあ......なんか起きるどころか学校は体育祭中止ですもんね。」
「それね、体育祭あれば余韻で数回分稼げるんだけどな。」
切羽詰まる彼は両肘をボロボロの机の上に乗せ手のひらの上に顎を乗せる。
「なんか......亀井ちゃんない?」
「......まあ、ないこともないですけど。」
「え!?マジ!?」
羽谷はパッと顔を明るくして彼女に近づける。
「教えて!」
「私......ジャスミン茶にハマってるんです。」
「おお、それでそれで.....?」
「.......美味いんですよ。」
「おう....おぉ、ん?え、終わり?」
ワクワクしていた顔を徐々に真顔に戻し、ゆーっくりその顔を引っ込めた羽谷は一度咳払いをする。
「亀井ちゃん......いや、亀井。」
「へ?」
「起承転結の起だけじゃさすがの俺でも文章に出来ねえよ。」
「.......ごめんなさい。」
「いや謝るのは俺の方だ、ネタのない俺が悪いんだから。」
「はい。」
「あ、おい。」
振出しに戻り頭を悩ませる彼だが、焦燥感に駆られて全然頭が回らない。
「はぁ......昨日までどうやって書いてたんだっけ。」
「ノーパソに頼りすぎて書き方忘れちゃってる。」
「パソコン日記という名のフォーマットに頼りすぎ......って、そうか。」
「え?」
男はパンッとてを叩きなにかをひらめいた素振りでスマホを開く。
「思い付いたんですか?」
「あぁ、新たなフォーマットをまた作ればいいんだ!」
「おお!それでまたそれを擦りまくるんですね!」
「言い方良くねえな......実際そうだけど!」
「私のジャスミン茶の話は使います?」
「使わねえ!」
肩をブンブンいわす羽谷
「よし!長期企画作るぞ!!」
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後日、新聞が張り出された。
「クラス長、新企画"校庭の雑草を抜こう"だって。」
「アイツ、相当イップスだな。」
人生初の打ち切りを経験した羽谷であった。
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